虹の旅路

□22,暴走族とドSと…
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翡翠『うん!』

フィールドにコンパンと翡翠が向かい合う

相性では技を考えると翡翠が不利、しかし相性の悪い技に当たってやるつもりは毛頭ない

「コンパン、サイケ光線!」

「かわして葉っぱカッター!」

最初から翡翠に効果抜群のサイケ光線が放たれる
それを当然の様に横飛びしてかわすと、翡翠は持ち前の身軽さで着地する前から葉っぱカッターを飛ばした

「かわせコンパン!」

葉っぱカッターを避ける為にコンパンがジャンプする

「宿り木の種! 」

翡翠『おっけー!』

その着地の隙をつき、宿り木を植え付ける
足元からコンパンの身体をつるが覆い、体力を吸い上げ始めた

「ぬぅ!?」

「翡翠、突進!」

キョウが驚いている内にコンパンに対しても半減されないノーマル技で攻める
突進は宿り木のダメージで怯んでいるコンパンには何も対策出来ないままヒットし、コンパンは地面をゴロゴロと転がった

「コンパン!シグナルビーム!」

大きなダメージを食らっただろうコンパンは、それでも直ぐ様起き上がってシグナルビームを発射する
軌道が曲がりくねるサイケ光線よりも、真っ直ぐ飛ぶシグナルビームの方が速度が速い

「翡翠、かわしてくれ!」

翡翠『うん!』

少し下がれば地面に吸い込まれるのを見越してバックジャンプでかわす
しかしキョウはこの攻撃もかわされることを読んでコンパンを既に走らせていた

「今だ!思念の頭突き!」

バックジャンプした翡翠との距離を一気に縮めて来ていたコンパンがエスパータイプの物理技で翡翠の着地を狙う

『くらえぇ!』

とてもこれをかわせる状態とは思えない体勢の翡翠に、優木は掛ける言葉を失くした

翡翠『っ!』

翡翠は優木の指示がなくとも、咄嗟につるを出し、ギリギリのところで地面を叩く
つるで自身の身体を前転させ、何とか頭突きを回避したかに思った

翡翠『っ…つ…!』

ギリギリ後ろ足を掠めて、痛みに顔をしかめる
攻撃を避ける為に後先考えず体勢を変えたことでバランスを崩し、転げ落ちる様に地上に戻った

「大丈夫か?翡翠」

翡翠『……大丈夫!』

少し間があったのが気になるけれど、危なげ無く立っている

「よくかわしたな…!
毒毒の牙!」

すぐに振り返り、コンパンが再び向かってくる
小さな牙に毒のエネルギーを迸らせ、それを翡翠に立てようと飛び上がった

「つるのムチ!」

さっきのダメージが気になり、今度は避けるのを止めて技で迎え撃つ

空中のコンパンに十分に出したつるを、横に目一杯しならせてぶつけた

空中でバランスを崩し、地上へ叩きつけられる
宿り木のダメージが追加で入り、コンパンは漸く倒れた


「大丈夫か翡翠!」

はっきりとコンパンが倒れたのを確認した途端、優木は翡翠の元へ駆け寄った

翡翠『心配性だなぁ優木は…いっ……ててて…』

歩こうとして痛がる翡翠をそっと抱き上げた

「無理しないでよ翡翠」

庇っていた方の後ろ足の具合を見る
そこは少し擦りむいて血が出ていた

「怪我してるじゃないか」

抱き上げたまま傷薬を器用に鞄から取り出す

翡翠『これくらい大したことないよ……っ』

シュッとスプレーした瞬間に、声もあげずに痛がる翡翠
そんな翡翠の様子に思わず苦笑いした

「素直じゃないなぁ」

飛由『お前に似たんだろ』

月光『だな』

「なん…だと…」

優木と翡翠以外が笑って茶化す

焔駆『ゆきちゃんもよく強がるもんねー』

こんな状況でも楽しそうに笑う皆に、優木は苦笑した

翡翠『ひ、翡翠そんなんじゃ…!
優木より全然軽いし…!』


「そりゃ僕は死にかけたけど…!」


キョウが困った顔でこっちを見ているのに気付いたのはそれから少しだけ後だった


「ポケモンの言葉が解るのか?」

「えっと…そうです
他の人には絶対に言わないでください」

「そうだな…言わない方がいいだろうな」

まあこの地方で一番バレたらまずい人には既にバレているけれど……という言葉は飲み込んで、優木は怪我をした翡翠を撫でて皆の傍に下ろした

「では、次行こうか
行け!ゴルバット!」

一戦目から少し間が空いてしまったが、気を取り直してジムバトルに戻る
二番手として出てきたのはズバットの進化系、大きな口と翼が特徴のポケモンだ

「朝日、頼む」

朝日『翡翠の分のお返しをしてあげましょうマスター』

朝日はフィールドまで出てきてから、皆と一緒に大人しく見ている翡翠を振り返って微笑んだ

普段は焔駆と三匹で優木の取り合いをしているのにこういうときはちゃんと仲がいいんだから判らない

「ゴルバット、噛み付く!」

「サイコキネシス!」

噛み付くで向かってくるゴルバットをサイコキネシスで簡単に止める
弱点のエスパータイプ相手に正面から向かってくると大抵はこうなるものだ
そしてそれを考えていないキョウではない

「黒い霧!」

動きを拘束されたままゴルバットの口から黒い霧が出る
視界からゴルバットが消えたことで、朝日のサイコキネシスが解除された

「エアスラッシュ!」

視界を遮る黒霧の間から風の刃が飛んでくる

「飛んで避けてスピードスター!」

朝日『はいっ!』

素早く飛び上がってスピードスターを放つ
エアスラッシュが出てきた辺りに吸い込まれる様に飛んで行くと、ドンドンという何かに当たった音

朝日が着地するのとほぼ同時に霧は晴れて、ゴルバットはつらそうに姿を現した

「ゴルバット、シャドーボール!」

「こっちもシャドーボールだ!」

シャドーボール同士がぶつかり、爆発を起こす
二匹の間に爆風が起き、優木と朝日はその爆風に視界を遮られた

「今だ毒毒の牙!」

爆発の合間からゴルバットが突っ込んでくる
元々洞窟内で暮らすゴルバットにとって、視界が遮られることは何の苦にもならない

「くっ、避けろ朝日!」

ゴルバットが目の前にまで迫ったところで視界が漸く回復し、寸前のところで頭を下げて牙をかわす
ここで距離を取ってはまた不利になるゴルバットは、そのまま朝日にしつこく迫る
朝日はかわすのに精一杯だった
そして、それも長くは持たず

朝日『くっ!』

朝日の尻尾にゴルバットの牙が食い込む
直ぐに振り払えたが朝日は毒を食らってしまったらしく、苦しそうにしている

「よし、ベノムショック!」

「朝日!」

毒状態の相手に大きなダメージを与えるベノムショックで朝日を追撃しようと、ゴルバットが眼前に迫る
心配して名前を呼ぶ優木に応える様に、朝日は何とか身体を捻って毒液をかわしてみせた
そして後ろへ跳び、ゴルバットと距離を取る

「癒しの鈴!」

朝日『流石に…危なかったですね…!』

鈴の音が響き渡り朝日を蝕んでいた毒が浄化される
優木は額の冷や汗を軽く拭い、深く息を吐いて気分を落ち着けた
これ以上隙は見せない

「あれをかわすとは、やりおる」

「そろそろ終わらせましょう、朝日サイコキネシス!」

再びゴルバットが強力なサイコパワーに苦しみ始める
距離を取ったことでゴルバットに反撃の隙は今のところ、ない

「黒い霧!」

また視界を潰してサイコキネシスを解きに掛かるキョウ

優木も当然それを予想していた

「朝日、サイコショック!」

広がり始めたばかりでまだまだ範囲が伸びきっていない霧の中、広範囲をサイコパワーの詰まった石が襲う

「ゴルバット!」

霧があっという間に晴れていく
姿を現したゴルバットは、そのまま地面に落ちた

「……やりおるなお主」

「キョウさんも強いですね、流石です」

戻ってきた朝日を撫でて労う
ふよふよと揺れる尻尾は、先程の牙等忘れた様に嬉しそうだった

「ラストは、こいつだ
行け!モルフォン!」

「ありがとう、朝日
ラストは飛由!頼む!」

飛由『お、ラストか
へっ!頼まれてやんよ』


朝日と入れ替わりで楽しそうに前に出る飛由
すれ違う一瞬、優木を見て不敵に笑った

「モルフォン蝶の舞!」

キョウはモルフォンに素早く能力を上げさせる
タイプ的にも不利、そしてここまでのバトルで十分に優木が強い相手であるとキョウは認めていた

「乱れ突き!」

飛由が蝶の舞を行うモルフォンに素早く接近し、連続で嘴による攻撃を行う
しかし蝶の舞の効果で素早さの上がったモルフォンに、攻撃は思う様には当たらなかった
至近距離でひらひらと攻撃をかわし、キョウはタイミングを見計らって次の攻撃を指示する

「サイコキネシス!」

飛由の首が引っ込んだタイミングでモルフォンが羽根をしっかりと広げた
サイコキネシスの狙いを定める為だ
その僅かな隙を、飛由は見逃さない

「上昇してかわしてくれ!」

サイコキネシスが発動する僅かな隙に素早く上昇、モルフォンの視界から外れてかわす

「空を飛ぶ!」

飛由『おう!』

直ぐ様急降下、モルフォンの真上から足で地面へと叩き付けた
そのまま更に畳み掛ける

「ドリル嘴!」

「モルフォン!」

キョウの呼び掛けも虚しく、盛大に地面に叩きつけられたモルフォンが体勢を立て直す時間を与えないまま、ドリル嘴が更に地面を割った
効果抜群の飛由お得意の技を諸に受けて、勝負は決着した

「お疲れ、ありがとう飛由」

飛由『おう、優木もお疲れさん』

珍しく労いの言葉を掛けられて優木はつい呆気に取られる

「僕は何も…」

飛由『一緒に戦ってんだろ?』

不敵な笑みでそう言われてしまえば、優木は苦笑するのだった


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