スケッチブック

□7,嘘つき
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朝、目を覚まして部屋を出ると、少し懐かしいこの家の本来の主の姿があった

コノハナだ

「あっ!メイ!
起きたか?
おはようだど!」

「コノハナ!帰って来てたんだ」

嬉しさを隠さずに近くまで行く

「一匹にしといてすまねえな
オラが居なくて寂しかったろ?」

「ううん」

「え?全然寂しくなかった…?
そ、それはそれでちょっと悲しい気もするが…」

「嘘だよ、寂しかった」

「も、もう…!メイ酷いだど…!」

「あはは」

軽く頭を撫でられる
子供扱いですか
でもいっか

コノハナの手は大きくて、木の匂いがした

「それで…記憶は?
オーベム達は現れたか?」

「ううん、何も」

「…そうか、思い出せないのは何だが危険な感じでないのは何よりだ
後、学校生活はどうだ?
問題なくやってるか?
なんかいじめられたりしてたらオラ嫌なんだが…」

「大丈夫だよ、問題なくやってる」

「そうか!そこだけちょっと心配したが何もなくてよかっただど!
じゃ引き続き様子を見つつここで生活するってことで
とりあえずは元気に学校行くんだど」

「はーい」

行ってきますを言って家を出る

少しは寂しさが紛れたが、家を出るとレンはやっぱり来なくて、ちょっと寂しくなった

広場に出ると、村の出口の方にポケモン達が集まって話をしていた
気になって行ってみると、アバゴーラ、ヒポポタス、ハスブレロがいた

「どうじゃ?どんな感じじゃった?」

「ちょっと見てきたがやべえ
かなり気が立っているな、あれは」

「デモソレデオイシイハチミツがトレルナライイヨネ」

私と一緒で、気になって聞いていたらしいスボミーがヒポポタスの言葉の詳しい話を聞きたくなったみたいで、会話に加わる

「美味しいハチミツ?」

「ああ、そうだ
カンロ草原で始ま……って、ん?お前…」

「ロゼリアんとこのスボミーじゃな
ハチミツ作りの時期が来たのじゃよ
スピアーやミツハニーといったポケモンが一斉にハチミツを作る」

「ソコデトレタハチミツハモウ最高!
食べタラ思ワズ砂ブシューダヨ!!」

砂ブシューはちょっと判らないかな

「栄養もあるしの
ただ、ハチミツ作りの間は皆気が立っているからとても危険なんじゃ
特にお主の様な幼子はの
なので今の時期カンロ草原には決して行ってはならぬぞ」

「へえ…」

ポケモンが作ったハチミツかあ、食べてみたいな

校長先生に校門で迎えられて、皆が元気に挨拶する

今日も遅刻なし

授業の合間のことだった

「なあ!メイ!
そういえばお前どこから来たんだよ?
まだ聞いてなかったよな
誰か知ってるか?メイがどこから来たのか」

どこから…か…

「オレも知らないし」

「そういえばワタシも知らない…」

「そういえばそうだよね!
本当聞いてなかったね!」

「判った判った
お前は始まると長いから黙ってろ」

レンの言葉を遮ってヤンチャムが話を戻す
私に直接聞いてくる

「本当どこから来たんだ?
あっ!も、もしかしてあれか!?
ワイワイタウンから来たのか!?」

「ええ〜っ!?ワイワイタウン〜!?」

「じゃ、メイってもしかして都会っ子ってこと〜!?」

「でもコノハナさんは訛っているしワタシは違うと思う」

それで私も訛ってたら確実に違うだろうけど残念ながら訛ってないんだよなぁ

っていうか勝手に話を捏造して盛り上がらないで…!ややこしくなるから…!

ていうか本当にどうしよう
本当のこと言ったらかなり驚くと思うけど…
でも…嘘をつく訳にも行かないし…

信じてくれるかな…

「…で、本当のところどうなんだ?
どっから来たんだよ?」

隠しても仕方ないし…
ここは正直に言ってみよう

「…実は…人間の世界から来た人間なんだ、私」

「「「えええええーーーーーっ!!?」」」

皆の驚きの声が響いた

「メイは…」

「人間の世界から来た…人間だってぇーーーーーっ!!?」

「でも今のメイの姿はどこからどう見てもポケモンよ?」

「私も判らないんだ、気が付いたらこの姿で、人間だったってことと名前しか覚えてなくて…」

「ええっ!?」

皆の大きな声に、私は信じてもらえるか自信がなくて俯いた
私ですら信じられない事態が起こって、今ここにいる
皆が驚くのは判っていた

「ははっ…はははははははははっ!!
メイ!お前嘘つきだな!」

「え…?」

「お前が人間だなんて話、一体誰が信じるんだよ?
大体人間何て見たこともないしお伽噺でしか出てこないじゃないか」

「確かに信じろって言われても難しいかな…」

「…そうだよね
いいんだ、信じてほしい訳じゃないから」

世の中は、そんなものだよね

「ワタシも信じられないけどよく判らない
そんな嘘をつくことになんの意味があるの?」

「嘘つくにしてももうちょい上手くやってくれよ!
はははははーーーーーっ!!」

そうやって、ヤンチャムに笑い飛ばされて終わった
さっき言ってたワイヤイタウン?ワイワイタウン?どっちでもいいや、そこから来たとか言えば良かったの?
どうせ信じてもらえないからって簡単につける嘘をついてでも皆と仲良くしておいた方が良かったの?
私には判らないよ

「コラ!何騒いでるんだ!?」

カモネギ先生が来て、ヤンチャムが告げ口する

「せんせー!メイのやつ嘘をつくんです!」

「嘘を…?」

「はい!まるであり得ない様な話をするんです!」

「あり得ない様な話ということは…
もしかしたらあり得るかもしれない…
ということですよね♪」

「校長先生…!」

ヒヤッキーが教卓までやって来て、嘘つきだと罵られた私を見ながら言った

「メイが言ったことは嘘かもしれない…
でも本当にそうでしょうか…?
もしかすると…嘘じゃないのかもしれませんよ?
あり得ないことが本当にあった…
そんなことが稀にあるから世の中面白いんじゃないでしょうか♪
…って、メイがどんな話をしたのかワタシ知りませんが
ハハハハ!
とにかく皆さんにはいろいろなところから物事を見て…楽しく、学んでほしいと思っています
ちょっと角度を変えるだけで違ったものが見えるかもしれませんよ♪
それでは授業を始めましょう
カモネギ先生、後はよろしくお願いします」

「は、はい!」

ヒヤッキーのお陰で静かになった教室を、カモネギ先生が引き継いで、漸く授業が始まった



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