虹の旅路

□35,三兄弟
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目が覚めると、白い天井に沢山の心配そうな顔
PCの様だ

既に処置も終わっていた
脇腹と太股に包帯の感触がある

砂塵『お、起きた!』

翡翠『良かったあ!』

死にかけた訳でもないのに、まあ下手したら死んでいたけど

痛みに呻き、軽く包帯に触れた

『大丈夫ですか?』

「う、うん」

身体は起こせないけれど、返事は危なげ無く出来た

どうやら半日程眠っていたらしい
もう夜が明けて朝になっていた


『で、お前何者なの?』

「ポケモンと人間のハーフだよ」

サンダースの単刀直入な質問に、こっちも単刀直入に答える

『…は?』

呆然とするサンダース達に苦笑いを溢す

「僕だって最初は信じられなかったけど、ポケモンの言葉解るし能力も使えない訳じゃないみたいだし…」

表情を普通に戻して、何も言わずに聞いているシャワーズ達
ブースターも大分元気になった様で、今は三匹並んでいる

『…なるほど
あの時使ったのはその能力ですね?』

「…うん、念力
咄嗟にだけどね」

あの時、ライフルの弾道を念力で変えて、致命傷を逃れたのだ

「本当はかっこよく完全に反らしたかったよ」

優志「いくらミュウとはいえ本当に無茶なことをするなお前は」

爆羅『あ、あれちょっと待って
ゆきっち人間じゃないの?』


どうやら爆羅だけ話についていけていない様だ
仲間になったばかりだから無理もない

「そういえば話してなかったね」

『そっちはそのハーフの兄なんですよね?
あなたもハーフなんですか?』

優志「いや、ワタシはポケモンだ」

優志が擬人化を解いて、ミュウツーの姿になる
なんだか久しぶりに見た様な気がしてしまう

優志《この世界に一匹しかいない様なポケモンだから人に見付かると面倒でな
人前では擬人化して歩いている》


『…そうなのか』

そんな調子で優木と優志の境遇をシャワーズ達と、ついでに爆羅に話した

『あなた達のことは解りました
私達と似たような境遇の子と言うのは?』

「砂塵と焔駆だよ」

砂塵『?』

事情を聞いていない砂塵と焔駆が首を傾げる

「砂塵は砂嵐を、焔駆はフレアドライブを…
各々ロケット団ってやつに強化されて
一時期暴走もしてた」

焔駆『あなた達も?』

『そのロケット団ってやつかどうかは判らないけど
黒い服着た変な集団に捕まって実験された…
その前は僕達まだイーブイだったの』

ブースターが悲しそうにそう言った

ロケット団に実験の為に無理矢理進化させられたのだと思ったらこっちまで悲しくなってくる

砂塵『そうなんだ…』

悲しそうな砂塵の頭を撫でてやる

砂塵と焔駆はもうロケット団のことを引き摺ってはいないが、この三匹はまだ引き摺っているだろう


『ねえにいに、もういいでしょ?』

『…全く…ブースターはこんな人間擬きの何処がいいんですか』

何の話しだろうか、人間擬きとは恐らく自分のことだろうけれど

シャワーズが、ブースターの毛を舐める
それにサンダースも加わった

『だってこの人、にいに達助けてくれたんでしょ?
僕が寝てる間に』

『まあ、癪だけどな』

『さあどうぞ』

毛繕いが終わったらしい

ブースターは可愛く笑ってから、とててと走り寄って

『えいっ』

ピョンっとベッドに飛び乗ると、そのまま優木の首もとに飛び付いた

「!?」

突然やって来たもふもふに一瞬意識が吹っ飛ぶ

なんだこのもふもふは…!?

可愛くてふわふわで暖かくて…とにかく…


『どうですか?ブースターの毛並み』

ニヤニヤした顔で聞いてくるシャワーズに、優木は右手の親指をグッと立てた

「さいっ…こー」

シャワーズとサンダースも、直ぐ様同じ様に爪を立てていた

『いいにおーい』

「あ、あんまり嗅がないでよ
恥ずかしいから」

頬を擦り寄せてくるブースターを抱き締めたくなる
とにかく堪らない…!

『さて、行きますよ二匹共』

『…おう』

こちらを気にしながらサンダースが頷く

ブースターも少し名残惜しそうに優木を見てから二匹の元へ走っていった

砂塵『…いいの?主』

「ん?…心配ではあるけど…」

他のトレーナーに無理矢理ゲットされないか心配だけれど、無理矢理引き留める訳にもいかない
シャワーズ達が退室するのを見送ってから、動かせない左足を見て一つため息を吐いた







『ねえ?だから大丈夫って言ったでしょ?』

『別に私だってそんなに疑ってませんでしたよ』

『俺はあんまり信用してなかったがな
どうなっても知らんぞ?』

ワイワイ話し声が聞こえたかと思えば、再び開かれる扉

「え…?
なんで戻ってきたの?」

予想外過ぎる行動に驚くと共に苦笑

『あなたを試させて貰いました』

「…へ?」

『お前が俺達を呼び止めないか試したんだ
俺達を捕まえる為に恩を売ってたんじゃないか確かめる為にな』

不服そうなサンダース、反対にブースターは何だか嬉しそうだった

『そういう訳です』

「えっと…つまりどういうこと…?」

優志「仲間に入れてほしいってことじゃないか?」

鈍い優木の代わりに、優志がシャワーズの考えを代弁する
シャワーズの表情は読めなかったが、ただ静かに頷いた

「ほ、本当に…?
僕何かで…いいの?」

『…あなたの様なトレーナーは他にいないでしょう
あなただから、私もいいと判断したのです
お馬鹿さん』

最後には馬鹿呼ばわりされて苦笑する
まあ、あんな死んでもおかしくない無茶をしたのだから否定は出来なかった

『…俺の雷を見てもいい意味でも悪い意味でも反応しなかったのはお前だけだ
他のトレーナーに捕まるくらいなら最善だな』

『こいつは素直じゃないので無視してください』

シャワーズににこやかに言われ、さっきの無表情とのギャップに呆然とする

『お兄ちゃんとにいにを助けてくれたトレーナーさんだから、僕はトレーナーさんが一番いいと思ったの
そんな怪我してでもお兄ちゃん達助けてくれてありがと!』

「…助けたって言うよりは僕が助けられた様な気がするんだけどね…」

苦笑する優木

しかしシャワーズは、そんな優木に反論した

『そもそもあの人達はあなたではなく私達を狙っていたのですよ?
私達があなたを巻き込んでしまったという方が正しいです
私とサンダースだけだったら脱走することも出来なかったでしょう』

飛由『お前は相変わらず自分を卑下するんだな』

飛由にもそんなことを言われて、優木は黙った

その表情は申し訳なさそうなもので、飛由もそれを見て複雑な表情をした

雷鳴『お嬢は本当優しいもんな
オイラはそんなお嬢が誰よりも好きだぜ』





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