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□空に浮かぶ風船のよう
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「おはよう、大ちゃん」
約束したカフェに行くと、すでに大ちゃんはいた。
...良かった、ドタキャンされなくて。
「今日はどこ行きたい?」
それぞれ飲み物を頼み、そう尋ねた。
「...伊野ちゃんが行きたい所で良いよ」
大ちゃんはいつもよりかなり静かだ。会話がなくなってしまった。
俺はなるべく急いで飲み物を飲み干し、大ちゃんの腕を掴んだ。
「じゃあ、行こう」
俺らはお金を払い、カフェを出た。
何か話さないといけないと思っても、なかなか会話が弾まない。
買い物を始めても会話は全然なかった。
「大ちゃん、これ俺に似合う?」
シャツを手に取り、大ちゃんに見せた。
「...伊野ちゃんにはこっちの方が似合うんじゃない?」
そういって、大ちゃんが手渡してくれたのはさっきのとは形の違う、俺好みのシャツだった。
「こっちの方がいいね」
あててみても、やはりこっちがしっくりくる。
「ありがとう、大ちゃん」
そうお礼をいうと、大ちゃんは別にと言って俯いた。