虹の旅路

□37,赤輝く
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傷はまだ完全には癒えていないが、優木達は次の街を目指して旅を再開する

今はその道中


淡里『下僕、水があるぞ』

「ここは釣り人多いんだよな」

それに湖とは思えないし

優木の腕に出てきた淡里を抱き抱えて、水辺を通り過ぎた

ここまで何人かのトレーナーとも戦ってきたが相変わらずの負けなし


そして洞窟に差し掛かる

優志「ここを通るのか?」

「うん、ここを抜けるともう直ぐそこの筈だよ」

淡里を抱き抱えたまま、優木は繋がりの洞窟に足を踏み入れて行った

洞窟の外で見ている影にも気付かず…








「…目標β発見
直ちに作戦βへ移行」


《…了解、作戦βへ移行する》











「結構暗いね」

優志「足元に気を付けろよ」

躓いた石がイシツブテだったら大変だから
そんなアニメみたいなことないだろう

とか下らないことを話しながら進んでいく



それは突然のことだった


煙りが辺りを包み込んでいた

こんな洞窟の中で只でさえ悪い視界が一層悪くなり、近くにいた優志の姿すら見えなくなった

「!?優にい!」


煙りでケホケホとむせる

優志「優木!?何処だ!」

近くにいることは間違いないがこの煙りは一体何なのだろうか



「悪いが一緒に来て貰おう」

「!?」

後ろから声が聞こえたと思ったらハンカチと思わしき布で口を塞がれ、何かが身体に巻き付くのを感じた

淡里を抱いているから淡里ごと身動きが取れなくなる

皆が煙りにむせてケホケホ言っている声が段々小さくなっていく

足を踏ん張ってみても男の人の力には敵わない

寧ろ、脇腹の傷に触れて痛い


「…ん…ぐ…ぅ…」

淡里『げ…下僕…』

痛みに少し声が漏れる

淡里がこちらを呼ぶのが聞こえる

その声は締め付けられているせいで苦しそうで

せめてボールに入れていれば、と優木は後悔した

無理矢理引っ張られて洞窟を抜け、光に目を細める

ぐいぐいと更に引っ張られて、後ろを向いて男の前に立たせられる

黒い服にRの赤文字入りの制服

ロケット団だと一目で判った

巻き付いているものを見ると、それは紫色の生き物で

アーボックだった

アーボックが巻き付いたまま軽く後ろに押されてよろめく

口に宛てられていたハンカチが外れる

「!?」

直ぐ後ろには地面がなかった


当然の様に落ちる優木


そんなに深くはない様で、尻餅をついて地面に辿り着いた

「っ…いっつぅ…」

尻餅の衝撃で負荷がかかったらしい脇腹が痛む

淡里『大丈夫か…?』

「た、多分…」

上からさっきのロケット団員も降りてきて、無理矢理優木を立たせる

「く…僕をどうする気だ」

「黙って歩け」

痛みに顔をしかめながらもこの状況ではどうすることも出来ず、言われた通り歩く


この先は行き止まりの筈

優志がきっと助けに来てくれる

そんなに遠くじゃない気配を感じながら、優木は黙って奥へと連れていかれた

背中を強めに押されて幹部と思わしき女の前に連れて来られた


「久し振りね坊や
まさかこんなところまで来ているなんて」

久し振り…?

この女に会ったことがあっただろうか

「もしかして忘れちゃった?
お月見山で会ったでしょ?」

「…あ…あの時の…」


ゴルバットの色仕掛け女か…

嫌悪感を隠さずに向けて睨み付ける優木の様子も気に止めず、女はアーボックに命じた


「さっさと気絶させちゃいな」


途端に締め付けが強くなった


身体全体が、肺が圧迫されて呼吸が難しくなる

「ぐ…ぅ…」

『お前、ここ怪我してるだろ?

苦しめ』


アーボックが冷やかな声で笑った

脇腹の辺りを重点的に締められる

「いっ…!…っぅ…」

強い痛みに耐えられず膝を折る

淡里『…!おま…え…』

「…!
たん…り…!お前…だけでも…」


腕に力を振り絞って淡里が出られそうなくらいの隙間を作ろうとする

しかしアーボックの力はその程度では魚籠ともしない

淡里へのダメージを軽減するのが精一杯だった

淡里『なんで…なんで俺様何かを…!』

「なん…でって…淡里も…仲間…だから…っ!」


更に強く締め付けられ、声にならない悲鳴をあげた


『あーあ、血が出てんじゃね?
オレの身体汚しやがって全くよ』


もう限界

意識が落ちていく


淡里『…お前は…

俺様が護る…!

護るぞ、優木…!』




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