虹の旅路

□34,ハンター
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優木と飛由が研究所に戻る頃、丁度朝食が出来てきたところだった

仲間達にどこに行っていたのか尋問されながら、苦笑いで誤魔化していた

「ウツギ博士」

食器の片付けに来たウツギ博士を呼び止める

「なんだい?」

「今日から旅を再開します
お世話になりました」

律儀に挨拶する優木は、何だか楽しげだった

「そうかい、爆羅をよろしくね」

「あはは、任されました」

爆羅も一緒に旅が出来るのを嬉しがっている様で、へへっと笑っていた

朝御飯を食べ終わって旅支度を整える

もう一度お礼と挨拶をして研究所を後にした



ヨシノシティに到着したのはお昼頃、折角なのでその辺りのお店で昼食を取る

絆『ねえねえ優木、あれなに?』

「ん?」

絆が指す方を見ると、子供がソフトクリームを食べていて

「食べてみる?」

絆『うん!』

ソフトクリームを店員さんに注文して、自分はハンバーガーを頬張る
他の皆は各々ポケモンフーズを食べていて、砂塵は夜までお肉は我慢している

「お待たせ致しました、ソフトクリームです」

「ありがとうございます」

ソフトクリームを受け取って、絆の前に差し出す

「舐めてごらん」

それを恐る恐る舐める絆、冷たさに吃驚した顔をしてからキラキラと輝いた笑顔になる

絆『甘くて美味しい…!』

可愛い笑顔にこっちまで笑顔になる

爆羅『お、オレっちも…!』

「はいはい」

今度は爆羅の前に持っていく
同じ様にソフトクリームを舐めてパアッと笑顔になった

爆羅『うんまい!』

可愛らしい二匹に頬が緩む

お昼を食べ終わってヨシノシティを抜け、キキョウシティに向かって旅路を行く
トレーナーとも何度かバトルをして、後はこの道を左へ曲がるだけという時だった

「ん?」

洞窟の内部から光が見える
直ぐに光が消えて、今度はちらちらと炎が

誰かが戦っているのだろうか

次に洞窟から一人の少年が出てきて、悪態を吐く

「ちっ
もっとモンスターボール買っとくんだった…!」

そう言って駆け足でキキョウシティの方へ消えて行った

気になって洞窟の方へ近付く、中は暗くてよく見えない

翡翠『暗いね』

「うん…月光、照らしてくれる?」

月光『任せろマスター』

ボールに入っていた月光を出して照らして貰う
額の発光部位が光って、足元が見える

少し奥を照らして、月光が驚いた

月光『…!こいつら…!』

優志「どうした?」

後からついてきた優志が覗き込んだそこには、ボロボロになった三匹のポケモンがいた

「大丈夫!?」

優木が近寄ろうとすると辛うじて意識のある通常よりも小さなブースターが、猫の様に毛を逆立てて威嚇した

フシャー!

空気の漏れる様な声で今にも襲い掛かってきそうなブースターに、とりあえず近付くのをやめる

『来るな…人間…嫌だ…』

他の二匹、シャワーズとサンダースよりもボロボロになった身体で優木を拒絶する小さなブースター

痛々しい姿に、優木は顔を歪める

「酷い…な…」

月光『おい、治療するだけだから
大丈夫だから安心しろ』


同じイーブイ系統だからか、月光がブースターに言い聞かせようとしていて
しかし、ブースターはもう一度威嚇してから、体力の限界だったのだろう
力尽きて気を失った

「…PCに運ぼう」



キキョウシティのPCにたどり着き、ジョーイさんに三匹を預けた優木達は、処置室の前で待っていた

ゲームでもお馴染みの音が響くと、中からジョーイさんが出てくる

「お待たせ、ブースターは暫く動けないだろうけれど他の二匹は大体良くなったわよ」

「…そうですか、ありがとうございます」

ブースターの傷は少し酷いらしいのが心配だったが、後の二匹は大したことない様で良かった

ホッと息を吐くと、奥に案内される

ポケモン用のベッドに別々に寝かせられている三匹

ブースターの前足と後ろ足の片方ずつに各々包帯が巻かれていて、シャワーズとサンダースは少し大きめの絆創膏が二枚程貼られていた

「それにしても酷いことするわね…
いくら珍しいからって…」

イーブイ系統は珍しいから色々なトレーナーから狙われる
この三匹はそんなトレーナー達から必死で逃げてきた様だった

『ん…ぅ…』

小さな声が聞こえてそっちへ目を向ける
シャワーズだ

その瞼がゆっくりと開かれて綺麗な紫色の瞳が朧気にこちらを見た

『こ…こは…?』

優志「気が付いたか」

声を掛けたのは優志

当然シャワーズは途端に威嚇する

逆立つ様な毛は無くても、体勢と声は猫のそれと同じだ

「安心してよ、僕空のボール持ってないし」

実際今、優木は皆が入るボールしか持っておらず、この三匹を捕まえることは出来ない

『…どういうつもりですか?』

警戒は解かずに、シャワーズが聞いてくる

「どういうつもりと言われてもね…
怪我が酷かったから治療してあげたくて」

素直に言う優木にシャワーズは目を白黒させる

『こ、言葉が通じて…?』

「ん?…ああ、解るよ」

ジョーイさんは他の仕事に戻って行ったのを確認しながら、優木は笑って言った

『…う…ぅう…』

サンダースも起きた様だ

『な…ここ…どこだ…?』

「ここはPC、ポケモンを治療したり、トレーナーの宿泊施設だったりするところ」

シャワーズの様子を見て威嚇しないで警戒だけするサンダースを見て苦笑い

『兄貴…俺達…』

『…捕まってはいない…らしいですよ』

どうやら兄弟らしい二匹、ということはあのブースターもだろうか

「うん、無理矢理ゲットするつもりもないから」

『え…俺達の言葉…』

「解るんだ」

苦笑いして言う優木に、サンダースはただ呆気に取られた表情をしていた

『一体なんだって…』

『何故かこの人間は私達に恩を売りたい様ですね』

「別にそんなんじゃないよ
ただ助けたかっただけ」

『い…ぅ…』

ブースターも、気が付いた様だ

『ブースター…!大丈夫ですか?』

直ぐにシャワーズが、自分が寝ていたベッドからブースターのベッドに飛び移った

『にいに…』

ブースターの毛を舐めて寄り添うシャワーズ

『可哀想にブースター…』

『お兄ちゃん…』

サンダースも同じ様にシャワーズの反対側からブースターに寄り添って毛を舐めた

『僕は大丈夫だよ…』

シャワーズに頬を擦り寄せて、ブースターは言った


パァン!!


突然、大きな音が響いた

銃声と思わしき音だ

全員がそっちを見る中、優木は何となく気になって走り出した

優志「お、おい!」

「ちょっと見てくる!
直ぐ戻るから」

呼び止める優志を制止して飛び出す

何故かシャワーズとサンダースもついてきた
優木はそれを特に気にも止めずにPCから出た
音はあの洞窟の方から聞こえた

『…ひょっとしてあそこに住んでいるポケモンに迷惑かけてしまいましたかね…』

『…ち…だから人間は嫌いなんだよ』

「…僕もそれは同感…」

自分も人間だから全部とは言えないけど…と付け足すも、シャワーズ達には当然、変な人間と言われてしまった

洞窟の前までやって来る

そこにはトラックが一台停まっていて何だか嫌な感じだ

「一体何が…」

トラックに近付いてみると、背後からだった


「逃げたと思ってた獲物が自分からひょっこり現れるとはラッキー」

「!?」


ドォン!




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