スケッチブック

□16,行方不明の先生
2ページ/2ページ



「さて、どれ行く?」

「お、おば……おば……」

まだ言ってた

「レーン、大丈夫?」

私より高いレンの顔を覗き込む
少し背伸びして顔を近付ける
そこで漸くレンは私に顔を合わせた

「メイは怖くないの?」

かと思ったら口をついて出たのはそんなこと

「怖くなくないよ?
でもそれならそれで、探すの怖いよね?
だから依頼行かないかなと思ってるんだけど」

「うう……そうだよね
カモネギ先生は心配だけど、ここはジバコイル保安官達に任せてオレ達は依頼かな……」

レンは漸く前を向き始めたみたい
私は繋がりオーブを開いて今日の依頼を決める


今日はヨーテリーを扉まで連れていく依頼にした
目的の扉はB9階で、なかなか大変そうな依頼だ

最近妙によく行くニンフィアと、依頼主のヨーテリーと一緒に扉を目指す

場所はニョロボンリバー

「すっかりお馴染みになってきたねー」

「よく呼んでくださってありがとうございます♪」

ボーマンダぶりの四人組での行動になる
特に依頼主のヨーテリーは倒されない様に私達でなるべく囲う様に歩いた

「なんか、前にはいなかったポケモンがいるんだけど……」

「そういうポケモンは他のポケモンとは違って基本的に強いですから気を付けましょう」

ニンフィアが言ってることは前にも経験済みだからよく判る
因みに私の記憶が正しければルクシオなんて前はいなかったはず
だよね?

「私達の後ろに隠れててね」

「はい、お願いします」

ヨーテリーは素直になるべく安全な、列の中央を歩いてくれた

「メイ、あれってポケモン……だよね?」

レンが指した方を見ると、そこには黄色い小さな何かがいた

「あれはバチュルというポケモンですね」

「凄い小さいね」

「電気を放ちますので気を付けてください」

小さくてもちゃんと敵ポケモンらしく、私達を見付けるなりバチュルは糸を吐いて急接近してくる
この動き方というか糸を吐くってことは虫タイプか

「レン!」

「オッケー……!」

ヨーテリーはニンフィアに任せ、私とレンでバチュルに対峙する

バチュルは糸を吐くで私達の動きを封じようとしてくるけど、私達は右と左に綺麗に別れてそれを回避、どちらを狙うべきかバチュルが迷った
その隙をついて私がヘドロ攻撃を放つ
しかしバチュルも素早く反応し、私にクモの巣を吐いた

「うわっ……!」

結果バチュルはヘドロ攻撃を食らったものの私の動きを封じることには成功した

「一匹じゃないってこと、忘れてない!?」

別方向に回避していたレンが火の粉で止めを刺して、バチュルは消えた

「メイ、大丈夫?
自分を囮にするなんて、無茶だなあ」

「うえ、気持ち悪い……
バチュルならタイプ的に大したダメージにならないと思って」

クモの巣から抜け出すのをレンに助けてもらって、私達は先に進んだ


何とかヨーテリーを無事に扉まで連れていくと、ヨーテリーが鍵を開けて新しいダンジョンへの道が拓かれた

その新しいダンジョンはまた追々ということで、私達は帰宅
まだカモネギ先生は見付かっていなかった



そして、次の朝がやって来た

目が覚めると、私はいつも通り部屋を出て、コノハナに挨拶する

「おはようだど
一日経っちまったけど……カモネギ先生大丈夫かなぁ……」

コノハナもカモネギ先生のことを心配してるみたいだった

「……早く見付かるといいんだけどね」

「だな」

支度を済ませ、家を出る
いつも直ぐに来るあの元気な声が聞こえなかった

「あれ?」

今日はたまたまタイミングがずれちゃったのかな?

寝坊とか?

アバゴーラの家を見ると、声が聞こえてきた

「おーい!メイ!」

直ぐ近くの橋からだった

側にはシキジカとヌメラもいる

あれ、今日は皆随分早いね

「メイ!た、大変だ!」

「カモネギ先生が見付かったんだ!」

慌てた様子でヌメラとレンがそう言った

「……えっ!?」

私は一拍遅れて驚いていた

「湖畔の波打ち際に倒れていたみたいなの!」

「さっきそれを聞いてメイにも声掛けようと思って!
行こう!」

「う、うん!」

私達は広場の湖畔に向かった

湖畔は大きな木のある丘側にあり、今はカモネギ先生の騒動で沢山のポケモン達が集まっていた

「あっ!ヤンチャム!」

「チョボマキ!ニャスパーも!」

学校の仲間達も勢揃いしていて、私達はそこに集まった

「どんな様子なの?」

「取り敢えずは無事みたい」

シキジカの問い掛けに、ニャスパーが答えてくれた

「立ち上がって皆と普通に話してるよ」

チョボマキも落ち着いているみたいで、どうやら本当らしいことが判る

「ほっ、良かった……」

シキジカが安堵の息を吐く


「ええっ!?覚えてないの!?」

「ああ……ビビり過ぎたせいなのか、記憶が飛んでるんだ……
暗いところに連れていかれて……
そこに閉じ込められて……
そこで……青白い……炎が……
うああああぁぁぁーーーーっ!!」

思い出しただけでカモネギは叫んでいた

「恐ろしい……よっぽど怖い目にあったんじゃろうな……」

アバゴーラが震えるカモネギに同情の目を送っていた

「想像もしたくないな……」

ハスブレロの言う通りだ、特にレンにとっては夜も眠れない恐ろしい想像になるだろう

「あ、青白い炎って……まさかやっぱり……
お、お化け……?」

ラッタがその名を口にすれば、私の隣から悲鳴にも近い声があがる

「ええっ!?お化けーーーーっ!?」

「お化けなのーっ!?」

後ろのヌメラも大きな声を出してた

「わ、ワシは怖くない!怖くないぞう!!」

そういう人って大体怖がってるよね……!

「まあまあ!皆さん落ち着きましょう!
不思議な出来事が続いているので不安になるのも判りますが……
カモネギ先生もこうして怪我もなく帰ってきた訳ですし……
教頭先生も無事でいます(家で寝込んではいますが……)
大騒ぎする程の害は出ていません」

「確かにそうだよな……」

「でもこれからもっと酷いことが起きるのかもしれないぜ……?」

起きてからでは遅いことが起きるかもしれないよね
カモネギ先生も一日で帰ってきたから良かったけど、もしこれがエスカレートして何日も帰って来ない誰かが出ちゃったら……

「そうですね……注意は必要ですよね……
皆さん、当面は夜の学校には近付かない様にしましょう
学校に行かなければ取り敢えずは変なことも起きないかと
ジバコイル保安官には後でワタシが伝えておきます
では、解散しましょう」

校長先生がそう言って、皆解散していった

私達子供達だけがその場に残っていた


「カモネギ先生に何が起こったんだろ……?」

「本当不思議ね……」

「不思議もなにも決まりだろ?
お化けでよ」

ヤンチャムが半分面白がってそう言った
ターゲットは勿論レンだろう
案の定涙目になっている

「やめてよ、そっち方面に話を持っていくの……」

「ボクも怖いよぉ……」

レンと同じくヌメラも凄い怖がってる
実際に目の前で起こってることを面白半分に言うものじゃないよね

「クククッ意気地無しめ
夜寝られなくなってベッドで震えてるんじゃないぞ!
ハハハハハハっ!!」

ヤンチャムとチョボマキは笑いながら走っていった

「うううっ、本当やめてほしいんだけど……」

「どうどう……」

レンの肩をつるで軽く叩いて宥める
効くとは思ってないけど

「真に受けちゃダメ
からかってるだけよ
さあ、ヌメラも元気だして
折角の夏休みなんだし、楽しみましょ♪」

シキジカの明るさに助けられる
そうだよ、シキジカの言う通りだ

レンもヌメラも頷いて、私達も解散した



next→17,子供会議
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ