まぎ

□to wet the bed
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お酒に酔う彼は嫌いだ。


「あっ、あ、…シン、やだ、やだ…っ。」
「そうか、いいか。」
「違うっ、嫌だって…ん、うぅっ。」


何が楽しいのか、柔らかくもない私の胸を撫でまわして、首筋に吸い付いてくる男に嫌だと抗議すれば、男は気を良くしたように更に執拗に弄ぶ。
否定の言葉を投げかければ、黙れというように唇に噛みつかれた。
わざとらしく音をたてながら私の舌を吸う男から尋常でない程酒の臭いがして、その香りだけで頭がくらくらする。
混ざり合った唾液に、アルコールでも含まれてるのかもしれない、と、思った。
じゃなきゃ、どうして私までもが、酔っ払ったようにまともな思考回路が働かないというのだ。
後頭部を抱きこむようにした腕は、私の顎をきっちりホールドしていて、どう足掻いても彼の唇から逃れることは許されなかった。
弄ばれた舌がジンジンと疼いて、息継ぎが上手く出来ずに、酸素が足りなくなる。
このままじゃ、私、窒息死しちゃうなあ、と思うと、なんだか可笑しくなった。


「んん、ぅ、…っは、ぁ……。」
「お前の舌は甘いなあ。」


唇も、と付け足して、ようやっと解放した私の唇をべろりと舐めあげる。
ぞくり、と、身震いをさせると、酔っ払いは満足げににんまりと微笑んだ。


「シン、も…いい加減に、っひ!や、ああ…っ!」


口付けが好きらしい男は私の頬に可愛らしいキスを落としたかと思うと、器用に片手を使って官服の裾をたくし上げた。
肌と下着の隙間を指の腹で撫でられて、思わず自身に熱が籠る。
反応したことを悟り、嬉しそうに口角を上げたシンがいきなり握り込むものだから、いい加減にしろ、と言うつもりだった言葉は、だらしない悲鳴にかき消された。
握り込んだまま、にぢにぢと親指で先を押しつぶすように弄られる。
力の入れ方が分からなくなった体では抵抗も儘ならなくて、シンに体を委ねたまま、彼の手淫にただひたすらびくびくと震えながら耐えるしか出来ず、これではこの男の思うつぼじゃないか、と、悔しさが込み上げる。
次第に増えてゆく粘り気を含んだ水音と、喉から漏れるまるで女の子のような嬌声がどうしようもなく耳障りで、耳を塞いでしまいたかった。
いつもであれば、素面の彼であれば、いく時の顔が見たいから、と、無理やりにでも必ずはじめに一度私をいかせるのだけれど、今日はその指は途中で離れてしまった。


「っ、あ……シ、ン…?」
「何だ、俺の手でいきたかったか。」
「!ち、がいますよ!」
「まあ、後でたっぷりいかせてやるから、今は我慢なー。」


なにやら不吉なことを言いながら、枕元から、シンが何か長細いものを取り出した。
長さが10p程度、直径5o程度の金属でできたそれは、コーヒーや紅茶をかき混ぜる際のマドラーに類似していた。


「…なんです、それ。」
「マドラーだな。」
「なんで、そんなもの。」


マドラーなんて、だって、今必要じゃないではないですか。
にっこりと笑う彼は、私が逃げることのできないようにと、その腕に力をこめた。


「単刀直入に言おう。ジャーファルくんがお漏らししてるところ見せて。」
「………はあ!!?」


マドラーを指に挟めたまま、着々と私の官服を脱がしてゆく男の器用さに、呆れを通り越して敬服してしまう。
せめてもの反発で彼の胸板を押し返したが、虚しい程にびくとも動かず、最後の砦とでも言うべきであった下着が、なんの躊躇いもなしに剥ぎ取られ、寝具の外へと放り投げられた。
鼻歌でも歌いそうなほどに楽しげに、私を抱きこんだまま用意した潤滑油をマドラーに垂らす様が、どうしようもなく恐ろしげなものに見えて、シンの腕の中で丸まって見つめるしかできなかった。


「やっ…、やだ、何するつもりですか!」
「何って…賢いジャーファルくんなら、分かるだろう?」


満面の笑みを張り付けたシンが、萎え気味だった私のものを握る。
何をされるか察することができるからこそ、いつも通り快楽に身を委ねることもできない。
恐ろしさに体が震えるのに、それでも自身を撫で上げられて擦られるなんて、生理的に気持ちいいものは気持ちいいんだから、籠る熱と混在する恐怖心をどうしていいのか分からなくなって、泣きそうになる。
ある程度固さをもった私に満足したのか、舌なめずりをして、先にマドラーを押し付けた。
ひゅ、と、喉が引きつる。だって、シンの前で漏らすだなんてしたくないし、それ以前に、尿道に異物が入るだなんて、考えたくない。
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