虹の旅路

□4,初めてのジム戦
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「イシツブテ岩落とし!」

『はいよ!』

フィールドにある岩を砕き、飛由の上に投げ捨てる
飛由の素早さを持ってすれば、簡単にかわせる

「かわせ!」

放物線を描く岩を、少し後ろに飛んだだけでかわし、得意気な笑みを浮かべた

「ならば、体当たりだ!」

その指示とほぼ同時に、今度はイシツブテ自身が物凄い勢いで飛由に迫る

飛由『へっ、当たるかよ』

当然のようにかわす飛由
空中で成す術無しのイシツブテ、優木はそのタイミングで攻撃に移る

「追い討ち!」

体当たりで自分より少し上に行ったイシツブテに、一瞬で間合いを詰め、技を放つ

『何っ!?』

更に、得意の連続攻撃で一気に勝負を掛ける

「乱れ突き!」

乱れ突きが余すことなく命中し、最後の決めに次の技を仕掛ける

「硬くなる!」

「鋼の翼!」

しかしそれよりもタケシが僅かに早く、硬くなるにより硬度を増したイシツブテに鋼の翼は弾かれた
イシツブテは漸く地にめり込んで空中から帰還した

「大丈夫か?イシツブテ」

『当たり前だろタケシ』

まだまだやる気十分と言った様子だ

「よし、ロックカットからの岩雪崩だ!」

ロックカットで素早さを上げてそのカットした岩を飛由に向かって投げた
さっきの岩落としと違い複数
数も結構なもので、簡単に避けられるものではない

「…これは厄介だな…」

と一言呟いてからこの危機を脱する術を模索する

「急降下!」

時間を稼ぐ意味でも地面へと急降下させる
岩の落下パターンをよく見て、一番攻撃密度の低いところを狙う

「真上の岩に鋼の翼!」

飛由『おう!』

オニスズメの小さな翼で真上に迫っていた岩を破壊する
技同士の相性が、意図も簡単に岩を粉々にし、地面すれすれを飛んでいる飛由に細かくなった岩が礫の様に襲い掛かる

「飛べ飛由!」

上昇の意味で叫ぶと直ぐに意味を理解し飛び上がった
ダメージは無し

「ほおー、あれをかわすか
やるな」

「甘いですよ
簡単には当たってやりませんから」

お互い勝負を楽しみ、不適な笑みを浮かべて言葉をかわす
ポケモン達も自分の主人を見て楽しそうな笑みを見せた

『…もっと楽しもうぜ!』

飛由『へっ、言われなくても』

イシツブテも飛由も、やる気も元気も十分

「つばめ返し!」

飛由『了解!』

再び高度を落としてから一回転、イシツブテへと向かっていく

「撃ち落とす!」

「高速移動でかわせ!」

飛由は指示通り高速移動でかわすと再び攻撃体勢に
そのままつばめ返しをヒットさせた

「鋼の翼!」

そのまま鋼の翼も命中

「イシツブテ!」

『…流石にもうやべぇな』

イシツブテはもう立っているのが限界な程に追い込まれていた

「撃ち落とす!」

タケシもそれを理解している
既に勝てる見込みはないことも判り、タケシは内心苦笑した
十分強いトレーナーだ
相性も理解しているし、状況判断は新人とは思えない程能力が高い

「鋼の翼で砕け!」

飛由『鬼かお前は』

言いながらも鋼の翼で撃ち落とすを砕いた飛由はまだまだ余裕綽々

「とどめのつつく」

一戦目の決着はそれでついた

「ありがとう飛由」

飛由『いい勝負だったぜ』

優木の肩に戻った飛由はそれだけ言って片目を閉じた

「俺が見くびっていたようだな
いい育ち方をしてる
トレーナーの君を信じてるのが見てとれるよ」

「ありがとうございます」

「だが、こいつはイシツブテよりも強いぞ?
出てこいイワーク!」

新たにボールから出てきたのは待ちわびたとばかりに大きく咆哮をあげる岩の蛇
人の四倍はありそうなその長い身体はそれでもバトルフィールドに収まった

「…流石にでかいな…」

イワークはこちらを見下ろして優木が自分の相手となるポケモンをフィールドに上げるのを待っているようだ

翡翠『優木!』

「頼むぞ翡翠!」

翡翠の呼び掛けに頷いてフィールドに上がらせる

『わいの相手はこのチビッ子か…
まあいい、楽しませてもらうぞ!』

「さっきのバトルで興奮してるみたいだなイワーク!」

相性では翡翠が有利だがこの大きさのイワークにどう戦ったものか
バトルが再開される

「イワーク、穴を掘る!」

それと同時に地中へ潜るイワーク

翡翠『ちっ』

戦闘モードの翡翠が舌打ちする
何処から出てくるか判らないため辺りに神経を集中し、地中の気配を探る
静かに、しかし確実に近付いて来ているであろうイワーク

「…何か手は…」

その時だった
僅かな音がして翡翠が振り返る

「!つるのムチ!」

それに反応して指示を出す
穴から飛び出して翡翠に襲いかかろうとしたイワークはその前につるのムチに捕まった

「何!?」

どうして判ったと言わんばかりに驚きの声をあげたタケシに返事等返さず指示を出す

「葉っぱカッター!」

翡翠『くらえ!』

つるで掴んだまま至近距離からの葉っぱカッターを食らわせる

『ぐおおお!』

効果は抜群だ!

「イワーク!岩石封じだ!」

『うぉお!負けるかぁ!』

大きな咆哮と共につるで掴まれている力に負けずに頭で岩を割ってぶつけてくる

「翡翠!つるを離せ!」

ダメージはたいしたことないが効果で少し動きが鈍る
このままでは逆に危ないと判断してつるを離させる

「逃がすなイワーク!岩落としだ!」

上から岩を降らせるイワーク
今の翡翠にはかわせそうにない

「つるで跳ね返せ!」

翡翠『っ!判った!』

一瞬の躊躇の後、頷いてつるを出す
落ちてくる岩を絡めとりイワークに投げ返す

「尻尾で砕け!そのまま体当たりだ!」

「ソーラービーム!」

イワークの体当たりが届くかどうかのギリギリの所で、チャージの終わったソーラービームが発射
ソーラービームの光が収まったとき、そこに立っていたのは翡翠だけだった

「…お疲れ翡翠」

翡翠『優木!』

いつもの翡翠に戻って優木に飛び付く
それをしっかり受け止めて頭を優しく撫でてやった

「…お疲れイワーク」

イワークをボールに戻し、優木の元へ向かうタケシは笑顔だった
期待出来る新人が出てきた、そう確信して

「優木君、見事なバトルだった
グレーバッジだ、頑張れよ
君ならきっと上まで行ける」

「ありがとうございます!」

元気よくお礼を言ってバッジを受け取る

飛由『やったな翡翠』

翡翠『うん!』

翡翠と飛由の会話を片目にグレーバッジを大事に仕舞った

ジムを出ると辺りはすっかり暗くなっていた

「さて、PCに戻ろうか」

翡翠『明日コンテストだよね?』

PCに向けて歩き出すと、翡翠が聞いてきた

「うん
朝エントリーして、昼からが本番だったはずだからそれまで練習」

翡翠『楽しみだなぁ』

「飛由はどうする?」

隣を飛んでる飛由に訊ねる

飛由『…いや、興味ねぇな
二人で出てこいよ、俺は見てる』


「分かった
明後日はニビを出てお月見山な」

今後の予定をそれだけ伝えるとPCはもう目の前にあった




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最終加筆修正日 2016.06.01
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