ゴースト

□エピローグ
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あの日、私はいつものように夕日を見に屋上へ来ていた。


やっぱり頭に浮かぶのは夏目くんのこと。


ふと校門に目を向けると、友達数人と帰っている夏目くんを発見した。


「あ、夏目くん」


思わず声に出てしまった。

慌てて口を押さえる。


すると、夏目くんがこちらへ振り返った。


「えっ、やば」


私は逃げるように校庭側のフェンスまで駆けた。

夏目くんには気づかれなかったようで安心し、そのままフェンスにもたれかかった。


その瞬間……



ギィ…ガシャアーン



一瞬、何が起こったのか分からなかった。

徐々に徐々に状況を理解していく。


どうやら、フェンスの継ぎ目が相当錆び付いていたらしく、外れてしまったようだ。


しかし、そう気づいた頃にはとっくに私の体は宙へと投げ出されていた。


しがみつく物も何もない。



落下している途中は苦しさに紛れて、今までの記憶が走馬灯のごとく頭を駆け巡った。



そして、地面に叩きつけられて、



私は死んだ。



遠くの方で奈々が私を呼ぶのが聞こえた。

駆けつけてきて私の体をゆすっていたが、

その時にはすでに私の魂はそこにはなかった。



そして同時に光の道が私を導いた。


私は、それを拒んだ。



今となってはそれで良かったんだと思える。





夏目くん、君に気持ちを伝えることができたのだから。


それが、私がここに居た理由。



大切な、とても大切なこと。





END

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