虹の旅路

□61,帰ろう
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「行くぞカイリュー、冷凍ビーム!」

バトルが始まるなり翡翠の苦手な氷技が一直線に飛んでくる
かわしてくれと言わんばかりに

「かわしてくれ!」

それでも、氷の追加効果も持つ冷凍ビームを直に受ける訳にはいかない

翡翠は身軽に冷凍ビームを横にさっとかわすと、一気にカイリューに向かって駆け出した

「近寄らせるなカイリュー!
もっと冷凍ビームだ!」

カイリューは更に冷凍ビームを放ち始める
フィールドを凍り付かせんばかりに翡翠を狙って何度も

お互い氷は苦手の筈、カイリューにとってもこのフィールドはあまりメリットはない

「跳べ翡翠!
地面に種爆弾!」

翡翠『おっけぇ!』

軽くジャンプし、自身の種を下に向けると、その種から小さな種を幾つも出した

冷凍ビームで凍るよりも前に爆発を起こし、その爆風で更に飛び上がる

「つるのムチ!」

ギリギリカイリューの上をとってつるのムチを叩き付ける
しかしその程度では体格の差もあって空中から落ちない
そこで翡翠は、自身が重力で落ちる前にそのままつるをカイリューの首に巻き付けた

「振り落とせカイリュー!」

途端にカイリューは一生懸命首を振り、翡翠を落とそうとする

「そのままソーラービーム!」

首につるを巻き付けたまま、エネルギーを充填し始める

つるをほどくことも出来ないまま、カイリューは至近距離からのソーラービームを諸に受けてしまった

「まだだ……!
ドラゴンクロー!」

衝撃で翡翠と共に空から地上へ
大きな地鳴りがして直ぐに、カイリューは起き上がり、爪を振りかぶる

「ヘドロ爆弾!」

そのカイリューに向けて今度は翡翠が毒の塊を放つ
ドラゴンクローの動きもしっかり見ながら
ヘドロ爆弾を翼の力でかわし、カイリューは翡翠にオーラを纏わせた爪で切り裂こうとしたが、翡翠はそれを見事に見切ってかわす

「突進!」

そのタイミングでカイリューに出来た隙をつく
横っ腹に強烈な突進を食らわせる
しかしまだだ、ドラゴンの強靭な身体はまだ倒れない
空中で持ち直し、直ぐまた攻撃の体勢に入る

「冷凍ビーム!」

三度目の冷凍ビーム

「かわせ翡翠!」

素早くカイリューの下を潜り、冷凍ビームをかわしきる
さあ、そろそろ終わらせよう
カイリューの後ろを取った翡翠が、笑った

「花弁の舞い!」

翡翠『うらあっ!』

後ろから花弁を大量に放っていく
慌てて振り返るカイリューだが、もう遅い

翡翠の持つ二つ目の大技は、カイリューを包み込み襲った

綺麗ながらにも棘のある様な、そんな攻撃が、カイリューの体力を余すことなく削っていった

翡翠『……ふぅ』

戦闘不能になったのを確認し、翡翠が一息吐く


「お疲れ、翡翠」

まるでいつもと変わらない様に、優木は笑った
翡翠の元へゆっくりと歩み寄り、屈んで頭を撫でる

翡翠『えへへ、勝ったよ優木』

翡翠も嬉しそうに笑っていた
いつもより少しお疲れの様子だが、それ以外に変わりはない
いつも通りだ

「いやあ、参った
優木君」

ワタルは気絶してしまったカイリューを起こしてから、優木に近寄った

「完敗だよ」

前にも一度負けているからか、カイリューも少し悔しそうに、でも清清しい顔をしていた

ワタルには手を差し出され、優木は立ち上がりしっかりと握手を交わした

「新しいチャンピオンの誕生だ」

ワタルに直接そう言われても、優木にはあまり実感が湧かなかった
ただ、これからのことを思い、口を開く

「僕まだ旅を続けたいんで、ここお願いします」

にっこり笑って優木はそう言った

ジョウトを回りきっただけでは、まだまだ不十分だ
もっといろいろなポケモンに出会いたい
自分自身もっと強くなりたい

そういう想いはずっと心に持っていた

ワタルは暫く呆けた顔をした後、大きく笑った
何だか少し安心した様に

「そうだよね、優木君はまだまだ若いしその方がいい」

「そんなわけで、ワタルさんはこのままここをお願いします」

「了解、新チャンピオン」

お互い笑いあって漸く、殿堂入りの間へ

「殿堂入りは初めてだよね?」

「……はい、流石に緊張しますね」

あまり広くはない部屋に、一つ大きめの機械が置いてあるだけの空間

ここを勝ち抜けた者だけが入ることを許される強者の部屋だ

「えっと……優木君は六匹以上ポケモンを持っているから……」

ワタルに説明されながら、仲間達皆を登録していく
殿堂入りの間には入らず待っている優志だけは登録出来ないが、それも仕方ないか

登録が進めば、段々とジョウトの旅が終わったことを自覚し始める

そうだ、終わったんだ

「お疲れ様
これで登録完了だ」

「ありがとうございました」

仲間達皆のボールを、いつも通りセットして、優木はワタルに頭を下げた

これまでのジョウトの旅を思い出し、懐かしい様な最近のことの様な、奇妙な感覚を感じていた

「……これからどうするんだい?」

「……一度カントーに戻ります
会いたい人がいるので」

そう、ずっとそのつもりだった
ジョウトの旅を終えたら、必ずまた会うと決めていた
そしてそれだけで、ワタルもそれが誰か察してくれる

「そうだね、会っておいた方があの人も喜ぶよ」

「あはは、ワタルさんに勝ったくらいで調子に乗るなって言われそう」

「ええ、酷いなあ」

優木達二人の笑い声が、さして広くない部屋に響く

「それじゃあ、奏さんによろしく」

「はい」

ワタルと別れ、ジョウトリーグを後にする
しかしポケモンリーグから出ることはせず、カントーリーグの受付の人に話を通してから今日の受付が終了するまでリーグ内のPCで時間を潰すことにした



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