虹の旅路

□8,ハナダ岬の戦い
1ページ/3ページ


太陽が昇り、朝がやって来ていた
空は綺麗な青に染まり、絶好の旅日和

優木達は、新しい仲間の砂塵と親睦を深めるべくハナダ岬で七人抜きに挑戦しようとしていた

「飛由、一番手頼む!」

飛由『へっ、任せろ』

やる気満々で前に出る飛由

「ニドラン!」

開閉音と共にニドラン♂が飛び出す

「毒針よ!」

口から無数の針を発射する
当たれば毒状態になることもある序盤でも厄介な技だ

「かわしてくれ」

数センチ上昇して毒針を全てかわすとこちらも攻撃を指示する

「つばめ返し!」

飛由『おっしゃー!突っ込むぜぇ!』

凄い気合いと共にニドランに迫る飛由

「か、かわして!」

慌てて指示を出すトレーナー、しかしつばめ返しは本来かわすことが出来ない技
案の定かわすことが出来ずにニドランの身体が宙に浮く

「鋼の翼!」

ここで今一つの鋼の翼がヒットする
地面に叩き落とされ、ニドランは戦闘不能になった
右腕を持ち上げた優木の腕と肩に、ふわりと舞い降りた飛由が止まる

お、重い…

砂塵『か、かっこいい…!』

優木の必死さも砂塵の呟きも、誰も気付くことはなかった

「二番目はオレだ!」

「翡翠、行こう!」

翡翠『うん!』

戦闘モードの翡翠が前に出る

「行け!コラッタ!」

鳴き声を発してボールから飛び出すコラッタ
長く出た前歯をカチカチと鳴らしている
やる気十分な様子だ

「翡翠、葉っぱカッター!」

翡翠『了解!』

バトルが始まる
優木の言葉が聞こえると直ぐに、コラッタに向かって葉っぱを放つ

「かわせ!」

コラッタはジグザグに動いて見事に葉っぱカッターをかわしきる
速い

「つるのムチ!」

「必殺前歯!」

コラッタを巻き付けようと伸びてきたつるに噛み付くコラッタ
しかし翡翠は痛みに顔を歪めながらも怯まない

翡翠『くっ…らえ!』

噛み付いたままのコラッタをそのまま持ち上げて地面へ

『な…!?』

突然の事に対応出来ず、コラッタは地面をバウンドして転がった

「大丈夫か?翡翠」

翡翠『大丈夫!』

元気そうな翡翠の返事に安心してコラッタの様子を見る

『いてぇな、やるじゃねぇか嬢ちゃん』

翡翠『君もね』

翡翠と軽い会話をするコラッタもまだ元気そうだ

「電光石火!」

「受け止めて日本晴れ!」

つるを出してコラッタの電光石火をかわさずに受ける
そのまま日本晴れを発動
暑い太陽が照り付け、翡翠が不敵な笑みを浮かべた

「ソーラービーム!」

「ま、まずい…!逃げろ…!」

翡翠『遅い!』

眩い光がコラッタを呑み込む
翡翠の大技であるソーラービームを諸に受け、コラッタは堪らず倒れた

「お疲れ翡翠」

戻ってきた翡翠が優木に飛び付く

翡翠『優木、翡翠頑張ったよ!』

「ん、よしよし」

少しバランスを崩し掛けるも何とか耐えて翡翠を抱える

飛由『おい翡翠、そいつ一応怪我人だぞ』

翡翠『あ…、ごめん優木』

「え?大丈夫だよこれくらい、気にするな」

困った顔で笑いながら言うと飛由が呆れたという様にため息を吐いた

飛由『お前は本当にとんだ馬鹿だよ
あまり無理するな』


「ははは…否定はしないよ
ごめん」

砂塵はそれをただ黙って聞いていた

続いて三番目の人が出てきてボールを放る

「行くわよニドラン!」

出てきたニドランは♀
可愛らしいが構えは翡翠のそれにも劣らない

優木は後ろを振り返って砂塵を見詰めた

砂塵『…おれか?』

「嫌なら無理強いはしない」

砂塵『…ふん…やってやるよ』

腕組みをして前に出る砂塵

バトルはあまり強くないと言っていた砂塵
砂嵐を見る限りだと強い筈の砂塵が何故そんなことを言ったのか
このバトルで明らかとなる

「ニドラン、二度蹴りよ!」

「丸くなるで防御!」

ニドランの二度蹴りが砂塵を捉えるそのタイミングで丸くなって衝撃を吸収、最小限のダメージで抑える

「毒針よ!」

「こっちも毒針だ!」

双方毒針を飛ばす
威力はほぼ互角
あの砂嵐と比べると格段に威力が低い

「切り裂く!」

「捨て身タックル!」

砂塵に続き、ニドランも走り出して両者がぶつかる
砂塵の爪を避けてニドランの捨て身タックルが脇腹を捉えた

砂塵『ぐぅっ!』

痛そうな声をあげて吹き飛ぶ砂塵

「大丈夫か砂塵!?」

心配して聞くが、立ち上がった砂塵は返事を返さずに肩で息を繰り返していた
後ろ姿しか見えない為優木にその表情は窺えない

「根性あるわね…二度蹴り! 」

「砂塵!」

砂塵『大丈夫』

漸く反応が帰ってきたことに一瞬だけ安堵した
迫るニドランに対処しなければならない

「砂嵐!」

カッと目が開かれ、砂塵が最も得意とする砂嵐を発動する
自身の回りに砂を纏い、風に乗せる
一気に凄まじい勢いにまで威力が引き上がった砂嵐がニドランを巻き込み、吹き飛ばす
地面に叩き付けられたニドランに、最後の追撃

「シザークロス!」

シザークロスは命中し、ニドランは戦闘不能となった
危なげながらも勝利を納めた砂塵を心配して、優木は戻ってきた彼に声を掛ける

「大丈夫か?」

砂塵『ん…ちょっと疲れた…』

「ボール入って休む?」

砂塵『…嫌だ』

座り込んでボールを拒否する砂塵
優木はその様子を心配しながらも反対はしない

「ゆっくり休んでくれ」

それだけ言って手を伸ばしかけて止めた
そのまま申し訳なさそうな顔をしてから、手を引っ込めて次の相手に向き直った

砂塵『…(そんな顔するなよ…)』

悲しそうな顔で砂塵が胸中呟いたのを、飛由だけが見ていた


,
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ