進撃の巨人(連載)

□6-3
1ページ/1ページ

6-3




 久しぶりに夢を見た。僕が、小さいころの夢。
幼い僕が泣いている。それを見て、誰かが僕の頭を撫でていた。
あれは・・・父さん・・・?

 ふと、誰かが僕の名を呼んだ気がした。突然、僕の意識は急速に引っ張られた。
そして、僕は目が覚めた。



「アル!良かった・・・!」



 目が覚めて一番最初に視界に入ったのは、ハンジさんだった。
ハンジさんは僕の顔を心配そうに覗き込んでいた。その顔はどこか安堵しているようだった。



「ハンジ、さん・・・」

「あっ!駄目だよ、起き上がっちゃ。まだ完全に回復してないんだから」



 起き上がろうとする僕を、ハンジさんは慌てて止めた。



「今、エルヴィンを呼んでくるからね」



 ハンジさんはそう言って部屋から出て行った。
特になにかがしたいわけではなかったが、僕はなんとなくハンジさんが出て行った扉を見つめた。
 しばらくぼーっとしていると、ぬっと僕の顔に影がかかった。アディだ。



「アディ・・・心配かけてごめん」



 アディは目を細めて僕に頬擦りした。少しくすぐったいけど、僕はそれを受け入れて、そんなアディの頭を撫でた。
 そういえば、僕はどうして自分の部屋にいるのだろう。
僕の記憶は曖昧で、途中で途切れていた。
最後に覚えているのは、あの背中の翼。あれを見て僕は助かった、と安心してしまったのだ。



「入るよ」



 数回ノックをした後に、エルヴィンさんが扉を開けて入ってきた。
続けて、ハンジさんとリヴァイさんも入ってくる。



「ああ、目が覚めてよかった。どこか悪いところはあるかい?」

「いえ、どこも。ご心配をおかけしました」



 エルヴィンさんはベッドの横に設置された椅子に腰かけながら言った。



「君は五日間眠り続けていたんだ。精神的なショックによるものでね。
今回の壁外調査はアルにとって初めての経験だったし、色々と衝撃的だっただろう。よくがんばった」



 僕はエルヴィンさんの言葉に、思わず涙ぐんだ。
 “色々と衝撃的”たしかにそうだった。
今でも思い出すたびに体が震えて、胃液が逆流しかけてくる。
きっと、一生あの光景が僕の頭から離れることはないと思う。あの絶望的で、恐ろしい気持ちも、帰りたいと切実に願う気持ちも、全部。



「精神的にも、身体的にも疲れているところ悪いんだが、アルが眠り続けている間にアルの処遇が決まった。寝たままで良いから、聞いてくれ」



 とうとう僕の今後についてが決定した。
エルヴィンさんの真剣な顔にゴクリ、と僕は生唾を飲んだ。部屋の中に重い空気が流れて始める。



「報告書や調査兵団員の報告の結果、君は我々に必要な存在であると判断された。
つまり、君を正式に調査兵団で預かることが認められたんだ」

「やった!やったね、アル!
ねえエルヴィン、アルは私の班に配属するべきだと思うんだ。だって・・・」



 それを聞いて僕は全身の力が抜けるほど、ほっとした。僕はハンジさんが言ったように処分されることはないんだ。
ハンジさんは僕以上に喜んで、今後の計画まで立ててしまっている。
エルヴィンさんも、リヴァイさんも、それには呆れ果てている様子だ。



「ハンジ、それについてはまだ早い。
確かに、アルの身柄は私たちの元で預かることになったが、それには条件付きなんだ」

「条件?なにそれ?」



 僕の代わりにハンジさんが首を傾げた。



「アルにちゃんとした訓練を受けさせること。これが条件だ。近々、104期訓練生の募集がある。勝手ですまないんだが、すでにアルが訓練生になれるように志願しておいた」

「訓練兵ですか・・・」



 僕の呟きに、今まで静かに壁に寄りかかっていたリヴァイさんが口を開いた。



「お前は基本がなってねえ。動きに無駄がありすぎるんだよ。
訓練兵になって死ぬまで訓練して来い。お前が特別だからって一切手加減はしねえように言っておいた。途中で逃げ出すんじゃねえぞ」



 そう言うとリヴァイさんは部屋を出て行った。
なんで、リヴァイさんにそんなことを言われなくちゃいけないんだ。
やっぱり、僕はリヴァイさんが苦手だ。そう実感した瞬間だった。



「それじゃあ我々も失礼しようか。
アル、訓練兵についてはまだ日があるから、それまでゆっくり休んでいなさい」

「じゃあね、アル!またあとでね!」



 エルヴィンさんとハンジさんも部屋から出て行った。



「あ、そうそう。アル、耳貸して」


 
 ハンジさんは途中で僕のところまで戻ってくると、こっそりと僕に耳打ちした。
そのせいで僕はしばらく悶々と、考えごとをするはめになってしまった。




****
あとがきと補足(読まなくても良いです)


前回補足し忘れたので。
前回アルが木に移動した後、箒がどこかえ消えましたが、鞄は某猫型ロボットのように小さい鞄にたくさん物が入るよう魔法をかけてありますので、箒は無事です。
やっつけ設定ですが、そう思ってください。

これにてオリジナルストーリーは終わりです。
次回から原作沿いに入ります。
キース教官やエレン、ミカサやアルミンなどご存じのキャラがたくさん出れば良いな・・・と思ってます。
先の展開だけ少し言いますと、最初の方は主人公の性格上、勘違い系になるかなーなんて思います。

ここまで読んでいただいてありがとうございました!

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ