心結び

□9,グレッシャーパレス
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「わわっ!?周りが全部氷だよ!?」


「山だ!山が見える!」


皆で遠く、これから進むべき道を見る


僕達は、雪の降り積もった氷の上に立っていた

きっと、ここが大氷河なのだろう

「目の前に広がってるのが大氷河で、その向こうに大きな山が見えるね」

「ああ…氷山だ…
きっとあれが、あれこそが…
言い伝えに隠された神秘の山じゃないかな」

「神秘の山?」

「そうだ、あれが神秘の山であれば、大結晶もきっとあそこに!」

そういえば、ブラッキーは大結晶が実在することを確かめたくて大氷河に来たかったんだったっけ
ブラッキーの目は、希望に輝いて、その山を見詰めていた

「皆!見て!」

その反対方向を向いて、エーフィが僕達に呼び掛ける
今度はそちらを見ると、どこまでも続く大きなクレバスが見えた

絶景だ

「大きなクレバスがいくつも見える!
そして私達の反対側には氷山!
ねえブラッキー!私達計算通り越えられたのよ!
巨大なクレバスを!!」

「やったな!エーフィ!」

「ええ!ブラッキーもお疲れ様!
でもこれからよね!」

「ああ!」


そうだ、これからだ
大氷河を冒険するんだ




「神秘の山という名は…言い伝えでは不思議な現象が起きることから付けられたらしいが、詳しいことはまだ謎に包まれている
でもそれは、物を空中に浮かせる現象じゃないかと、つまり…神秘の山には
物体を浮遊させる幻の大結晶があると俺は考えているんだ」

「へえ、それは是非見てみたいな
やっぱり研究してきた裏付けがあるのかい?」

好奇心から、ブラッキーに問いかける
しかしそれはエーフィが笑いながら、答えてくれた

「ふふ、そうだったらいいんだけど
ちょっと違うのよね」

「おい!エーフィ!
笑いすぎだぞ!」

「あはは!ごめんごめん!
勿論研究はしたし、情報も沢山集めたけど…
残念ながらちゃんとした裏付けなんて一つもないの
全ては言い伝えや噂…根拠のないおとぎ話ばかりだわ」

…つまり、確証はないってことか
それを今から、確かめに行く…と

「誰も知らないことなんだ
根拠なんて出てきやしない
大体裏付けなんてなくたっていいじゃないか
言い伝えや噂話…
それで十分だよ!
そこにときめきや憧れがある!
そう思わないか!」

ロマン…ってやつか?

「へえ!ブラッキーってダンジョン研究家なんだけど実は冒険家も顔負けのロマンチストなんだね!
こっちも負けてられないな!」

「ボクもワクワクしてきました!」

皆何だか楽しそうだ

しっかし、寒い…

「よーし!
皆行こ!あの奥へ!
この先どんな敵がいるか
何が待ち受けてるのか判らないけど…それでも、どんどん先に進んで行こ!」


「「「「おおーーーーーーーーっ!!!」」」」


そして皆気合い十分か

僕は…まあ、いつもよりローテンションかな
寒いから


僕達はそんな寒い中を進んでいった

敵ポケモンは氷タイプばかりかと思えば、クマシュンくらいで少し意外

エーフィやブラッキーとも初めて戦ったけれど、二匹共なかなか強い



「流石に…寒いな」

突然降りだす霰に、身を震わせる
仲間全員が同じように身震いしていた

「葉月大丈夫?」

卯月の掛けてくれた言葉に反応しないくらいには、僕のテンションは下がっていた

「大分奥まで来たけど…
あっ!葉月!」

反応がないことも気に止めず、卯月が歩いた先に光が見えた

出口…だろうか

「あそこから抜けられるんじゃない!?
行ってみよう!」

ダンジョンを漸く抜け、光に目を細める

「あっ!氷山が!
氷山があんな近くに!」

ノコッチの言う通り、遠くに聳え立っていた氷山が随分近くまで来ていた

「綺麗だなあ…」

表面の氷が透き通っていて、不思議な模様の様に映り込んでいる

「とうとうここまで来たんだな…
あと少しだ」

「でも…この先進むのは難しそうよ」

「え?」

ビリジオンの声に、近くに視線を戻してみる

そこには広大なクレバスがまたも広がっていた

「これは凄いな…」

「どこまでも続いてる…
これじゃ回り道するのも難しそうだね…」

「ああもう
折角ここまで来たのに」

全くだ、寒いのを耐えて折角こんなところまで来たというのに

「どうしたらいいんだろう…」

「……あれ?」

近くに、不自然な跡を見付けて近寄って見る

うっすらと丸い窪みがついている
まるで、何かに抉られた様だ

「……!
待てよ…、これって…」

エンターカードの光の渦にそっくりだった

「葉月?どうしたの?」

「…エンターカードを使った後ってどうなる?
例えば地表が少し抉られて渦状に跡が出来るとか」

卯月と一緒に僕の近くに寄ってきた皆
その中から、ブラッキーとエーフィの方を向いて問い掛けた

「そ、その通りだが…」

「…じゃあ、これは?」

「……これは…
確かにマグナゲートを呼び込んだ跡だ」

やはりか…、しかしこれは誰が使ったのだろうか
エンターカードはエーフィとブラッキーしか持っていない…という訳じゃなさそうだな…

「窪みが薄い…
氷の削られ方からしてかなり前に呼び込んだみたいね
よく見付けたわね
これを」

「エーフィ、この窪み…調べてみて思い当たらないか…?」

「ええ
使われたエンターカードはスタンダードなもの…
地脈の呼び込み方もそんなに複雑じゃないけど…」

この跡だけで、そんなことまで判るのか

「でもこれが私の推測通りだとしたら…
本当…大したものね」

「試してみるか
ここに合うエンターカードは判るよな?」

「ええ
上手くいくことを祈りましょ

皆少し離れていて」

その場から離れ、ブラッキーがエンターカードをセットする

「3…」

「2…」

「1…!」

カウントダウンで、最後の一枚をセット

すると、光の柱が、氷山に向かって幾つも現れた

「光が…氷山に向かって…!」

「間違いない
これはマグナゲートの跡
しかも…ここから氷山へ抜けるためのものだったんだ」

「…でも、だとしたら誰が…」

一体、いつ誰がここでエンターカードを…

「そうね…」

「この辺りに住んでいるポケモンが似たような仕組みを使って向こうに渡る橋として利用してたのかもしれない」

「判らないけど…
そういった謎も、とにかくあそこへ、氷山へ行ってみれば判るんじゃないかしら?」

マグナゲートの光が点滅する
あまり話している時間はなさそうだ

「急ぎましょう」

「行こ!皆で!
この奥に!」

マグナゲートの光の中に入る

そこは勿論再びダンジョンの中

この先はきっと氷山へと続いているはず


ダンジョンを進む

中は地下道の様で、薄暗い

「暗いね葉月」

「あんまり引っ付かないで、戦いにくい」

「…寒いくせに」

「…」

全く卯月には敵わない


「さて…そろそろ出口かな?」

「あ、話し反らした」

「あっ!あっちから光が!」

「出口がありそうだな!」

出口を抜ける

キラキラと光る氷のドームの様な場所に出ていた

「なんだろうここは…?
外だと思ったんだけど、空が見えない」

「まさか」

「驚いたわ…
太陽は差し込んでいるけど、ここら外でも屋内でもないみたいね
この回りは多分氷で覆われているんだと思う…
私達は今…氷山の中にいるんだわ…」

「ひょ…氷山の…中だってーーっ!!?」

「ええ
この氷山は中が大きな空洞になっているのよ
上を見て」

外から差し込む太陽の光を反射して、氷がキラキラと輝いていた

「ここは全て氷の壁に覆われている
氷の巨大なドームといったところかしら」

「後…あの中心にあるもの…
あれは一体…」

「氷の柱なのかな?」

尖った氷の柱が、幾つも重なる様に突き出して、針山の様になっていた

「まるで…まるで大きな…
氷の城の様にも見えるけど…」

「氷の城…
ノコッチの言う通りかもしれないな…
そしてあそこに…あの氷の城に…
俺が求めた…幻の大結晶があるのかもしれない…

皆ありがとう
皆のお陰でここまで来れた
本当感謝している」

「全くブラッキーったら、何言ってるだか
感動するにはまだ早いわよ」

その通り、これからが本番だろう

「早くあそこへ行ってみようよ!」

「そうだな
でも皆には感謝したいんだ
本当ありがとう

俺達の冒険もいよいよ大詰めだ
頑張って行こう」


さあ、さっさと攻略してこんな寒い所からおさらばしよう

…当然、そんな甘いものではないであろうが

随分奥まで来た

ここまでコマタナやゾロアに苦しめられながらやって来たが、ビリジオンと相性が良かったから助かっていた

「はあはあ…はあはあ…」

「ノコッチ大丈夫?」

疲れたのか、荒い呼吸を繰り返すノコッチにビリジオンが声を掛けた

「うん、平気
少し息苦しい気がするけど…」

「そう言えば私もそんな気が…」

そんなに高い所に登っている訳でもないのに

「皆!ちょっとこっちまで来てくれ!」

ブラッキーに連れられて少し奥に行く

そこには不思議なことに、浮いた氷の塊が幾つもあった

「これは…!」

「…本当に…」

「これだけじゃない
他にも浮いている物があちこちに見える
どうやらただの噂じゃ片付けられなくなってきたな」

幻の大結晶…か

「言い伝えでしかなかった物が…実在する可能性が高くなったね」

「あれ?今何か光った様な…

これは…何だろう…?」

反射して光ったらしい物が幾つか転がっている

「透明だし凄く綺麗だよね」

「これ…フリズムじゃない?」

フリズム?

「ええ
とても珍しいお宝よ」

「えっ!?お宝ーっ!?」

「それにしても珍しいな
一度にこんな沢山のフリズムは見たことがない」

不思議な形をした、フリズムというお宝

綺麗…ではあるけれど、それだけでお宝という程の物には見えない

「それだけでも来たかいがあるって感じよね♪」

「卯月!すごいよ!
これ全部お宝だってーーーっ!!」

「フフフッ!
しかもこれ、ただのお宝じゃないのよ
ねえ卯月
ちょっとお願いがあるんだけど…
フリズムに大きく開いている部分があるでしょ?
そこに向かって何か喋ってみて?」

何か喋る…もしかして、録音機能か何かか?

言われた通り、卯月がフリズムに向かって喋る

「エー…私達は…
月乃道だーーーーっ!!」

《月乃道だーーーーっ!
月乃道…だー……だー……》

「わっ!」

山彦見たいになったな

それだけでは終わらず、フリズムが白く凍った

「さっき喋った卯月の声が白く凍ったの」

「わ、私の声がー!?」

「そうよ
じゃ今度はフリズムを温めてみて」

折角だから僕が手を出してみる

フリズムを擦ったり、息を吹き掛けたりしてみた

白く凍った部分が溶け始め、中から音が流れ始める

《エー…私達は…
月乃道だーーーーっ!!》

「卯月の声だー!!」

「へえ、なかなか面白い品物だね」

ボイスレコーダーみたいだ

「これ私の声なの…?
何か変な声ー
でも面白いねこれ!」

「どうお?
フリズムはただのお宝じゃないってことが判ったでしょ?」

「うん!私凄く気に入ったよ!」

「幾つか持って帰ろうよ
留守番してくれているエモンガのお土産にしよう!」

「うん!それはいいね!
きっと喜ぶよ!
全部持って帰るのは流石にがめつ過ぎるから…
幾つか持って帰ろう!」

ということで、各自少しずつフリズムを手に取っていく

そんな中、ビリジオンは一つのフリズムが白く凍っているのを見付けた


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