虹の旅路

□5,コンテスト
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コンテストも終わり、PCに戻ってきた優木達

翡翠『うぅ…』

コンテストが終わってからというもの、翡翠の様子がおかしい

「大丈夫か?翡翠」

何かを必死に我慢しているような翡翠
背中の種は青緑に光っていた

この現象…何処かで…

デジャヴの様なものを感じた優木は、自身の記憶を辿る
そして思い出したのは昔アニメで見た、あの現象

「翡翠、まさか進化?」

翡翠はしかし、首を振って否定した

飛由『嘘はつくもんじゃねぇぞ
お前の様子見て進化じゃないならなんだってんだ?』


翡翠『…だって…』

苦しそうにしながらも言い訳しようとする翡翠
優木は、考えていることが判ったような気がして声を掛けた

「進化したくないんだろ?誰も進化しろなんて言わないよ
だから本当のこと言ってくれ」

翡翠『……ごめんなさい…
翡翠、進化したくない
もし優木に、進化しろなんて言われたら…翡翠嫌だったから…だから』


嘘をついた

最後のこの言葉を、翡翠は口にしなかった

「うん、判った
ありがとう本当のこと言ってくれて
でも困ったな…変わらずの石、持ってないんだよな…」

翡翠『…変わらずの石?』

「持ってれば進化の兆しを抑えられるんだけどな」

そんな時だった
ジョーイさんからの呼び出しが来たのは

「なんだろう…」

飛由『行ってこいよ
翡翠は俺が見ててやるから』


その言葉に甘えて、優木は部屋を出た

ロビーまで降りるとそこにはニビジムのリーダー、タケシがジョーイさんをナンパしていて

「タケシ…」

ここにいることに驚きつつジョーイさんに向き直る

「あ、優木君ごめんなさい呼び出しちゃって」

慣れているのかタケシを華麗にスルーして優木に話を振るジョーイさん
流石ニビシティのジョーイさんだ……

「いえ、何か用ですか?」

「優木君、実はこれを渡そうと思って呼んで貰ったんだ」

突然タケシに右肩を掴まれてそう言われる
そんなタケシが右手に持っていたのは、グレーの半透明な石だった

「これは…?」

「変わらずの石さ
君のフシギダネ、進化の兆しが見えていたみたいだったから
もしかしたら進化したくないんじゃないかと思ってな」

ちゃんとジムリーダーなんだなと感心しつつ、これで翡翠が助かると思って素直に嬉しくなった

「ありがとうございます!丁度困ってたんです
あ、でも…いいんですか?」

ふと我に帰って申し訳なさそうな顔で問うと、タケシは笑いながら言った

「いいんだ、君には本当に楽しませて貰ったからな
ほら、早くフシギダネの所へ行ってやれ」

未だに変わらずの石を優木に突き出すタケシの手からそれを受けとる

「本当にありがとうございます」

丁寧にお辞儀をしてから翡翠の元へ急いで戻った



飛由『おせぇ!』

扉を開いて聞いた第一声がこれだった

「ご、ごめん
翡翠は?」

飛由『大丈夫だ、一応な』

苦しそうにしている翡翠にタケシがくれた変わらずの石を取り出して近付ける

「翡翠、タケシが変わらずの石くれたんだ
これを持ってれば進化しなくても大丈夫だよ」

ピタッと翡翠に触れた瞬間、進化の兆しが治まって、苦しそうだった顔がキョトンとした顔に変わった

翡翠『…治った、治ったぁ!』

途端元気になった翡翠に、優木はホッと息を吐いた

「良かったな翡翠」

翡翠『うん!』

飛由『でもよー
これずっと持ってるのか?戦い辛くねぇ?』


確かに、と肯定する

「…なら…いいこと思い付いた」

全員『?』

その後、何かを借りたり貰ったりしてきた優木はその日の残りを全てそれに費やした

次の日の朝、完成したそれをそっと、まだ眠っている翡翠に充てる
サイズはピッタリ
赤いバンダナは翡翠の緑によく映える

うん、ばっちりだ

着けておいて起きるのを待つかと思い、翡翠の首に手を回す

翡翠『んぅ…?』

「あ…おはよう翡翠」

起こしちゃったか

後からそう付け加えると、翡翠は一つ大きな欠伸をしてから返事を返してくれた

翡翠『おはよう優木
…出来たの?』


昨日遅くまで作っていた為まだ完成形を見ていなかった翡翠に首まで持っていっていたバンダナを自分の前に戻して見せた

翡翠『わあ!優木裁縫上手いね!』

キラキラした笑顔で起き上がった翡翠が、早く着けてとばかりに膝に両前足を乗せてきた

「はい」

さっき寸前で出来なかったことを今度はあっという間に済ませると、優木は翡翠から変わらずの石を受け取る
それをカチッとバンダナに付けた金属の窪みに収めた

「うん、似合ってる」

翡翠『わあー、ありがとっ優木』

翡翠の首に新たに着いた赤いバンダナが、いつもよりも翡翠を可愛く魅せていた

飛由『お前ら今日は早いな』

何処かから帰ってきた様子の飛由は驚いた顔でこっちを見ていた

飛由『おお、似合うじゃねぇか翡翠』

翡翠『ありがとー、どこ行ってたの?』

飛由『散歩だ、日課なんだよ』

それだけ言って窓枠から優木の頭に乗り移ると、嘴で頭をつつき始める

飛由『さっさと朝飯作れ馬鹿』

「いてっ、痛い痛い止めろ
判ったから…!」

痛みに涙目になる優木に、飛由はクックッと含んだ笑い声を漏らした




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最終加筆修正日.2016.06.14
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