*Short DreamT*

□【跡部】ROSE THE ONE
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 お風呂に入って髪を乾かしたら、あとは眠るだけだ。二人でベッドに入ったら、まずはギュッと抱きしめて……。跡部はそんなことを妄想しながら、椅子に腰掛けて、この部屋の主にして自分の彼女の郁の支度が終わるのを、さっきからずっと待っているのだが。

 しかし郁は、そんな跡部の目論見はつゆ知らず、ベッドの上で楽しそうに、お風呂上がりの身体にボディーローションを伸ばしている。以前跡部にもらった、甘いバラの香りのする海外ブランドのものだ。

 機嫌良く郁はローションを手に取り、左の足先に伸ばす。つま先からふくらはぎ、そして太ももへと、脚を伸ばしながら塗っていく。そんな彼女を、跡部は手持ちぶさたに眺める。ベビードールのようなデザインの、丈の短いキャミワンピから伸びる脚は、膝から下は細いのに、太ももは意外と肉感的で、腰まわりのラインは丸みを帯びて女性らしい。

 初めて身体を重ねた今日の昼間のことを、思わず跡部は回想する。その時は、がらにもなく余裕がなくて気がつかなかった。

(……まぁ、そんなこともたまにはあるよな)

 心の中でそうつぶやいて、跡部は郁から視線を外す。しかしそのとき、ふわりとしたバラの香りが跡部のもとに届いた。

「…………」

 一度は外した視線を、跡部は戻す。郁は相変わらず、楽しそうにローションを塗っている。今は左腕に伸ばしているところだ。まだ終わっていないようだったけど、ふにふにと柔らかそうな二の腕につい誘惑されてしまって、跡部は彼女にちょっかいを出した。ベッドの上に乗って後ろから抱きつく。

「ひゃっ! どうしたんですか、先輩っ」

 その問いかけには答えずに、跡部は郁のワンピースの細い肩紐を落として、強引に脱がそうとする。

「ちょっ! ダメですって!」 

 当然のように、郁は慌てた様子で抵抗するが、しかし、どう見てもそれは本気ではないことは明らかで、気をよくした跡部はそのまま、彼女を押し倒した。

「きゃっ!」

 可愛らしい悲鳴が上がると同時にベッドがきしみ、ベッドサイドに置かれたローションのボトルが揺れる。郁におおいかぶさった跡部は、彼女の首筋に顔を埋めた。自分の見立て通りの、いい匂いだ。

 フレグランスなら香りの源はせいぜい数カ所だけど、ローションを全身に塗っているから、比喩でなく本当に体中から甘い香りが匂い立っている。

 可憐な花の香りの奥に潜むムスクを嗅ぎ取って、跡部は海外のとある有名デザイナーの名言を思い出していた。『女はキスされたい場所の全てに香りを纏っておくべきよ』



「も〜! 景吾先輩っ!」 

 不意に下から不満げな声が聞こえて、跡部は我に返る。

「どいてくださいよぉ、まだ終わってないのに……」

 しかし、相も変わらず鈍感な郁の言葉に、跡部の眉はぴくりと跳ねた。

「……あぁん?」

 思わず不機嫌な声が出る。その声に、郁はびくりと肩をすくませる。

「……なんでそんな嫌そうなんですか」

「――嫌だからに決まってんだろ?」

 そう答えると同時に、跡部は郁のワンピースの裾に手をかけた。そのままひと息にめくり上げる。

「……っ!」

 郁は驚きに息を呑む。何もつけていない彼女のふたつの膨らみと、サイドがリボンで結ばれたひらひらとした下着が、跡部の眼前に晒される。

「せ、せんぱい……っ」

 恋人のか細い抗議は無視をして、跡部は彼女の胸元に唇を這わせた。白く滑らかな、吸い付くような肌だ。跡部はその質感を味わいながら、未だに恥じらう彼女の身体を煽っていく。鎖骨を舐め上げて、デコルテにキスをして、柔らかな胸の先端を口に含む。そんな跡部の行為に、郁は緊張に息をつめて、固く瞳を閉じた。

 けれど跡部は、行為をやめようとはしない。口内の小さな突端を舌で可愛がりながら、もう片方の膨らみを片手で包むように持ち上げて、指先で先端を摘むように刺激する。

「……っ」

 やがて、郁の口から甘やかな吐息が漏れはじめた。最初は強張っていた身体からも次第に力が抜けはじめる。跡部の口角がわずかに上がる。もっと良くしてやりたくて、跡部は彼女の下腹部に指を伸ばした。

「……!」

 薄いシフォンの生地越しに触れられて、郁はびくりと身体を震わせる。跡部に贈られたその下着は、デザインはとてもかわいいけれど、とても無防備で、指先の感触をほとんどそのまま伝えてくる。

 割れ目を優しくなぞられて、郁の身体にじわじわとした波のような快感が広がっていく。身体の奥が熱くなって、その熱が全身に広がって、郁の意識は濁りはじめる。

「……あっ ……ん」

 心地よさに切なげな喘ぎを漏らすと、郁のその場所をなぞる跡部の指にわずかに力が込められた。快感がさらに高まって、郁は瞳を潤ませる。

「……きもち……いい……」

 無意識に、そんな言葉を口にしていた。跡部は満足そうな笑みを浮かべると、ご褒美とばかりに、彼女の下肢の突起をつま先で掠めた。

「あッ……」

 布越しの刺激に、郁は小さな声をあげる。そのはしたない声に、彼女は自分でも驚いてしまう。恥ずかしさと同時に、形容しがたい心地よさが押し寄せてきて、郁は再び瞳を閉じた。

「……っ」

 最初は、こうやって布越しに触れられるのが一番好きだ。強すぎず弱すぎない刺激がちょうどよくて、もっと欲しくなってしまう。けれど、そんないやらしいことを口にできるはずもなく、郁は必死に唇を噛んで、声と心地よさとを我慢する。

 しかし、そんな彼女を跡部は容赦なく追い詰めていく。すっかり抵抗できなくなった白い身体を開かせて、彼女の柔らかな場所をさらに攻める。先端を執拗に刺激しながら、潤んだ割れ目を擦り上げて、彼女の身体を興奮させていく。

 ついにこらえられなくなった郁は、ようやく声を漏らしはじめた。さらなる快楽を求めて、自分から跡部の愛撫をねだる。

 彼女の媚態を楽しみながら、跡部は郁の求めに応じる。そして、そこが布越しでもわかるくらいに熱く潤ったのを確かめてから、跡部は部屋の電気を落とした。ワンピースを脱がせて、下着の両サイドのリボンをほどいて、彼女を一糸纏わぬ姿にする。そして、露わになった郁の濡れた入り口に、優しく指を差し入れた。

「……っ ……あっ、ん」

 大きく脚を開いたまま、郁は心地よさに声を漏らして涙をこぼす。粘性の水音とともに、跡部の指先が、彼女の中に呑みこまれていく。奥までしっかりと埋めてから、彼女の様子を確認して、跡部は指先を動かしはじめた。



「……ッ、は ……あん」

 常夜灯の淡いオレンジの光の中で、安心しきって乱れる郁の可愛らしい姿に、跡部はひとり見惚れていた。彼女の身体がさらに高まっていくように、跡部は郁の内側を丹念に可愛がる。入念に中を探りながら、ときおり内壁を擦り上げて、彼女自身を追い上げていく。

 跡部に指の動きにあわせて、郁は恍惚に浸った吐息を漏らす。彼女がうっとりと身体をよじるたびに、甘やかなバラとムスクの香りがたちのぼる。そのかぐわしい香りにどうしようもなく誘惑されて。我慢しきれなくなった跡部は、郁の身体から指を抜いた。荒々しい手つきでシャツを脱ぎ捨て、裸の彼女に覆い被さった。

 芳香を楽しみながら、真っ白な身体を貪るように味わっていく。首筋からデコルテへ唇を滑らせて、ときおり赤いアザを残しながら、どんどん下に降りていく。膨らみの頂も味わって、腹部にも痕をつけて、ついに跡部は、先ほど指先で執拗に愛した、彼女のその場所にたどりついた。

「や……っ、そんなとこ……」

 恥じらいにやめさせようとしてくる郁に構わず、跡部はその場所に唇を寄せる。

「……ッ!」

 敏感な突起に舌を伸ばされて、彼女の身体が大きく跳ねた。感じたことのないしびれるような快感が、郁の背筋を駆け抜ける。そこに舌で触れられるだけで、郁の身体はビクビクと跳ねて、本人の意志とは無関係に、甘やかな悲鳴を上げてしまう。

 しかし跡部は、郁の下半身を押さえつけながら、容赦なくその場所を可愛がる。包皮を除いて剥き出しにして、舌先で間断なく刺激する。

「あッ…… や……あッ」

 電流を流されているような感覚に抗えず、郁は切なげな喘ぎを漏らしながら、うっとりと全身をくねらせた。羞恥と快楽に、彼女の瞳が潤みはじめる。こんなところまで間近で見られて、そして愛されてしまうなんて。あまりの恥ずかしさに、郁は涙をこぼして瞳を伏せる。

 そうこうしているうちに、熱く濡れた内側に跡部の指が入ってきた。先端を舌先で愛されながら、内壁の感じるところばかりを擦られる。か細い喘ぎを漏らしながら、あまりの気持ちよさに耐えきれず、郁は無意識に、跡部から逃げ出そうとしてしまう。

 けれど、その仕草に彼女の限界の近さを感じ取った跡部は、郁が逃げられないように彼女の腰を押さえ込んだ。そして躊躇いなく、内側の一番弱いところを刺激する。

「……やっ、そこ、だめ……っ」

 全身を小刻みに震えさせながら、郁は跡部を止めようとするが、それをおねだりと受け取った跡部は、その場所をさらに責めたてた。同時に下肢の突起を舐め上げる。ひときわ甘い悲鳴を上げて、泣きながら、郁はあっさりと達してしまった。
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