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□5,新しい日常の頃の
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俺は研究員の仕事を行き詰まったと偽ってサボり、見回りと言って外に出ることにした

先に施設内を歩き回っていると、不穏な空気の団員に気が付いた
手にボールを持ち、処遇をどうするか考えている様だ

「おい、どうした?」

声を掛けてみると、団員は少し驚いた顔をしたが、訳を話し出す

「ああ、ヘイネスか
例の少年の見張り役をさせてたズバットをどうするか迷っててな
丁度良かった、お前研究員だしこいつ処分しといてくれ
危険な実験に使ってくれて構わんから」

「え?
…ああ、判った」

一瞬迷ったが他の団員に渡されずに済んで良かった

団員はさっさと消え、俺とズバットのボールのみがその場に残っていた


俺はイワヤマトンネルを目指してアジトを後にした


暗い暗いトンネルの中

洞窟内のポケモン達に驚かれる中、ある程度進んだところでボールからズバットを出した

「さあ、これで自由だ」

『…ズバッズバッ』

ズバットは何故か何処にも行かなかった

「…そう言えばお前…あいつの監視役だったんだよな
あいつと話したのか?」

『…』

ズバットは俺と意志疎通を試みているのか、黙って頷いた

「いいやつだったか?」

『…』

コクコクとしっかり頷く

「あいつを…助けたいか?」

『ズバッ』

一声鳴いた
俺でも、それは肯定を意味していることが判った

「…俺は、あいつを助ける為にスパイになるって決めた
ズバットも来るか?」

また頷いた
ズバットに迷いはなかった

「そっか
じゃあ、よろしくなズバット」

『ズバッ』

ズバットを再びボールに戻し、ここに来た当初の目的を達成することなく引き返した

結果論だが、これでアーボやリザードンを無理に戦わせなくて済む
同じ目的を持つ者同士、このズバットと暫くは戦おう

俺はそう心に誓った



修行することも大事だが、アーボ達のことも考えてやらなければ
俺はいろいろ考えた末、海水浴出来る砂浜にやって来た

クチバの実家で、団員服何て脱ぎ捨て私服になって、母に会った
旅に出たっきりだったからもう七年も経っていた
それでも、優しく迎えてくれて、ちゃんと俺の話も聞いてくれた

ロケット団にいたことも話した
これからのことも全部
いい人に巡り会えたんだね、母の言葉はそれだけだった

アーボと遊んだ懐かしの砂浜
そこで三匹共ボールから出す

「アーボとリザードンはその辺で遊ぶなりしててくれ
ズバット、特訓と行こうぜ」

アーボ達の様子を気にしながらも、俺とズバットの特訓は始まった

アーボ達は様子を窺う様にその場でじっとこっちを見ていた、暴れたり遊んだりする気配はない
しかし俺の様子を窺いながら欠伸をするアーボを見て、俺は少しホッとした

午前中、クタクタになるまで特訓をした俺達は、そのまま海で遊びだした

「アーボ達も来いよー!」

声を掛けて見るも、二匹共お互いを見合わせて首を竦める様な仕草を見せただけだった
相談しているのだろうか
結局その場で眠る様な体勢を取ったアーボを見て、リザードンも座ったまま動かなかった


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