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□叶わない恋
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…いつまで、この関係は続くのだろうか。
side Yamada
「…大貴」
俺が呼びかけると、彼は振り向いた。
行為の時だけ用いる呼び方。
「何?」
少し気怠そうな甘い声で返事を返してきた。
俺は大貴を抱き寄せ、その唇に口づけた。
こうやって自由にキスが出来るのも今、この時だけ。
部屋を出たら、いつものメンバー、親友という関係に戻る。
…そんな身体だけの関係。
俺は元々大貴のことが好きだった。だけど、大貴には他に好きな人がいて。
俺はその人の代わりでも良いと言った。
大貴はその相手への叶わない恋に疲れていたみたいで、一度だけと言って俺と関係を持った。
それから、ずるずると続いている。
「涼介」
今度は俺が呼びかけられ、何?と大貴の顔を見ると短いキスをしてきた。
「…大貴からなんて珍しいね」
そういうと、少し恥ずかしそうに俯いた。
そんな顔を見せられたら期待してしまう。
実際、大貴の気持ちは俺に傾いてきていると思っている。
いずれ、もう一度告白するつもりだ。
だけど、今はこのままでも良いような気がする。
もう少しだけ、この曖昧な関係でいたいかも…なんて。
End