心結び

□5,Vの季節と蜃気楼
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あれから数日、首の傷に少し悩まされながらも、僕は皆と依頼をこなしていた



「傷、良くなったみたいだね」

「うん、もう痛くないよ」


包帯も取れて、痛みもなくなったから声も自由に出せる様になった


コマタナ達に襲われたことも、もう少しで漸く過去のことになりそうだ


そんなある日のことだった


「あっ!皆おはよ!」


家の前に集合してきた仲間に朝の挨拶

しかし、仲間の中で一番騒がしいポケモンがいない

「あれ?エモンガは?」

「あれ…さっきまで一緒だったんだけど…」

不信がるノコッチ

「わっ!何?この風…」


色々な色が混ざる風が、僕達の間を通り抜けて行った

「何だろう…今の風…
普通の風じゃない気が…」

「Vウェーブよ」

「Vウェーブ?」

「この季節になると吹き始める独特な風のことよ
炎や水といった…ポケモンのタイプ事のウェーブが流れていて…
例えば炎のウェーブが流れている日は
炎タイプのポケモンが強くなったり成
長しやすくなったりするのよ」

へえ…

「Vウェーブはお天気と同じで日によってコロコロ変わるの」



「みんなー!」


漸くエモンガが合流

これでメンバーが全員揃った

「エモンガ!どこ行ってたの?」

「皆!パラダイスセンターに来てくれ!」

パラダイスセンター、掲示板やヌオーのお店、ドテッコツ組がある場所の名前だ

「ヌオーが呼んでるんだ!」

「えっ?ヌオーが?」




パラダイスセンターに向かうと、ドテッコツ組の近くで、ヌオー達が集まっているのが見えた


「よし、出来ただぬ」


「ヌオー」

僕が声を掛けて、皆話を聞く体勢になる

「んー、丁度良かっただぬ
Vウェーブの季節も来たことだし、これを立ててみただぬ」

そこには、また掲示板が

「Vウェーブ予報図だ」

「予報出来るのか」

「ああ」

偉そうに説明しようとしたズルッグをヌオーが睨み付けて、ズルッグが萎縮する

ちゃんと態度を改めたところで、ヌオーも僕達に加わってズルッグの話を聞く

「まず…
Vウェーブのタイプは日によって変わるんだ
まあ天気みたいなもんだな
お前ら今日の天気とか明日の天気とか気になるだろ?
だから天気予報を見る
まあ、それと同じだ
今日や明日のVウェーブ情報が見れる…つまり…
Vウェーブの天気予報が見れるってことなんだ」

実際の掲示板に書かれている情報を見る

「今日は格闘で…明日は電気…
明後日は水かあ…」

「そっか、今日は格闘タイプだから…
格闘タイプが有利なんだね
ボクはノーマルだから格闘には弱い
ボクが今日冒険するとしたら、格闘タイプの敵ポケモンには要注意だね」

「でもその代わり次の日は電気だからずっとノコッチが不利になることはないし、オレにとっては逆に有利になるぜ」

電気だと、ピカチュウである卯月も有利か

「そんな感じでVウェーブ予報図を利用していくといいだぬ」


突然、地面が揺れる

「上だ!何か落ちてくるぞ!」

見上げる

炎に包まれた何かがこっちに向かっているのが見えた

「こっちに向かっている!!」

「ひえ、逃げろーー!!」

バラバラに逃げる


ドーン!

大きな音がしたと思ったら、次に聞こえたのはちょっと間抜けな声だった


「じゃーーーーん!!
ビクティニ到来!!」

「な、なんなの…」

本当…なんなんだ…

人騒がせな…

しかもちゃっかりあの瞬間に掲示板、いやそれだけじゃなく、絨毯まで敷いて変なルーレット設置して…

まさか店でも構えたんじゃ…

ぞろぞろとビクティニの前に戻る

「なんだビクティニじゃないか
吃驚させやがって
ここに落ちてきたってことは…
今年はここで店を開くつもりなのか?」

「うん、ここに決めたんだ

ボクが、勝手に

よろしくね

Vルーレット!!」


マジだった

しかもなんだその決めポーズ


「ドテッコツはあのポケモンと知り合いなの?」

「まあな
オレだけじゃなく、ここらに住んでいる者は皆知っている
こいつの名前はビクティニ
Vウェーブの季節になると必ずやってくるんだ」

「で、それは何なの?」

僕が指したのはあのルーレットと思わしきもの

「これは…ボクの自慢の…

Vルーレット!!

ボクの商売道具だよ
これを回すと今日のVウェーブが変えられるんだ」

「ええ?Vウェーブのタイプを変えられるってこと?」

「うん、この…

Vルーレット!!

…を回せばね
でもタイプを変えられるかは運次第
誰にも判らないんだ
後…

Vルーレット!!

…を回すのは1日に一回だけ
チャンスは一回だけだからやる時は慎重にね

後これ…お金を注ぎ込めば好きなタイプに変えることが出来る…
かもしれないからよろしくね!

Vルーレット!!」


何回やるんだその決めポーズ…

結構鬱陶しいぞ…


「ビクティニ!久し振りね!」

「あっ!ビリジオン!
久し振りー!
今はここにいるんだ!」

「相変わらず元気ね
でも…一々…

Vルーレット!!

…と言いながらポーズ取るのはどうかしら
ちょっとしつこいポケモンだと思われるかもしれないわよ」

既に思ってるよ、残念ながら

「うん、そうだね
判ったよ、次からはやめるね

きっと、多分

Vルーレット!!」

やめる気ないな


「葉月、卯月
ビクティニはノリはちょっと妙だけど…でも実はとても優しいポケモンなのよ
ビクティニはVウェーブで困っているポケモン達を助けたいと思って、あのVルーレットと一緒に全国を回っているのよ」

「はい!全国を回ってまーす!
ボクもVルーレットも回ってまーす!
あはは!

あははははははっ!!


Vルーレット!!」


何なんだ一体…


「…まあとにかくVルーレットは必要な時…つまり、どうしてもタイプを変えたい時にやればいいんじゃないかしら?」

「うん、そうだね
葉月!また依頼行こ!」

「ん」


今日は、格闘、つまり…ビリジオンが有利だな


ノコッチには不利だからノコッチ抜きの四匹で、今日の依頼へ向かうことにした



その日の夜…


僕は魘されていた



虹色の光が、辺りに充満している光景を見ていた

それは、夢…以外に形容の仕様がない程だった


《助けてっ!!》


突然、暗転

「うわぁあっ!」

突然の大きな声と雰囲気の違いに、僕は叫んでいた

「はあ…はあ…」

飛び起きた僕の身体は、汗で濡れていて、かなり気分が悪い

飛び起きたことで卯月が起きてしまわなかったか確認、ぐっすり眠っているその姿を見て、僕はやっと落ち着きを取り戻した

夢…か

あの声…

"助けて"って声を聞いたのは、これで二度目…

この世界を助けてほしいと言われて、結構時が経った様に思うけれど、未だに何をしたらいいのかは判らない

…何かヒントはないのだろうか
今のところ…この世界に来る時に見た映像と、声だけ…

今の僕に助けられるのだろうか


「…卯月…」

今のところ平和な様にも思えるこの世界が、危ないとは思えない

そもそも、あのムンナがサザンドラに追われるということと、この世界を助けるということにはどんな繋がりがあるんだ


まあ、考えてても仕方ないか

僕は、再び眠ることにした

まだ、夜は深い



いつか、別れることになっても

今だけは傍に…

いや、我が儘だよな…ごめん卯月…




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