心結び

□15,ムンナ
1ページ/3ページ



「はあはあ…」

「大丈夫?葉月…」

「うん…ちょっと疲れただけ」

本当は結構ヤバい

無理に身体を動かしてあっちこっち痛くて仕方ない

それでも何とか動いていられるのは、卯月がそこにいるからだ

戦闘の殆どを卯月に任せてしまっている状況で、弱音何て吐けない







「大分登ってきたわね

何?どうしたの?」


「…あっ!いや!
な、何でもねえよ!」

ビリジオンとエモンガのチームも、順調に先へ進んでいた

「そっか
そういえばエモンガは私のこと嫌いだったよね
ごめんね
一緒にコンビを組むのが私になっちゃって…」

「なっ…!
き、嫌いじゃねえよ!!
そりゃ最初は気に食わなかったけど…
でもその後ケルディオの件を聞かされて訳も判ったし…
いいところも見えたし…
ちゃんとしてるんだなって…
ノコッチが友達になりたがったのも…今じゃ判るし…」

「そっか、じゃ良かった」

「こっちこそごめんな
前はオレ…お前に噛み付いてばかりだった…
ずっと謝りたかったんだけど…
タイミングがなくてよう…」

「仕方ないわ
私自身、自分は嫌なやつだったなって思うもの
だからありがと
仲直りしてくれて」

嬉しそうなビリジオンと、照れ臭そうなエモンガ

「ああっ…
うん!なんかスッキリしたぜ!
頑張ろうな!氷触体を目指して!」

「ええ
因みに私、エモンガはやんちゃだし、でも可愛いし…だから好きよ」

「え…?えええーーーっ!!?」

いつも噛み付いてばかりだったから、そんなこと言われるとはとても思っていなかった様だ

ビリジオンが歩き出すのにも気付かない程、エモンガは呆然としていた

「どうしたの?早く行きましょ」

「あっ…ああ…」

顔を赤くして照れ臭そうに先に進むエモンガ、ビリジオンは普段となんら変化が見られなかったが、心なしか嬉しそうなままだった






「そろそろ抜けられそうかな…
本当に大丈夫?葉月」

「…ん…はあ…はあ…」






「少し広いところに出てきたな…」

「敵に直ぐ見付かりそうな場所ね
長くいるのは危険だわ」

「そうだな」


「わわっ!お前達!どうやってここに!?」

ブニャットの声だった

エモンガとビリジオンが、敵に見付かってしまった

「ちっ…言ったそばからもう見付かっちまったか…」

「ブニャニャニャ!
ここは空に浮かぶグレッシャーパレス!
お前達がここにいること自体信じられないが…
でも本当にいるんだから仕方ないにゃっと!
捕らえるにゃっとーーーー!!」

ブニャット、そして六匹のドリュウズが出現し、ビリジオン達を取り囲んだ

「うっ…六匹か…」

「…隙を見て逃げた方が良さそうね」

「ブニャニャニャ!
逃げるつもりだろうがそうはいかないにゃっと!
手分けして追い詰めるにゃと!」

「くっ…」


「ビリジオン!エモンガ!!」

絶妙なタイミングで登場した二匹

「お、お前達はーーーーっ!?」

「卯月!葉月!」

「二匹共囲まれてるから吃驚したよ!
でも良かった!無事で!」

「ええ!」

卯月に引っ張られてビリジオン達と共にブニャットの前へ飛び出す

何で中に入ってくかな…

ともかく、再び戦闘に備える


「よし!なんとか突破しよう!」

「ブニャニャニャーーー!葉月ー!
お前キュレム様の折角の忠告を聞かないつもりだにゃっと!」

「…おあいにく、僕は聞き分けがいい方じゃなくてね」

「お前だけは絶対行かせる訳にはいかないにゃっと!
絶対に!
絶対に通さないにゃっとー!!」


向かってこようとするドリュウズとブニャット
その殆どがやはり僕に集中している

「葉月!」

向かってきたドリュウズの一匹をビリジオンが二度蹴りで蹴り飛ばし、エモンガがもう一体をスパークで横から妨害する

僕はブニャットに集中してギリギリのところを飛び上がってかわした

本当はもう少し余裕を持ってジャンプしたかったが、身体はついてきていない

卯月が隙だらけになったところを放電で攻撃

「さて、これでも…食らえ…!」

空中でバッグから不思議玉を取り出して使う

中身は爆睡玉

「ブニャ!にゃ…と…」

ドリュウズ共々眠りに落ちたブニャット

ここでもう逃げることも出来る筈だが、そうしたところで追われるのは目に見えている

出来るだけダメージを与えておいた方がいいのかもしれない

「遠慮せずに倒しちゃいましょう」

ビリジオンもそう言って一匹のドリュウズにマジカルリーフで攻撃しているし、倒すまではバトルは終わらなさそうだ

「く、くっそぅ…よくもやったにゃっと…!」

少しして直ぐに起きたブニャットが、再び僕に引っ掻くを当てようと向かってくる

「はぁあ!」

「ブニャット、悪いけど皆を無視して僕に向かって来ても無駄だよ」

放電が再び炸裂し、ブニャットもドリュウズも痺れて倒れた

悔しそうに唸るブニャットとドリュウズに、油断だけはしない様に皆で見下ろす

「先を急ぎましょ」

「そうだな
こいつら暫くして元気になったらまた襲ってきそうだもんな」

「他の敵も集まってきたら困るし…
数で来られたらこっちは敵わないわ」

僕達はブニャット達を放置して先を急いだ





《大分南下しているな…》


ムンナのテレパシーで、話しているキュレムとムンナ

目を閉じて集中している様子のムンナは、グレッシャーパレスの大分奥の方にいた

《速度が上がってきている》

《キュレム様、それは…つまり…》

《失望の風が強くなっている…
氷触体の力が大きくなっているのだ
我の予知より少し早く来そうだ
世界の破滅がな…

もはや氷触体は誰にも止められん
ここまで来て風向きが変わるとも思わんが、万が一ということもある
最後まで心して掛かれ》

《はい…》


テレパシーが終わり、ムンナが目を開く


「…そうか…
遂に…世界が…
なくなった方がましだと思っていたこの世界も…とうとう…なくなる…」

何を思っているのか、ムンナの目は空を見ていた


「ムンナ様ーーーーーっ!!」

慌てて走ってきたドクロッグ、ただ事ではないことを悟ったムンナも、少し慌てる様に聞いた

「葉月が…!
葉月達がここにやって来てるんですロッグーーーっ!!」

「な、なんだって!?」

「既にブニャットがやられたロッグ!
葉月は人間!氷触体も破壊出来るかもロッグ!
このまま野放しにしてたらヤバいですロッグー!!」

「落ち着け!ドクロッグ!
慌てることはない!」

驚きこそしたものの、ムンナは落ち着いていた

「ゲノウエア山の時とは違う
あの時は逃げるやつらを探したが、今回はやつらが目指す場所が判っている
それにワタシ達の方がここをよく知っている」

「た、確かに…」

「やつらを誘い込み、そこで一気に叩く!」

「ドクドクドクっ!
了解ですロッグー!
皆にも伝えときますロッグ!」








「少し違うところに出てきたけど、この先が…氷触体の場所に続いている…でOKなのかな?」

「うん、何となく上へ上へと登っているから大丈夫じゃないかな
ここから先はどうしよ…?
やっぱりバラバラで行く?」

「ここからはバラバラじゃない方がいいと思うわ
私達がここに来ていることはムンナにも知られているだろうし」

ムンナ達との戦闘は恐らく避けられないだろう
いつ襲われてもいいように、確かにここからは纏まって行動するのが最善だと僕も思う

「そうだよなぁ…
元々ムンナ達に発見されないためにバラバラに行った訳だからなぁ
一緒の方がいざって時さっきみたいに皆で力を合わせて戦えるしな」

「判った、じゃここからは一緒に行こ」

「そういえば…ブラッキーとエーフィはどうしてるんだろう…?
大丈夫かなぁ…」

「…心配だけど…
今は氷触体を壊すことを考えなくちゃ
ブラッキー達だって私達にそうしてほしいと思ってるだろうし…
それにブラッキー達だけじゃなく、ここにはいないポケモン達…
パラダイスや宿場町にいる皆だって…

だから私達も、皆を信じて、ブラッキー達の無事も信じて、先に進むしかないよ」

「そうね、皆を信じて」

「全てはこの世界を救う為だもんな!
皆を信じて…頑張るか!」


卯月の言葉でチームが纏まる

本当凄いよ、卯月は



僕達は、上を目指して更に奥へ進んだ



,
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ