ゴースト

□第五章
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翌日、学校に着くや否や夏目は屋上に向かった。

美園の気持ちを知った今、いてもたってもいられなかったのだ。


駆け足で階段を上り、錆びた鉄の扉を勢いよく開いた。


するとそこにいたのは美園ではなく、千鳥だった。

夏目は目を見開くが、千鳥は動じてない様子だった。



「やっぱり……」



千鳥は意味深な言葉を発し、その場で泣き崩れた。


突然の出来事に夏目は戸惑いを隠せないでいる。


「ここに、凛が……凛が居たんだよね?」


千鳥は泣きながらも言葉を振り絞っていた。


「凛の存在を、すごく感じるの……。ここに居たんだね、凛……。」

「俺……」

「何も言わないで!全部、分かってるから……」


全部?

なんのことを言っているのかさっぱり分からなかった。





「私っ、夏目くんのこと好きだったの!クラス一緒になった時からずっと!」





あまりに突然のことすぎて、夏目は瞬時に理解することが出来なかった。


「でも、凛も、夏目くんも、お互い両想いなの、私気づいてた。」


夏目は何も言葉が出ない。

千鳥も、自分のことを……。


「昔から、人の感情に敏感だった。多分、霊感とも関係してるんだと思う。

二人がお互いに好きだってすぐに分かった。

でも、凛に負けないぐらい私も夏目くんのことが好きだったの!」


千鳥の必死な思いが伝わってきた。

でも夏目にはどうすることもできない。

千鳥の涙を拭いてあげることすらも、千鳥を苦しめるだけだと分かっていたからだ。


それに、自分の気持ちを今さら変えることなどできなかったのだ。


「夏目くん何も言わないでも分かるよ、夏目くんの気持ち。

これはね、凛に向かって言ってるの。」


そう言って千鳥は空を見上げた。

驚くほど晴れ渡った青空が、自分たちを笑ってるような気がした。




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