スケッチブック

□11,調査団見習い
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見習い調査団となって最初の朝がやって来た

メイはいつもの様に起き、コノハナと朝ごはんを食べ、レンと学校へ行き、授業を受けた

そうそう、今日だけはチームの名前の由来となったスケッチブックを持って、学校に来ていた

そして放課後

「終わったー!」

皆が学校から家へゾロゾロと帰っていく

私達も帰りの支度を済ませて一緒に学校を出た

「今日から調査団見習い!早速開始だよ!」

「うん!」

広場に出ると、デンリュウがまたあちこちぶつかりながら歩いていた

「大丈夫?デンリュウ」

「は、はい
何とか……
その声は村の子供達」

ぶつかってフラフラしてるデンリュウはさっきぶつかったばかりの建物を向いたまま返事を返す

「うん
これから調査団見習いを始めようと思ってたんだ」

「そうですか
頑張ってくださいね
あっ……そうだ!」

漸く落ち着いてきたらしいデンリュウが、私達に向き直る

「そういえば繋りオーブの使い方を説明してませんでしたね
ワタシとしたことが肝心なことを忘れてましたね
このアンポンタン
では……!
繋りオーブの使い方!説明しちゃいましょう!」

自虐した後直ぐにいつもの決めポーズを取るデンリュウ、私達はもう慣れてしまった
と思う

「まず調査団ガジェットを取り出してください」

言われた通り取り出す
ここから説明は中略させてもらう

繋りオーブを起動すると、星の様なものが沢山見えた
真ん中の一つだけが、不思議にもポケモンが見える
困った顔で、小さく呟いている

「ニンフィアですね
詳しく見てみましょう」

言われた通り操作すれば、ニンフィアの困り事と、場所が表示された

こわそうな森で迷ってしまったらしい事が書かれていた

「繋りオーブはこのようにポケモン達の悩みや呟きを見ることが出来るのです」

「ふえーーーっ!」

「それで……どうします?
調査しますか?」

「勿論!ニンフィアを助けたいよ!」

調査を受けて手続きが終わると、繋りオーブを閉じた
どういう仕組みなのか、何だかとても不思議ダネだけど、この際気にしない

「よく出来ました!村の子供達!
こうして調査の仕事を受けていくのです!
調査団のお仕事、頑張ってください!」

「うん!ありがとうデンリュウ!
よーし!今からやるよ!メイ!
頑張ろうね!」

「うん!頑張ろー」

そんな訳で私達はこわそうな森へとやって来た

ニンフィアを見付けるまでどんどん奥へと進んでいく

当然戦う以外の時間は歩くだけで暇な私達は、会話を楽しむ

「それで、メイ
それがスケッチブック?」

「知らないのに気に入ったの?」

「いや、そうじゃないけどさ
メイは何か描いたのかなと思って」

近くに敵ポケモンの気配はない
私は、気になるのならと思って持っていたスケッチブックを開く

「見たければどうぞ?」

「やった!」

何を喜ぶことがあるのやら
レンは、ワクワクしながらそのページを捲っていく

「すげえ、上手い」

「そんなことないよ」

まだ数は描いていない
あの丘の上から描いた穏やか村
それと、空いた時間に少しずつ描いていたロゼリアとスボミーの、再会した時の笑顔
私の記憶の中にある感動的で綺麗な涙

「あれ、これだけ?」

「今はね」

そう、これだけ
今の私には、殆ど描けるものがない
描きたいと思うくらい深い印象を与えた出来事がまだ数少ないんだ
記憶が、ないから

「そっか
でもメイがこんなに絵が上手いとは
人間の頃から描くのが好きだったとかかな?」

「私もここまで描けるとは思ってなかったけど
この身体で」

ああ、そっか

レンは、大して気にせずそう答えた

人間の身体と、フシギダネの身体じゃ勝手が全然違う
筈なのに
どうして違和感の一つも大して感じないのだろう

前足をギュッと握って、私はその感触を確かめた
確かに人とは違うのに
もう慣れてしまったのだろうか
判らない自分自身に、ただ戸惑うことしか出来なかった

「でもさ、確かにメイの過去のことは判らないけど
こんなに絵が上手いなら、オレのことも描いてよ」

「ん?
ああ、そっか
……描きたいと思えたら描いてあげるよ」

ニヤリと笑って、私は答えた
スケッチブックも片付けて、呆気に取られた顔をしたレンを置いていく様に歩き出す

「え、ちょ……!メイ!」

慌てて後を追ってきたレンに、悪戯が成功した様に笑った

「描きたいと思えたらって……」

「精々私の印象に残る表情を考えるといいよ」

「メイの意地悪ぅ!」

「あはは」


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