スケッチブック

□8,友達になれ
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おだやか村に帰りついた頃にはもう辺りはすっかり暗くなっていた

そして、私達は大きな木のある丘で、スボミーとロゼリアの再会に立ち会っていた

「良かった…心配したのよ…?
無事で…本当良かった…」

本当に心配していた証の涙が、目に溜まっている
スボミーは、貰ったハチミツを取り出して、ロゼリアに差し出して笑った

「お母さん、ハチミツ貰ってきたよ
いっぱい食べて元気出してね」

「ありがとう
でもお願いだからこれからは、危ないところには行かないでね」

「うん」

ロゼリアがスボミーをしっかりと抱き寄せて、涙を流しながら綺麗に笑った

私は、その笑顔を忘れたくないと思った


「この度は、本当にありがとうございました
お陰さまでこの子も無事に…
これはほんのお礼です」

幾つかの道具を渡され、私達は照れ臭そうに頭を掻いたり、頬を掻いたりした

本当に無事で良かった

「この子を心配してくれて、助けてくれて
感謝の気持ちでいっぱいです
でも…二匹共まだ子供なんだし、無茶なことはしないでくださいね
それでは失礼します」

「ありがとう!メイさーん!レンさーん!」

ロゼリアとスボミーは仲良く家へ帰っていった

私達は再び、ここに二匹だけとなる


「本当無事で良かったね
学校サボることになっちゃったけど、行って良かったよ」

「…うん
レンが来てくれて、助かった」

「へへ
すっかり暗くなっちゃったね」

「そうだね
そろそろ、帰らなくちゃ」

コノハナに怒られちゃう

帰ろうと歩き出した私を、レンは呼び止めた

「ねえメイ」

風が、私達の間に吹き抜ける

私は立ち止まって、身体を横に向けた
顔だけをレンに向けると、レンは構わず続ける

「メイが人間だったって話…
オレは信じるよ」

「え?」

風と共に、私の心が揺さぶられた
レンの言っていることが本当なのか、嘘なのか
少し信じられない気持ちになった
だけど、レンの真っ直ぐな生き方は、これまでそんなに長くはないけれど見てきたはず

「…うん
よし、決めた」

何を…?

聞いたりする暇なんてなく、レンは深く息を吸い込んで私に告げる

「メイ!
オレの友達に…なれ!」

「ええっ!?いきなり!?
しかも命令口調!?」

何故だろう、命令口調なのに
それで嫌だ、にはならなかった

「今メイは皆から全く信用されてない!」

「はっきり言うね…」

「でも…それはオレも同じ…
だからメイの気持ちはよく判る
誰からも信じてもらえないのって寂しいし…
逆に信じられる相手が一匹でもいれば凄く嬉しいよね
だったら信用されていないもの同士…
先ずはオレ達が友達になればいいんじゃない?
そうだよ!そしてそこから一匹ずつ仲間を増やしていけばいいんだよ!
あの星の様に!」

広い広い空を見上げ、レンは言った
その目は星空の様に輝き、夢を語ったあの時の様に楽しそうだった

「いつかは沢山の友達や仲間が出来れば!
そうだよ!それがいい!
という訳でメイ
オレと友達になれ
いや、なってくれ
…違うよね…ごめんなさい
友達になってください」

風が、吹き抜ける
私達の間を吹き抜けて、お互いの気持ちをお互いに伝える様に

レンも寂しかったんだ
皆と馴染めなくて、寂しかったんだ

私と同じで

迷うことなんてなかった

私とレンは同じだ
お互い誰にも信用されなかった

「どうかお願いします!
友達になってください!」

「顔、あげてよ」

レンはそっと、頼み込んで下げていた顔をあげた
私は笑顔で、返事を口にする

「学校の皆は、私の言ったこと、信じてくれなかった
判ってた、きっと信じてなんてくれないって
でも、レンは、信じるって言ってくれた
それだけで十分だよ
私からもお願いします
友達になってください」

「本当…?本当に…?」

「うん」

「やったぁ!ありがとう!メイ!
今日からオレ達は友達だよ!!」

本当に嬉しそうに、レンは笑った

「そうだ!
えっと確か…あった!
メイ!これあげるよ!」

「?スカーフ?」

レンがどこからか取り出したのは、不思議な模様が入った綺麗なスカーフだった
何か神秘的な物にも見える

「うん
二つあるんだ
オレ、赤ちゃんの時におじいに拾われたんだけど…
なんかその時からこのスカーフがオレの体に巻かれてあったらしいんだ
なので大切にしてたんだけど…
友達になってくれたお礼!
メイに一つあげるよ!
という訳で早速つけてみよう!」

「ええっ!?そんな大事な物…」

半ば無理矢理押し付ける様にして首に巻かれた

「お…?おお……?
メイ!似合ってるよ!
いいじゃん!いいじゃ〜ん!」

レンも、自分の首に素早く巻いて、かっこよく決めた

「お互いかなりいい感じだね!エヘヘヘ!」

「全く…」

私は、呆れた様に笑って、スカーフの位置をつるで調整した
これが、絆の証
それを感じ取ったから

「とにかくこのスカーフがオレ達の…
オレとメイの…
友情の…証だあぁぁぁーーーっ!!」

夜の闇に、レンの声が吸い込まれていく

「すっかり遅くなっちゃったね!帰ろう!メイ!
あっ!明日からまたお迎えに行くからよろしくね!」

「あはは、判った」

「また明日頑張ろうね!」






メイ達の知らないところで、物語は動き出していた

終焉に向かう、大きな大きな絶望の渦が…




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