*Short DreamT*

□【忍足】かわいいキミを泣かせたい
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 けれど最初は慣らすように緩やかに、忍足は抜き差しを開始する。苦しそうにしながらも、郁は忍足の首筋にしがみつき、彼の突き上げを受け止める。

「あッ…… あ……」

 軽く顎を反らして、高い声を漏らす。大きな質量での圧迫はたしかにつらくもあるけれど、痺れるくらい気持ちいい。忍足のもので突かれるたびに、郁の身体を感じたことのない衝撃が貫く。

 無防備な身体で忍足を受け入れるたびに、じんわりとした快感に襲われて、全身から力が抜けていく。自分自身の隘路が満たされる圧迫感と粘膜が擦れ合う感覚に、郁は思わずつぶやいていた。

「きも……ち、い…………」

 入れられるときも、引き抜かれるときも、自分自身の内側の壁が勢いよく擦り上げられて、ぞくぞくする。あまりの良さに無意識にもっと欲しがりながら、郁は自分の身体の深い場所をさらに体液で潤ませた。その潤いを繋がっている部分で感じ取り、忍足はさらに抜き差しを速めてゆく。

「ッあ、せんぱ……いッ」

 呼ぶ声は、吐息とともに甘く溶ける。耳元で熱っぽいため息をつかれて、忍足の情欲はさらに高まる。脈動とともに、彼女の中の自分がさらに大きさと固さを増す。

「……っ あッ、ん」

 か細い声を上げて、郁は目を見開いて涙をこぼした。彼女の両腕が忍足から離れ、ベッドの上にとさりと落ちる。顔を横にそむけて口元に片手をやりながら、郁は忍足に全てをゆだねて瞳を閉じた。



 出し入れをされるたびに、彼女の脚の間からは透明な体液が溢れ出し、シーツに小さな染みをつくる。身体に薄い汗をにじませながら、郁は頬を染めて、薄く開いた口から絶え間なく反射的な喘ぎを漏らす。

 慣らしたとはいえ、狭い中に強引に押し入ったことは変わらない。薄い膜越しとはいえ、熱くとろけるような内壁の締めつけはきつい。忍足はそのきつさに耐えながらも、心地よさそうな郁を責めた。

 しばらく揺れ動いてから、忍足はベッドに横たわる郁を抱え起こした。繋がりあったまま、自分の上に座らせて抱きしめる。

 彼女もまた、忍足の首の後ろに腕を回す。強く抱きしめあって、どちらからともなくキスをした。互いの口内を味わうように舌を絡めて、名残惜しそうに唇を離す。忍足の首筋に顔を埋め、郁はまた熱にうかされたような息をついた。

 彼女をしっかりと抱きしめたまま、忍足は片方の手で郁の腰にそっと触れた。ヒップにかけての曲線を楽しむように撫でながら、彼女の耳元で何ごとかを囁きかける。

 羞恥に瞳を潤ませて郁は忍足を見つめて小さく頷く。その頷きを確認して、小さな耳朶にキスをしてから、忍足は自分の上体をベッドの上にゆっくりと倒した。ちょうど、仰向けに寝そべるような形だ。

 戸惑いながらも、郁は忍足に跨がって腰を揺らし始める。

「ッ…… あ、ん」

 その腰つきはぎこちないが、たちあがった忍足のものがさらに深く入り込み、身体の奥に達する感覚に、郁は心地よさそうな喘ぎを漏らす。

「はぁ……ッ、んっ」

 次第に腰の振りが激しくなる。普段は隠している場所の全てを見せながら、自分の上でうっとりと乱れる彼女の肢体を、忍足はじっくりと鑑賞する。上になるのは初めてのはずなのに、郁のあまりにもいやらしい腰つきとその姿に、忍足は口の端をわずかに上げる。

 顎を軽く反らして呼吸を荒くしながら、自ら快感に溺れていく、白い身体はたまらなく綺麗だ。時折下から突き上げてやると、その身体はさらにのけぞった。

 ふたつの膨らみは愛撫を求めるように激しく揺れ、忍足は思わず手を伸ばす。甘い声を聞きながら柔らかな感触を楽しんで、そして忍足は郁の腰に両手を添えた。自分の上体を軽く起こして、力任せに前後に揺する。

「……ッ! ……はっ、ぁん」

 どこかうれしそうな表情を浮かべて、郁はまた生理的な涙をこぼす。自分で腰を振るよりも、動かしてもらった方が遥かにいいのだ。彼女の腰を乱暴に揺すりながら、忍足は何度も郁を思い切り突き上げる。

 気持ちよさそうな郁の悲鳴がこだまして、露わな身体と膨らみが激しく揺れる。その痴態を見上げながら、しきりに忍足は郁を責めたてる。そしていくどめかの突き上げで、郁はいっそう甲走った声を上げると、忍足の上に倒れ込んだ。

 呼吸を浅くして、肩を何度も上下させる彼女を、忍足は抱きしめて落ち着かせる。あやすように郁の頭を撫でたら、はにかんだ笑みを返されて啄むようなキスをされた。そんな彼女が愛しくてたまらない。

 忍足は口の端を僅かに上げて微笑むと、郁と身体の上下を入れ替えた。彼女を再びベッドに押しつけて、触れるだけのキスを何度も落とす。

「……やっぱ、こうやって見下ろす方がエエわ」

 唇を離してそう口にしたら、なぜか郁ははずかしそうな顔をした。そのリアクションに、忍足は思わず表情を緩める。

「何でそんな顔するん?」

「……内緒っ!」

 照れ隠しだと理解すると、忍足はまた彼女にそっと口づけた。そのままの流れで、耳の後ろから首筋に唇を這わせていく。そしてデコルテを味わうように舐めて、さらに下に降りていく。

「せっ、せんぱ……いっ」

 この期に及んでなぜか抗議の声が聞こえたが、忍足はそれを無視して、郁の片胸の先端を口に含んだ。もう片方は指先で摘む。両方の先端に、同時に刺激を与えてやる。

「……ッあ、ん」

 下肢で繋がりあったまま胸をいじられて、郁は熱を帯びた息を漏らす。自分の脳髄まで溶かしてしまいそうなため息だ。彼女の胸を可愛がるのはそのままに、忍足は下半身を揺すって、郁の内側を刺激する。

 次第に、郁の身体が火照り始めた。白い身体にわずかに朱がさす。内側は再び熱くなり、潤いを増して忍足の突き上げを求め始める。そろそろだ。

 胸から手を離して再び彼女を強く抱きしめて、忍足はラストスパートを開始した。激しさを増した抜き差しで、彼女を一気に追い上げていく。

 郁の身体と忍足の身体が、隙間なく密着する。肌と肌とが、直接触れ合う感覚が心地いい。……そのなめらかな肌も、身体の温もりも、熱い吐息も、かわいらしい声も、全てが愛しくて仕方がない。想いの全てを注ぎ込むように、忍足は郁を強く抱きしめる。

 粘度の高い水音と、彼女の甘く高い声と息遣いが、静まりかえった部屋を満たしていく。

 呼吸の荒さはそのままに、郁はわずかに眉根を寄せた。瞳を閉じたまま、何かに耐えるような表情で、忍足にしがみついている腕に力を込める。彼女の限界の近さを感じ取り、忍足はさらに動きを速める。自分もまた息が上がり、鍛えた身体から汗がしたたる。あと少しだ。郁の下の純白のシーツがいっそう乱れた、その時。

「ッ! やぁ……んッ」

ひときわ高い声を上げて、彼女は弓なりに身体を反らした。見開かれた目から一筋の涙が伝い、忍足を受け入れている内壁が、同時に激しく収縮する。何かを促すようなきつい締め上げに、忍足は耐えきれず声を漏らして、

「……ッ、くっ」

導かれるように、自分の熱情の全てを郁の中に吐きだした。



 日はすでに高く昇り、時計の針は正午を指そうとしている。トーストの香ばしい匂いで郁は目を覚ました。いまだに疲れの残る身体を、なんとか起こしてあたりを見回すと、そこには、テーブルの上に遅めの朝食の準備をしている忍足がいた。

 トーストにオムレツとつけあわせのサラダが二人分。お決まりの朝のメニューだ。忍足は郁に背を向けて、もくもくとカップにコーヒーを注いでいる。

 けれど、両方のオムレツに、なぜかケチャップでメガネの絵が描かれているのに気がついて、郁は思わず笑みをこぼした。

「起きたんなら、メシにするで?」

 こちらを振り返って穏やかに微笑む忍足に、明るい返事を返してから、郁は布団を抜け出した。ある日の幸せな風景だ。
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