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□4,罪と向き合う頃の
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あのトレーナーは、俺とは違う

しかし、昔の俺と同じように、いや、それ以上に

ポケモンと仲良くしていた

そして俺より強い


俺に足りない物はなんだ?
俺は、今まで強さを求め、ポケモンと仲良くすることを止めた

しかし、仲良くしている奴に負けた
一度ならず、二度までも

俺は考え込みながらアジトへ帰り着いた

その頃にはアジトは騒然としていた

「な、何があったんだ?」

近くを通った団員の一人に話し掛ける
団員は何とも言えない表情で応えてくれた

「アジトに子供が入り込んだんだ
驚くことに、ポケモンの言葉が解るんだってよ
今からヤマブキのアジトへ送るらしい」

ポケモンの言葉が解る少年

奇妙な話しだったが、団員は更に情報を提供してくれる

「珍しい緑髪の少年でな
ボスのところに行ける程実力もあるらしい
結局ボス自らが相手をして捕まえたんだってよ」

「成る程、情報ありがとう」

どうやら、さっきの少年の様だ

あいつ、ポケモンの言葉が解ったのか

今にして思えば、時折ポケモンと親密そうに話していた様子が思い出される

他のトレーナーと違って、あれは何となくではなく実際に話していたということだろう

「それにしても馬鹿だよな、サカキ様と賭け勝負をする何て」

「賭け?」

「ああ、自分が勝ったらロケット団を解散させろって
サカキ様は反対に、自分が勝ったらお前のポケモンとお前自身は好きな様にさせてもらうって言ったらしいぜ」

「じゃああれか?
そいつ、これからロケット団員にでもなるのか?」

「かもしれねえし、実験体として使うだけかもしれない
まあ、本人がロケット団員として働く気があればそうなるだろうな」

前に会った時、こいつはそれを拒んだな
しかし、命が掛かっているとなったらどうなるだろうか
ボロボロになったポケモン達と、気絶した状態のあの少年を団員が運んでいくのを見て、俺は考えた

そもそも、こいつは何故ここに乗り込んだのか

無茶だってことくらい、流石に判った筈だ
ただの慢心じゃないだろう

…まさか、俺のせいか?

暴走するポケモンを見て、これ以上そういうポケモンを増やしてはいけないと…?

今までの印象から、お人好しだということは何となく判る
運ばれていったポケモンの中に俺が使っていたポニータ、なつきでしか進化しないエーフィとブラッキーの姿も見えて、俺は確信した

全てポケモンの為か

こいつはそういう人間

そして、護るべき何かがある人間なんだ


俺に足りなかった物は、護るべき何かを見付けられていなかったこと

なのかもしれない


俺は研究に戻った

しかし、ポケモンを強化する実験はもうやる気が起きない

あの少年がどうなったか、そればかり考えてヤマブキアジトへ行ける機会を窺っていた

そんな頃だった

「ヘイネス、お前ヤマブキアジトに行きたいんだって?」

「あ、ああ
あっちの方が設備整ってるからな」

「実は許可が出てな、例の少年のポケモンをいろいろ調べたいんだが人手が足りないとかで丁度探してたみたいなんだ」

「そうか、良かった」

例の少年、あのポケモンと話せるやつのことだ

「暫くさよならかー、まあ向こうでも頑張れよ」

「おう」

少年、早く何とかしないと手遅れになるぞ

俺は自分の立場も忘れて、あの少年を思って焦っていた




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