アベンジャーズ
□眠れない夜には
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「あれ? ……兄さん、起きてたのか。 ……ハリー君はどこかな」
タンクトップ一枚でソファにくつろぐ兄。極限まで落とされた照明の中で、雑誌を何冊開いている。リアクターが青白く自分と瓜二つの顔を照らし出した。
「ハリーならあの金髪ゲイ野郎と現場デートだ」
「ふうん……こんな夜中にご苦労だな」
「朝から行ってる、泊りがけだそうだ。このアナグマめ。部屋にこもりきって……」
痛い所を突かれ、肩をすぼめる。
「ロイスは?」
「寝てる」
淡々と答える兄。心なしか、表情もやつれている。
「……一応聞くけど、兄さんは?」
「眠れない」
「そうか」
雑誌は全て兄を取り上げたもの。賞賛もあれば批判もある。最近開発中のクリーンエネルギーの事、プライベートで起こったこと、女性とのスクラップ、我々兄弟の事……。
「すごい書かれ様だな」
一冊選んで目を通す。数枚の写真が載せられ、下品なスクラップ記事に眉をしかめる。
「これ、ジャービスだろう?」
金髪でスーツを着た男と、腕を組み親しげに話をする兄の姿。たしかつい先日完成したジャービスの義体だ。タイトルから推測して、恋人と間違われているんだろう。なんてくだらない記事だ。だから外に出るのは嫌いなんだ。きっと次のターゲットは私だ。ワトソン君に髪を染めてもらおうか……いや、彼はあの髪の色だからこそ魅力的なのだ。
「返せ、今読んでたところだ!」
じっと私を睨む兄。
「他のがあるだろ」
「それじゃなきゃ嫌だ!」
「大変な記事だね……ほう、インタビューに答えたのか」
飛んでくる雑誌をよけながら、インタビュースペースを読む。なにより面白いのが、彼を人間だと思い込んでいること。兄もお得意のジョークで痛点をかわしながら、より一層ジャービスを人間だと思い込ませている。実に兄らしい。