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□二人の記念日
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大切な記念日を覚えていなくてごめん。
side Yamada
「…大貴、聞いてる?」
ぼーっとしている恋人にそう尋ねかけた。
「あ、ごめん。聞いてなかった」
ちょっと考え事しててと笑って言う大貴。
最近、何だか様子がおかしい。
「もう一度話して?」
大貴はちゃんと俺の顔を見ていった。
「やっぱいいや」
「……涼介、怒ってる?」
大貴は俺の顔色を窺うように、おそるおそる聞いてきた。
「いや、別に怒ってないよ」
俺は立ち上がった。歩き出すと、大貴も追いかけてきた。
「ごめん。…ね、今日さ、この後空いてる?」
俺の腕を掴んで、大貴は顔を覗き込んできた。
「今日用事あるから」
ちょっとイライラしてしまって、少し強い口調で言ってしまった。
「…そっか。じゃあ、明日ね」
大貴は一瞬、悲しそうな顔をした。だけど、すぐに微笑んで行ってしまった。
…傷つけてしまったかもしれない。
俺は突き放すように言ってしまったのを後悔した。