虹の旅路

□62,家族
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お嬢様と呼ばれて優木は呆然とした
ピジョットの翔はニコニコ顔で優木のことをじっと見ている
優木の意識はそのまま翔の胸が向いた
中央に綺麗な石が填まった装飾品で、翔の胸は飾られている
前にも見たことがある綺麗な石がそこで輝き、主張した

「これって……」

「気になる?」

「ふふ、後でのお楽しみだよ」

優木も早く飛行タイプ出して
奏にそう言われ、漸く目的を思い出した

家に帰るという目的を

「飛由」

仲間をボールから呼び出す
呼ばれた飛由が翼を広げて目の前に姿を現した

優木の仲間の中で唯一空の飛べるポケモン

優志「一つ問題があるんだが」

今まで黙っていた優志が、突然そんな発言をした
皆の視線が当然優志に向けられる
言葉の続きはそれから直ぐに続けられた

優志「これだと二人しか運べん」

「……優にいボール嫌いだっけ?」

優志「妹の分際でワタシにボールに入れというのか」

「一応僕のポケモンだろ……!」

このドSめ……!

「じゃあ優木がミュウになればいいんじゃない?」

優が横からそう提案してくる
ミュウになれる様になってからまだ優や奏には会っていない
普通なら知るはずのないことだが……

「……なんで知ってるんだ」

「……てへっ☆」

残念ながら擬人化中では可愛くない
このストーカーめ……!
と心の中で悪態を吐く
声に出せないところが遠慮しいな優木らしい

「ほら、さっさと行きましょう」

優志「さっさとミュウになれ」

結局それで決まってしまったみたいで、軽くため息を吐いてからミュウになった

《飛ぶだけなら別に僕じゃなくても……》

優志「人にバレたらまずいだろ」

ここに人が来る可能性もあるんだけどな

漸くPCから出て、奏と原型に戻った優がピジョットの翔の背中に乗る

『しっかりついてきてくださいませ』

飛由『お、おう』

奏達を見習って優木と優志も飛由に乗ると、翔がその逞しい翼を広げて飛び立った

飛由『んじゃ、行くぜ』

《うん、お願い》

直ぐに飛由もその翼を広げて飛んだ
翔に置いていかれない様にいつもより少し速く上昇、翔の直ぐ後ろに控える様に飛ぶ


『ちゃんとついてこれるのですね
流石は優木お嬢様に育てられたポケモンです』

飛由『そ、そりゃどうも』

口調があまりに正反対だから接しづらそうな飛由
そんなことも翔はお構いなしにただニコニコと笑っていた


そんな優木達の下、感じる光

そっと下を覗き込むと、広がるのは夜のチャンピオンロード

道がポツポツとライトアップされている
その広大で威厳のある道々の片隅
トレーナー達が各々あちらこちらでテントを張り、野宿している様子がまた、色の違うライトとなり、この空から見たイルミネーションのアクセントとなっていた
それはもう、綺麗以外に形容の仕様がない

「ふふ、やっぱりこの光景は何度見ても綺麗ね」

『お嬢様の為にあるような景色です
美しい以外有り得ませんよ』

翔からちょっと雷鳴と同じ匂いが……

雷鳴『や、やるなあの鳥……』

《あはは……》

文句なしに綺麗な景色を雷鳴の発言で汚されなくて良かった
と、少し雷鳴に失礼なことを思いながら、もう一度、もう後ろの方へ消えていこうとしている景色を振り返った

終わったんだ、ジョウトの旅も

旅の思い出をさっと振り返った後、優木は再び前を見詰めた

我が家はもうすぐそこだ




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