SS

□花火
1ページ/1ページ



8月

残暑お見舞い申し上げます
まだまだ暑い日が続いておりますが、皆様はどうお過ごしでしょうか

僕は相変わらず、賑やか過ぎる仲間達に困っている次第です




絆『優木ー!早くー!』

「あんまり慌てると転ぶぞ絆」

暑い太陽の下でも元気な絆
優志を除くメンバーははしゃいでいる

あ、そうそう
今日は今滞在している街で花火があるらしく、お祭り状態な為に参加しようということになっています

翡翠「こんな雰囲気グレン島以来だね優木」

「そうだね
あれからまた仲間も増えてるし」

はぐれない様にだけ気を付けなきゃ

楽しそうに屋台に寄っていく仲間達を見ながらも、こちらにずっと寄り添っている仲間に苦笑い
言わずもがな、人間嫌いの子達だ

翡翠、砂塵、焔駆は当たり前
そこから更に加わったのは水護、雷牙、煉暖だ

煉暖は原型のまま自力で上に登ってきて、水護と雷牙は警戒心丸出しでこちらを見る人に睨みを効かす

その人達にすみませんという意味を込めて苦笑いしながら、人混みでごった返す道を歩いた

絆はと言えば、小さな身体を生かしてするすると前へ出ていってしまうのだから危なっかしいったらない

優志は人嫌いというか苦手な様で、少し離れたところで人混みを避けて歩いている

どうせはぐれても能力の探知が出来るから優志だけは気にせずにいられる

爆羅は絆を追って人混みを掻き分けて行くし、動きづらいけれどとにかく進まなければ

淡里「しかしお祭りとは人間もよく判らんことをするな」

「いつもと違うことをするのが楽しいんだよ」

月光「グレンの時とあるものはそんな変わらないんだな」

屋台をあれこれ物色していた月光が、少しつまらなさそうにそう言った

確かに、お祭りも毎年行っているとあまり代わり映えしなくてつまらなく思うこともある

それでも、年に一度だからやっぱり行くんだよなあ

朝日「ほら、フランクフルトなんてものがありますよお兄ちゃん」

月光「お、でっけえソーセージだな」

「食べる?」

砂塵「お、おれも!」

流石肉好き

飛由「俺も腹減ったから食う」

「あはは、了解」

飛由の分も入れて三人分購入

花火まではまだまだ大分時間がありそうだ

爆羅「ゆきっちゆきっち!
あのかき氷ってやつ美味そう!」


「ああ、美味しいよ
食べる?」

少し落ち着ける所を見付けた方が良さそうだ
数人で休憩所の広いテーブルに腰掛けて、残った仲間数人でかき氷の列に並ぶ

メンバーで様々な色のかき氷を買って席についた

翡翠はメロン、絶対色だろ
砂塵は宇治金時、これは意外
焔駆はレモン、意外とすっぱいのがお好きな様で
月光がイチゴ、乙女か
朝日もイチゴ、確かに美味しいけどさ
淡里はキャラメル、どんな味がするのか気になる
雷鳴はみぞれか、シンプルだね
絆は僕と半分こ、原型だから
優にいはこれまた意外にもイチゴ、しかも練乳乗せ、甘いのがお好きですか
水護はブルーハワイ
雷牙はレモン
煉暖も原型だから一緒

そうそう、僕はブルーハワイで
それと飛由はなんとコーヒー
これもどんな味がするのか気になる

サクサクと先がスプーンになっているストローを差して氷を解しながら、絆と煉暖にも分け与える

煉暖『美味しい…!』

絆『ねっ!』

二匹共尻尾をぶんぶん振りながら次をせがむ

優木の分がなくなってしまいそうな位の様子に、苦笑いする

雷鳴「しっかし花火楽しみだなあ」

かき氷の冷たさに皆が唸っている中、雷鳴が呟いた

また何かキザなことを言うつもりだろうかと、皆が疑いの視線を送る

優志「それよりこのかき氷キーンと来ないな」

「天然水か何かの氷だとキーンと来ないらしいね」

上手く会話の軌道を修正してしまう
優にいナイスだ

「水道水だと凄くキーンとするらしいよ」

雷牙「へえ」

今更だけれど、皆顔が整っていすぎて視線が多い

翡翠「んふふ」

かき氷にご満悦な様子の仲間達
ブルーハワイも勿論美味しかった

休憩所を後にして再び祭りの喧騒へ飲まれる

水護「人間は毎年こういうことをしているんですよね?」

「うん」

水護「…来年もこの様な催しに参加出来るでしょうか?」

「え?」

人間嫌いな水護から、予想外の言葉が溢れる

「きっと出来るよ」

また屋台の一つに寄っていく仲間達を見ながら、笑ってそう返事した






絆『たーまやー!』


時間は移り変わって、すっかり辺りは暗くなった

花火大会も始まって、今丁度一つ目が上がった所


淡里「ほお、綺麗だな
俺様の様だ」


飛由「どこがだ」

雷鳴「そうだぜ、お嬢の方が綺麗だ」

飛由「お前は黙ってろ」

全く花火くらい落ち着いて見られないのだろうか

煉暖『綺麗…』

頭の上にいる煉暖が何だか嬉しそうに呟いた

夜空を彩る一瞬の芸術

様々な色を放つ火薬

大きな音がお腹に響く


皆の顔を覗き見る、花火の彩りで輝く瞳

皆いい顔をしていた



焔駆「恋人らしい雰囲気にはならないねえ」

「ええ」

焔駆は何を言っているのか

朝日「帰りましょう?PCに」

花火も終わって、ぞろぞろと家路に着く人だかり

「そうだね」

月光「本当綺麗だったな」

砂塵「なっ!
また来たいぜ」


仲良くPCに向かって走り出した月光と砂塵、ご飯の時は歪み合っていても、やっぱり仲がいい

優志「全く大変だったな今日は」

「でも楽しかった」


大勢の仲間達を追い掛けてPCに戻る


その足取りは、疲れたというのに軽かった



,

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ