スケッチブック

□10,デンリュウ
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「思ったより弱かったなあ」

「それよりメイ、今のうちに奥へ行こう」

「うん」

ニョロボンの横を通りすぎ、先へ進もうとする

「メイ!危ない!」

「へ?」

自分の身体に影が差す

振り向くと、ニョロボンが一匹、腕を振り上げていた

「わ、わああっ!」

やられる……!



しかし、衝撃はいつまで経ってもやって来なかった

バシィ!
という音がしたかと思うと、ニョロボンは再び地に伏せていた

「流離いのスタイリッシュ旅ポケモン!
デンリュウ!ですよ〜!!」

「ほ、ほえ……?」

思わず閉じていた目を開けると、襲い掛かってきたニョロボンの後ろに、探していたデンリュウが立っていた

「で、デンリュウ!!」

レンが嬉しそうに私の隣まで引き返してくる

「危ないところでしたね
やれやれ
油断は禁物ですよ」

「すみません、ありがとうございます」

「良かった!探してたんだよ?」

私がお礼を言うのも遮って、レンはデンリュウに本題を切り出した

「ほっ?ワタシをですか?
そういう君達は村の子供達
ワタシに何のご用でしょう?
……と、その前に……

ここは一体どこ何でしょう……?」

「ええっ!?」

「村をいろいろ見て回っていた筈なんですが……
気が付いたらここにいまして……」


私達は、方向音痴のデンリュウに半ば呆れつつ、村まで案内した


その頃には日も沈んでいて、私達は折角だからとあの大きな木のある丘にやって来ていた

そして、今訳を全て説明し終えたところ

「……なるほど
繋がりオーブを渡す為にワタシを……?」

「うん
ちょっと探すのが大変だったけど会えて良かったよ」

「やれやれ、いけませんね
子供にそんな苦労をかけさせるとは」

デンリュウは首を振って少し申し訳なさそうに言った

「ねえデンリュウ
デンリュウは調査団で働いてるの?」

「……違いますよ」

少しの間の後に、デンリュウは否定した
何だか気になる間だ

「えっ?
ち、違うんだ……」

レンは残念そうに頭を垂れた

「そっかー
残念……
調査団は繋がりオーブを持っているって聞いたから、もしかしたらって思ったんだけど……」

「調査団で働きたいんですか?」

「うん!
オレ、調査団に入りたいんだ!
世界の色んな場所に行って、色んなポケモンにも出会って
そしていつかは調査団のガショエタワーにある、ポケモンの世界地図を完成させるお手伝いをしたい!
それがオレの夢なんだ!」

夢を語りだしたレンは、いつものキラキラと輝く笑顔を浮かべていた

「素晴らしい!
とても素晴らしい夢じゃないですか!!」

「でしょ!そうでしょ!!
そー思うでしょ!!
でも……皆は寄って集って無理だって言うんだ……」

また悲しそうに下を向いて、レンは言った

色々知っている私は、慰めることも出来ずにただその場に立っていた

「オレが子供だからダメだって……」

「確かに子供は調査団には入れないというのを聞いたことがあります
本当誰がそんなこと決めたんでしょうね
やれやれ
でも……調査団見習いなら……!
今でもやることが出来ますよ!?」

「「えっ?」」

思わぬ情報に、私達は同時に反応していた

「やれやれ、仕方がない
君達にこれをあげましょう!」

調査団バッジ(見習い)

調査団バッグ(見習い)

調査団ガジェット(見習い)

いちいち(見習い)とつくのが何だか可笑しくて、私はちょっと笑ってしまった

デンリュウが、道具の説明を始める

「まず調査団バッジ(見習い)!
調査団の証です!
……と言っても(見習い)ですが……!
そして調査団バッグ(見習い)!
いつもより道具が沢山持てる調査団メンバー専用のバッグです!
……と言っても(見習い)ですが……!
最後に調査団ガジェット(見習い)!
調査の仕事に使うとても大切なアイテムです!
……と言っても(見習い)ですが……!」

格好つけて言うデンリュウに、私達は呆然としながらもしっかり聞いた

「でも、見習いでも調査団は立派にやれます
調査団の大切なお仕事の一つとして、皆さんの悩みを調査し、解決するというのがあります
ですので君達も調査団バッジ(見習い)をつけて、ポケモン達を調査してみてください
もしかしたら悩みを抱えているポケモンもいるかもしれませんよ」

「そっか!そしたらその悩みを解決すればいいんだね!」

「悩みを解決すればそのポケモンと繋がりが出来ます
そこでまた調査団バッジ(見習い)です
……えっと、これからの説明は(見習い)は省略しますね……
君達にあげた調査団バッジは二個だけではなく沢山ありましたよね?
仲間になってほしいポケモンに調査団バッジを渡せば、一緒に冒険してくれます
そうやって仲間を増やしていけば調査団の実力もついていくと思うんです
次いでにワタシの繋がりオーブも君達にあげます
先程お渡しした調査団ガジェットがありますよね?
そこに繋がりオーブを嵌めてみてください」

ガシャン
レンが嵌めると、ガジェットが起動して画面に地図らしいものが表示された

「わあっ!これって地図!?地図だよね!!?」

興奮してるなあ
隣で見ている私は苦笑い

「はい、そうです
調査団ガジェットは繋がりオーブを嵌めることで起動します
地図だけでなく、ポケモン同士の繋がりや調査リストも確認出来ます
後、チーム名も登録出来ますよ」

「チーム名……?」

「はい
調査団をやるチームとして……
チーム名を登録してみてはどうでしょう?」

「ねえメイ
どんな名前がいいと思う?」

「ええ?私?」

暫く考え込む

夜の風が私達の頬を撫でる

少し視線を外すと、穏やか村が見えた

夜の景色もいいなあ
なんて思っていると、一つ、頭にアイデアが浮かぶ

「スケッチブック……
sketchbookなんてどうかな?」

悩みを解決するのも仕事の一つなら、いいんじゃないかなと思った
ポケモン達の笑顔で、sketchbookをいっぱいにするんだ

「sketchbookか!!
うん!気に入ったよ!ありがとうメイ!」

「決まりですね
ではこれからは調査団ガジェットをうまく使って
皆さんの悩みを解決していってくださいね」

「あ、ありがとう!デンリュウ!
……てゆうかなんでデンリュウはこんなの持ってたり色々詳しかったりするの?」

「フフフッ、聞きたいですか?
何を隠そうそれはワタ……「まっいっか!見習いでも凄く嬉しいよ!」」

ええ!?そこ遮っちゃうの!?

「ようし!明日から調査団見習い!頑張るぞっ!
絶対にがんば……
あの、メイ……
メイも一緒に調査団見習いやってくれるよね?」

えっ……ど、どうし……

「そっか!やってくれるんだね!」

ええっ!?

まだ何も言ってないんだけど!?
無言をOKと取ったとか!?
早すぎない!?

まあ、いっか

レンの楽しそうな顔を見ていたら、結局憎めないし許してしまっていた

「さてと、そろそろ帰るとしますか
もう遅いですし、親御さん達も心配しますし」

「うん!色々ありがとう!デンリュウ!
じゃ、またね!
バイバーイ!」



私達が帰った後、デンリュウはまだその場で、笑っていた

「フフッ、本当可愛い子達ですね」

ピピッ……ピピッ……

「おや?連絡ですかね?」

ガジェットを取り出して、通信に応答する

ダンチョー……ダンチョー……
聞こえますか……?

「聞こえてますよ、デデンネ君」

あっ良かった!やっと繋がった!
良かった……んですが……
何一匹で行動してるんですか!!!?
あれほど誰かと一緒にって!

声はデンリュウを敬語で叱りつけ、その音量にデンリュウの耳がキーン、と鳴った

何度もっ!何度もーーー!!!!

「やめてくださいデデンネ君……!
ガジェットでの通信とはいえそんな大声で言われたら目が回って……!」

あっ……すみません……

……で、今何処にいるんです?

「穏やか村ですよ
フフッ」

えっ?穏やか村ですって?
わっ!凄い!ダンチョーのくせによく一匹でたどり着けましたね?
それって偶然にしても殆ど奇跡に近いですよね?

「酷い言われようですね
やれやれ」

それでどうです?そちらの様子は?

「何と……、平和そのものですよ」

ええっ!?そうなんですか!?
それって情報が間違ってたってこと!?

「何とも言えませんね
ただ一通り調べてはみましたがここで得られる情報はなさそうです
暫くしたら戻りますよ」

なんか拍子抜けですね
でも了解しました
真っ直ぐ帰ってこれないと思いますが気を付けて
では……ピピッ……

「拍子抜けか……
確かにそうですね
でも来てみて判りましたが……

穏やか村……良いところじゃないですか
星もこんなに綺麗ですし
やっぱり平和なのが一番ですよね
それを守る為にも……もっと頑張らないといけませんね」



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