虹の旅路

□11,ハナダジム
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空が白み、太陽が地平線から顔を出す
何処からか小鳥の囀ずりが聞こえて、優木はその声と柔らかな光に自然と目を覚ました

飛由『お、今日は早いな優木』

「…飛由…早いな相変わらず」

欠伸を一つしてベッドから降りる

「おはよう」

飛由『ああ、はよ』

翡翠と砂塵を見ると、二匹も丁度起き出す所で
起きたばかりの目を光に慣らす様子が可愛らしい

「おはよう翡翠、砂塵」

翡翠『ん…おはよう優木』

砂塵『ぅん…おはよう主』

まだ眠そうに挨拶を返して、優木と一緒に寝ていたベッドから二匹共のそのそと降りた
目を擦ったり欠伸をしたりする姿に一人癒される

支度を済ませ、やって来たハナダジム


「お邪魔します」

中は水タイプのジム…のはずなのだが
水中ミュージアムの様な作りになっていて、アニメを思い出させられる

「あら、挑戦者?」

「…はい」

少し間があったのはアニメで見るより綺麗だなとか思ったからだけれど、今日はジム戦をしにきたんだからと気を引き締め直す

カスミはカスミで優木のポケモンを見ていた

「貴方名前は?」

「優木です」

「いいわ、相手してあげる」

「お願いします」

ジム自体がアニメと同じようになっているのだから当然だがバトルフィールドはプールの上で
浮島の様に幾つか浮いている白い板だけが足場となっていた

これは砂塵辛いだろうな
という優木の思いとは裏腹に、砂塵はやる気満々だった

「さあ、始めましょう
行くのよ、ヒトデマン!」

ボールから飛び出したヒトデマンが白い板の一つに乗っかって、しっかりとしたバランスで立つ
プールには軽い波紋が立ち、それがただの板だということを如実に現していた

「…砂塵、本当に行くのか?」

砂塵『主、男に二言は無いぜ』

やる気に満ちた蒼い瞳に、一体何処から勝てる自信が出てくるのかと苦笑いする

「判った、砂塵頼む」

砂塵『よっしゃ!』

勢いよく足場に飛び乗る、少しゆらゆらと揺れたが特に問題はなさそうだ
心配そうにこっちを見る翡翠と飛由に困った様な笑顔を向けて少し安心させてやる

「ヒトデマン、水鉄砲!」

「かわせ!」

カスミの指示を聞いて瞬間的にバトルへと脳が切り替わる
ヒトデマンから噴射された水鉄砲をジャンプしてかわす
四つ足で上手く着地した

「スピードスター!」

直ぐに身体を捻って星形弾で反撃する
足場の悪い板の上でも、砂塵はバランスよく着地、今度は二本の足で立つ

「潜って!」

水中へ飛び込んでそれを回避される
相手の姿が見えなくなってしまう
次は何処から攻撃が来るか、警戒を怠らない様に注意する

兎に角地の利を何とかしなきゃ

このフィールドをどう攻略したものか

「高速スピン!」

「!
アイアンテールで迎え撃て!」

ザバッという水音がして砂塵の後ろからヒトデマンが現れる
アイアンテールと高速スピンがぶつかる
威力はアイアンテールが僅かに勝ったらしい
回転が緩くなって僅かな隙が生まれる

「今だ、シザークロス!」

砂塵『くらえっ!』

シザークロスをヒットさせてから一個前の足場に着地
ヒトデマンは倒れる様に再び水中に姿を消した

「やるわね
自己再生!」

何かが水中で光る
それが星形であることからヒトデマンであることは確かだ

「…そうだ
砂塵、フィールドに全力で砂嵐」

砂塵『え?…判った』

途端に物凄い量の砂がブワァッと砂塵の回りを囲み、突風と共に舞い上がる
そしてその砂を思いっきり
フィールド、即ち水の中へと叩き込んだ

「え…!ヒトデマン!」

ヒトデマンがまだ純粋な水から足場に出てきた
綺麗な水でなければいけないのだろう
優木の睨んだ通り

「やっぱり…!砂塵、地震!」

砂塵『了解!』

砂塵が拳を足場にぶつけると直ぐに、地面が揺れる
強い揺れにカスミも優木も立っていられなくなる
ヒトデマンも例外ではなく、安定感のない足場だったのだから当然水の中へ落ちた

「…よし、大地の力!」

最早泥水と化したフィールドの、丁度ヒトデマンが落ちた場所に
大地のエネルギーが詰まった柱が勢いよく立ち上がり、ヒトデマンは水中から放り出された

「ハイドロポンプ!」

「砂嵐!」

お互いの一番強力な技がぶつかる
砂嵐の方が相性的に不利なのに明らかに今は五分五分
優木は改めて砂塵の砂嵐の威力を思い知った

砂塵『っ…!主…!このままだと押される…!』

「威力あげろ砂塵、ハイドロポンプを打ち破ればいい!」

「無駄よ!
貴方のサンド、よく頑張ったけど
私の水ポケモンに地面で挑んだ時点で負けは決まってるのよ」

カスミがヒトデマンの勝利を確信して言った
自分のポケモンに対する絶対の自信か

確かにこのバトルは砂塵にはかなり不利だ
しかし優木は逆に勝利を確信している

砂塵が砂嵐で負ける筈がない

砂塵『うぉあああぁぁあ!!』

目を見開く砂塵
異常な力が砂塵を包み、砂嵐の威力が更に上昇する
そして一瞬でハイドロポンプを打ち消し、ヒトデマンを巻き込む直前で消えた

「…そんな…」

驚きで愕然とするカスミ
優木は少し申し訳なく思いながらとどめの指示を出した

「切り裂く!」

砂塵『ぅおぉぁあ!』

足場からジャンプして剣で一太刀浴びせるように切り裂く
綺麗なジャンプ斬りだ

「ヒトデマン!」

そこでヒトデマンは力尽きた

「…お疲れ様、ヒトデマン」

カスミはヒトデマンに労いの言葉を掛けてボールに戻すと、優木に向き直る

「やるわねそのサンド
あんなに強い砂嵐初めてよ」

「この子はちょっと特別で…」

言葉を濁す優木を少し気にしながら、フィールドが綺麗になるのを待つカスミ

「お疲れ様砂塵」

こっちもその間に砂塵を労って下がらせた


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