心結び

□1,感情の希薄な少女
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説明のいらない極普通の高校、そこの生徒で、たった一人孤立してお昼ご飯を食べている一人の少女がいた

名を、葉月という

もはや気にする人はいないが、入学当初なんかは酷いものだった

一人で食べているのをクスクスと笑う者が何人か、今は当たり前になっていて皆完全に無視

それでも、この葉月という人間は一人でただ黙々と食べていた

彼女には、感情というものがないのではないかとすら言われる程、何に対しても大した反応を示さない

笑うこともなければ、泣いたり辛そうな顔をすることもない

ただ無表情


それでも彼女は、家に帰ると、特に楽しいからという理由ではないがポケモンをやる

相手の手を読んで戦うのはそこそこ楽しめた

そんななか、彼女は今日新発売のポケモン不思議のダンジョンシリーズに手を出そうと、密かに帰りの時間を楽しみにしていたのだが、そんなことはここにいる誰も気付いてはいなかった

相変わらずの張り付けた様な無表情で、漸く迎えた下校時刻に素早く帰り支度をする



これからまさか、自分があんなことになるなんて、この時の葉月は思いもしてなかった




……



…………ここは…


ここはどこ……

夢か……?



《………誰か》


……?誰?


《……あなたは、人間ですか?
……もしそうなら……ポケモンの世界を……助けてください》


一体、何を言っているの……


《……助けて!》


突然、夢の雰囲気が変わる


ムンナが、狂暴そうなサザンドラに追いかけられている映像が、頭に直接送られてきた



そして映像が終わると、ぼやけているが、鏡の様に自分の姿が見えた


僕……

姿が……変わっていく……?


現れた姿は、ツタージャだった


動けることに気付いて、自分の姿を見えるだけ確認する


嘘だ、本当にツタージャになってる

科学的にあり得ない


突然、目の前に何か光が

さっきの声の聞こえた場所……だろうか


近付いてみる

光が強くなる

そして……





「う、うわぁあ!」

魔方陣の様なものが現れた後、

突然、何処かの上空に投げ出された





「ななな……!?」

スカイダイビング……!?

いやいや、そもそも何が起こった!?

ワープ!?召喚魔法!?

二次元じゃあるまいし!!


ていうかこの高さから落ちたら間違いなく死ぬ……!?


ああ、短い人生だったな

グッバイマイ人生……



どんがらがっしゃーん!


何か少し柔らかい感触、そして激しい衝突の痛みに、意識が遠退く


あれ……?生きてる……?


「ねえ!?大丈夫!?しっかりして!」


声が聞こえる……
誰だろう……


何とか目を開く、逆光で見えにくいが、間違いなく人間ではない


えっと……嘘だあ……

現実逃避したくなる

まだ夢を見てるのだろうか

いや、さっきの衝撃は夢じゃない


「ピカチュウ……?」

「あっ!起きた!」

間違いなくピカチュウだった、しかもメス

「君大丈夫!?」

ていうか、喋ってる……

「怪我とかしてない!?
突然上から落ちてきたから」


あ、そっか今は僕もツタージャになったから……

怪我をしていないか身体のあっちこっちを確認し出したピカチュウに、いろいろと追い付けない

「どこも痛くない!?ねえ!?」

「えっと……あっちこっち痛い…」

「ええ!?」

「のは最初だけだった」

「ええ!?」

「つまり今は大丈夫」

少し自分のペースに持ち込めて満足

「本当…?」

「うん」

「よかったー!」

思っていた以上に喜ぶピカチュウに、やっぱり調子が狂う



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