ゴースト
□第三章
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家に帰宅してからも、夏目はぼーっとしたままだった。
さっきまでのことを振り返り、妙に複雑な気分になる。
やはり、美園のことが好きだ。
できることならもう一度会いたいと何度も思っていた。
しかし、まさか化けて出るとは思わなかった。
美園の首に滴っていた血液を思い出すとゾクッとする。
夏目の中では、「美園」に会ったということより「幽霊」に会ったという衝撃の方が強かった。
しかし、美園の言葉を思い出すと不可解な点がいくつかある。
「伝えたいこと」……。
誰に、何を?
それは天国への道を拒んでまで伝えなきゃならないことなのか。
そして、何故それを自分に教えてくれたのか。
生前一度も話したことのない自分に、何故あそこまで話してくれたのか。
ちゃぷんと音を立て、湯船につかる。
立ち込める湯気を眺めながら、ずっとそのことについて考えていた。
すると、ヒヤッと何かが背中を通るような感覚がした。
すぐさま扉に目をやるが、そこには誰もいない。
ひどい動機がする。
ベッドに入ってからも、心臓の音は鳴り止まない。
その夜、夏目は一睡もできなかった。
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