虚無界短編

□ハッピーバレンタイン
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彼を愛しく思えたのは
何故だろう


愛してはいけない彼を…


でも会ったとき一目惚れしてしまった
恋の仕方は未知数ある。仕方ない、うん


彼は変わった人で
顔筋を使わないのか
表情を変えない…というか
変えたところを見たことがない

でもそこが彼のかわいいところであって。



ところで
明日はバレンタイン。
だから告白のチャンスだ。

そう、人生初の告白を
悪魔相手にするのだ。

だがしかし、バレンタインといえば
手作りチョコ。私は料理が大の苦手。
女としてありえない。恥だ。
燐に頼もうと思ったけど
そこは女のプライドが許さない。
女として、好きな人に手作りチョコ
を作りたくない訳がない。


と言うことで!



私は今、前掛けを着用し、両手に包丁と鍋を持ちキッチンに立っている。


前にはまな板の上に巨大板チョコ。
周りにはイチゴやキュウイ、チョコペンなど。
ラッピングの箱や紙が大惨事な状態で散らばっていた。



『よしっ!』

「何してるんですか」

『うおぉっっ!!!!!??』



さて、始めようと気合いをいれたとき
突然後ろから聞き覚えのある
あの大好きな声が聞こえた。
体を跳ね上がらせ持っていたものは
ガシャンッと床を叩きつけられ
私は素早く振り返った。




『な、ななななっ!!』

「そんなに驚くことですか」

『お、驚くもなにもっ…!!?』



声の主はやっぱり大好きなあの人で、
目の前いるのはあの大好きな




『アマイモンっ!?』

「はい」



無表情で言葉を返してくる
私は慌ててアマイモンの背中を押して
部屋へ連れていく。



『どーしてきたの!?』




ほんと、よりにもよって今日…



「通りかかったんで
あ、それと暇だったんで
勝手に入りました」


アマイモンが指差す方向は少し大きめな窓
は扉が開いてかすかな風で揺れていた。
一つため息をついてアマイモンに人差し指を軽く突きつけた



『あのね
なんとでもない表情で言ってるけど、
これは立派な不法侵入って言う犯罪なんだよ?』

「ハイ」

『いや、ハイじゃなくてね…』

「ところで何してたんですか」

『え"…えっと、それはだね……』




いや、ここで言ったら計画はパーだ。
ん?いや、計画たててないけど…

『とにかく!今は相手出来ないから
明日にしてくれない?』



冷や汗をたらしながら窓へ向かって彼を押して無理やり歩かせる。



「チョコ、作ってるんですか」

『え、ま…まぁ』



アマイモンの足がピタリと止まったと同時にこちらへ振り替える。
え、何?



「ボクにもチョコレート下さい!」



え、今!?



『む、無理!!』

「ムッ
どーしてですか?」

『どーしてもー!だから明日ね!』


また押してアマイモンを帰らせた。

あー、もぅ!もっと一緒にいたかったー!
アマイモン追い出してごめんっ
けどこれも恋の試練!
愛のこもったチョコを作るためだよっ!


私はキッチンへ戻りバレンタインチョコを必死に作り始めた。
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