図書館戦争アナザー

□それぞれのファースト
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「お前…あいつと仲良いのか?」

午後の格闘訓練で50人斬りの偉業を成し遂げた奈緒に同期の手塚が声をかける。

同じ小牧班ということもあるが同期の中で群を抜いて優秀な手塚は奈緒同様他の新人隊員より幾分早く訓練メニューを消化してしまうため、余った時間を共有しているうちに2人は自然と友人と呼べるような間柄になっていた。

「あいつって?」
「あそこで騒いでるバカだよ」

険を含んだ溜息をついて手塚が指差したその先には堂上に腕ひしぎをきめられ悶絶している笠原がいた。

「あぁ、笠原?」

手塚が首肯したので悲鳴をあげる笠原を見つめながら考えた結果、仲が悪くはないはずだ、という結論に至る。

「多分」
「多分てお前。まぁいいや、あいつってどんな?」
「どんな…って言われてもなぁ」

手塚の漠然とした問いにどう答えるべきか思案に暮れていると
「離せクソこの死ね堂上ーーーーッ!」
タイミングよく笠原の堂上に対する罵詈雑言の数々が聞こえてきたので便乗する事にした。

「…あんな感じ?」

そう言って奈緒が笑うと手塚が眉を顰めて、最悪だな、と呟いた。
誰かに毒づく手塚というのが珍しく感じらて不機嫌面を見上げていると頭上から降ってきた大きな手にわしゃわしゃと髪の毛をかきなでられる。

「あんま見んな。なんか恥ずい」
「えー?」
「つぅかなんかキモい」
「それはあまりに失礼千万なんですけど手塚さん」

手塚との身長差では普通にしていても上目遣いになってしまうのは必然で、この年頃の男にとって自分のその姿がもはや凶器ですらある事に気づいていない奈緒は手塚のそんな態度を見当違いも甚だしいベクトルで分析してしまった。

「もしかして手塚って…」
「なんだよ」
「笠原にラブ?みたいな?」
「バ、んなわけあるか!!」

脳天に力一杯拳骨を落とされて奈緒は抗議の視線を手塚に送った。
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