ゴースト
□第四章
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あれから毎日、日記の中に「あの人」が出てくるようになった。
そして……
『4月6日。今日から二年生がスタートした。
すっごく嬉しいことがあった。
あの人と同じクラスになった!
ようやく名前が分かった。
夏目潤くん。
ただの通りすぎる人から、クラスメートに発展した!』
夏目は言葉を失った。
何かの間違いではないかと疑ったが、その後を読んでみても明らかに自分であることが分かった。
……信じられない。
自分なんかを、美園はずっと想っていたというのか?
一体、自分は何に落ち込んでいたというんだ。
『5月17日。席替えをしたら、私のななめ前が夏目くんになった。
クラスが一緒になってから恥ずかしくて全然見れなかったけど、この位置なら怪しまれずに夏目くんを見れる。
すごいラッキー(笑)』
読んでいけば読んでいくほど、美園の気持ちが本物であることが伝わる。
いつの間にか、涙が溢れていた。
自分がずっと想いを寄せていた相手が、自分のことをこんなにも想っていたなんて、
今までそんなこと一度だって考えたことがなかった。
驚きと信じられない気持ちが第一だが、
めまいがするほど嬉しかった。
『10月5日。どうしても夏目くんに話しかけられない。
もともと私はあまり男の子と話す方ではないから仕方ないのかな……。』
『12月21日。夏目くんに彼女はいないみたい。
友達と話してるのが聞こえてきちゃった。
ちょっと安心。』
『2月14日。夏目くんにチョコ渡そうかと思ったけど、諦めた。
まだ来年も同じクラスにいるのに気まずくなっちゃうといけないし、義理チョコにしては無理があるもんね(笑)
それに夏目くん、好きな人がいる気がする……。
気がするだけ。』
『4月6日。今日から三年生だ。
二年生から三年生はクラス替えがなくて本当に良かった。
奈々たちと一緒なのももちろんだけど、夏目くんとも一緒だから。
でも、あと一年で私たちも卒業しちゃうんだなあ。
卒業までには、告白できたらいいなあ。』
恥ずかしくて、くすぐったかった。
でも嬉しくて、涙が止まらない。
心臓もずっとドキドキしている。
体中が沸騰するように熱い。
『6月17日。席替えをして窓側の席をゲットした。
しかも、夏目くんの隣!
どうしよう、授業集中できるかな(笑)』
『7月9日。ひまさえあれば屋上に行くようになった。
夏は夕日がすっごくキレイだから、この時期は一番頻繁に行ってるって言ってもおかしくないと思う。
そこに行くと頭の中が空っぽになるんだけど、やっぱり最初に浮かぶのは夏目くんの顔なんだよね。』
この日の日記が最後で終わっている。
そう、これの次の日に美園は死んだのだ。
夏目はとてつもなく切なくなった。
今まで感じたことのない感情が胸の奥で渦巻いている。
そしてその日、夢の中に美園が出てきた。
夢の中の美園は、光に包まれながら微笑んでいた。
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