Book
□水深500m
1ページ/1ページ
side Arioka
「おはよー」
楽屋のドアを開けながらそういった。…が、返事が一つも返ってこない。
「…真っ暗だし」
部屋には電気がついていなくて、物音一つしない。
早く来すぎたかな。
いつも遅刻ぎりぎりだけど、今日は少し早めに来た。
…別に、今日が誕生日だからってわけじゃないけど。
皆に早く祝ってもらいたいからなんていう理由ではないけど!
でも、ちょっとがっかりしてしまった。
俺は仕方なく、電気のスイッチを探した。
確か、この部屋のスイッチは奥の方にあったような。
そう思って、暗闇を歩いていると何か柔らかいものを踏んだ。
「イテッ!!」
誰かの声が聞こえた。俺が電気をつけると、そこにはいのちゃんがいた。
「……なにやってんの?いのちゃん」
ドアからは死角になる、ソファの後ろで右手を押さえながらしゃがんでいるいのちゃん。
「もー大ちゃんのせいで俺の作戦が台無しだよ」
作戦?俺が首を傾げると、いのちゃんは説明し始めた。
「楽屋に来たら誰もいなくてさ、じゃあ、次に来た人を驚かそうと思ってさ……っていうのは嘘で…」
いのちゃんはすぐに嘘を吐くから、嘘か本当かを見抜くのが大変だ。