烏野短編

□温度
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帰宅途中、新しいお店ができていた。
のぞきこむとアクセサリーがいっぱいあった。雑貨屋さんかな?

ちょっと寄っていこうかな…

中に入ると木の匂いが広がって
暖かい温度があたしを包む。
周りには可愛く綺麗なアクセサリーが並んでいた。
そこに一つブルーのブレスレットが気になり手に取る。

これ可愛い…
綺麗だし、好きな青。
ブレスレットの中心には水色で雫の形をした物が付いている。
買っちゃお!!

その時ふと影山の顔が浮かんだ。

そだ!!影山に何か買っていこう。
なにがいーかなぁ、キーホルダーなんてどーかな。スマホに付けやすいだろうし。いや、でも影山ってスマホにキーホルダー付けなさそう……

〔キーホルダー?そんなの邪魔だろ。〕

うっ…泣きそ……
何にしよう。おそろのブレスレット!
うわ、おそろとか重くない!?

〔お揃い?何言ってんだお前。絶対付けねぇから。つか、お揃いとか重くねぇか?俺重い女無理、別れよう〕

つ…辛い………
待って、あたし相当ヤバいかも
考えすぎだよ!!だって今日

〔好きだからに決まってんだろ〕

って、愛の確認したんだから!!
嗚呼、あたしってなんて幸せ者……
いやいやいや、そんなこと言ってる場合じゃない…
ほかに何があるかなぁ……あ!!!!
マフラー!!マフラーいいじゃん!!この時期寒いし!!冬だもん!

…………って、マフラーの方が重いじゃん……
いや、手作りじゃないだけマシだよね…?
うん、マシ。マシなはず…!!

あたしはブルーのブレスレットと紺色のマフラーを取ってレジに立った。

お金大丈夫だよね。

「13298円になりまーす」

『はーい』

…………ん!?
値段見てなかった!!
待って、ブレスレット値段いくら!?

『あの、ちょっとすみません……』

「はい?」

『本当に申し訳ないんですけど、
値段見るの忘れて……
ブレスレットの値段っていくらですか…』

あたしは恐る恐る店員さんに尋ねると

「11000円丁度ですね」

高っ!!!怖っ!!!
まぁ、確かにアレだけ綺麗だと高いのも納得できる。

『あ、あの、すみません………』

「やめますか?」

『…は、はぃ……本当、すみません…』

「いえいえ、ここにあるもの結構質が良い物が揃ってなかなかのお値段なので買わないお客様もいらっしゃいます、ですからお気になさらないで下さい」

店員さんは優しくにっこり笑ってみせた。

『い、いえっ!!あたしこそ、値段を見てなかったのが悪くて!!………あの、マフラーだけ買います!』

「はい、ありがとうございます。2298円になります。」

値段の高さ故の暖かさがこのマフラーにはあるんだろうなぁ
そんなことを思いながら渋々財布を開いた。
中身を見てみると3000円入っていた。

まった、明日デート行けなくない?
ここまで来てこのオチはないっ!!
何とかお母さんに縋るか……。

「3000円お預かりいたしまーす。」



何とか買い物を終えて外を出ると冷たい風が頬を伝う。

さっぶ……
影山、マフラーしてたっけ??
風邪ひかないで欲しいなぁ。

もう来た時より日が落ちて辺りは街灯で照らされていた。気温も一段と下がり、風は冷たくスカートの中にまで冷えた風が入ってきて身震いがした。

『早く帰ろ……』

あたしは早足で家へと急いだ。
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