J.Ebiko's book!!!
□余命5ヶ月の友達
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無かった。アタシの番号は。どれだけ探しても無かった。
振り向くと、彩莉は気まずそうな顔をしていた。アタシの背中に手をおいて、そして帰って行った。
アタシだけ落ちた。もうこの高校には行けないんだ。
衝動に駆られたみたいに人ごみを抜け出して、霜焼けになりそうなアタシの手に熱い涙を落とした。
顔を上げてみたけど、涙で歪んだ視界の中には彩莉は居なかった。
アタシと彩莉は中1で出会った。背が高くて一際美人だった彩莉は何故か保健室通いだった。見た目によらず相当なワルみたいだった。
そんな彼女に一目惚れしたアタシは彼女の元へ付いて行った。これまた、ワルなくせに優しいという所に惹かれて仲良くなったのである。
彩莉は中2で雑誌のモデルデビューをした。ありえないほどの人気を得て、テレビ出演などトントン拍子で決まった。
その日から何でもできる子へと変わった。
彩莉はこれまでの自分を変える、と言って能力、運動神経、歌唱力とか様々なものを鍛えた。それからのあの子は何でも持っていた。
彼女が保健室通いだった頃は、アタシはそこそこ勉強ができて、先生にも嫌われてはいなかったから、正直下に見ていたが、一気に覆された。
だけど、良き親友、良きライバルへと変わったから、アタシは俄然やる気が出ていたつもりだった。
やっぱりあの子は何でも出来た。憧れは憧れのままだった。
そしてアタシは何も出来ない出来損ないの子のままなのだ。
そして次に変わったのはこのアタシだった。