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□君は気づいていた
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あの時から、君は気づいていたんだ。
side Yamada
「…なあ、山田。もし別れたくなったら、ちゃんと言えよ?」
行為の後、俺の腕の中で大ちゃんは小さく呟いた。
「何でそんなこと言うんだよ」
俺は大ちゃんの前髪を上げ、額にそっとキスをした。
「俺は大ちゃんのことだけが好きだよ」
そういうと、大ちゃんは切なそうに微笑んだ。
「ありがとう。…やっぱ、さっきの言葉は忘れて?」
俺はそんな大ちゃんを不思議に思いながらも、強く抱きしめた。
いつまでも一緒にいたい。…そう思っていた。
「…大ちゃん、ごめん」
俺は大ちゃんを呼び出し、別れを告げた。
「仕方ないよ。俺よりも好きな人が出来たんだから」
大ちゃんは少し寂しそうに微笑んだ。
その表情を見て、俺は1年前のことを思い出した。
…大ちゃんは気づいていた?
俺の気持ちが他の人に移ってしまうということに。