Details of beauty (Story Book)

□Side:Daisuke
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多分、俺は過信していたんだと思う。


あいつの中で俺は一番だ、なんて。



公演前、セットが終わって楽屋に入ろうとすると笑い声が聞こえた。

最近やけに仲が良いあいつらの笑い声を聞いて、
思わず楽屋に入ろうとドアノブにかけた手が止まった。


「また…か。」


仕事仲間が仲が良いのは良いことじゃないか。

それなのに、どうしても気が晴れない自分がいる。


小さく息を吐いてドアを開ける。


「あ、大ちゃーん!ねぇー!翔さんの鏡見てよー!」


翔の鏡を見ると、周りに沢山のまおの写真やチラシが貼ってあった。


「すごいでしょー!僕ばっか!だから、僕も対抗したの!」

「まおくん俺の真似ばっかしてー」


あいつの鏡周りには、沢山の翔の写真。


「僕、負けず嫌いですからね!」


そういって、楽しそうにする2人を見て
何かが、崩れ落ちそうになった。


仲間同士がじゃれ合って、笑い合ってる。

ただ、それだけのこと。

たった、それだけのことなのに…。


思ってしまったんだ。

あいつにとって、俺以外の誰かが
一番になってしまうのかもしれないと。


「翔さーん、ちょっと打ち合わせしたいんで、来てもらっていいですかー?」

「あ、はいはーい。まおくん、俺のとこの写真剥がしちゃダメだからね!」


そういって、翔が出ていく。


「翔さん本当、面白いよねー!」


あいつが振り向く。


最初に出会った頃よりだいぶ大人びたのに
やっぱり子供っぽいあいつの笑顔。


その瞬間、せき止めていたものが
一気に崩れた。


「……大…ちゃん…?」


思い切り抱きしめてしまった。


「……タクミくんごっこ。」


なんて滑稽な言い訳だろう。


でも、どうにかして誤魔化さないと
あいつに気持ちが伝わってしまいそうで。


「なにそれー!」


そう、それでいいんだ。

そうやって、笑ってくれれば。


「甘えん坊なギイだね。」


…そうだな。


今なら、もっとギイを上手く演じられたかもしれないな。


「…まお。少しでいいから、さ。」

「…うん、いいよ。」


なぁ、まお。

いつになったら、俺はお前の一番になれる?

どうしたらお前は、俺だけを見てくれるんだ?


…頼むから、俺だけを見ててくれよ。


「…さて、今日も頑張るぞ!ケイタロウ!」

「……うん!」



いつか、俺だけを見てくれる日が来たらいいのに。


そんな想いは、今は胸に閉まっておくから。


まだ、いい兄貴でいてやるから、な。




「…大ちゃん、分かってるよ。
…もっと、独占してくれてもいいんだよ……。」


可愛い弟の想いは、俺には聞こえなかったんだ。

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