*Short DreamT*

□【忍足】かわいいキミを泣かせたい
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「郁、郁! ホラ、起き?」

 何度もそんなふうに声を掛けながら、忍足はまだベッドで眠っている彼女をゆさゆさと揺する。カーテンの隙間からは、もう朝の日差しが差し込んでいた。

 しかし、郁は、全く起きようとしない。目は覚めているようなのだが、まだ寝ていたいらしく、何事かをつぶやきながら、掛け布団をかぶり直して抵抗している。

「……ホンマ、しょうがないやっちゃなあ」

 忍足は苦笑して、昨夜のことを思い出した。自分が満足するまで付き合わせてしまったから、その疲れが残っているのだろう。彼女の寝姿をじっと見つめる。

「……でも、お前が起きてくれんと、俺ヒマなんやけどな」

 忍足のいるここは、一人暮らしの郁の部屋だった。



「んっ……」

 不意に、郁が寝返りを打った。今まではずっと背中を向けていたのが、こちらの方を向く。その幸せそうな寝顔に、忍足は思わず笑みをこぼした。

「……俺も寝よ」

 トップスを脱いで、上半身だけ裸になる。彼女を起こしてしまわないように気をつけながら、そろりとベッドの上に乗って、布団にすべり込んだ。後ろからギュッと抱きしめる。

 すっぽりと自分の腕の中におさまるサイズの、柔らかな身体が愛しい。首筋に顔を埋めたら、ほのかに甘い匂いがした。柑橘系の爽やかな香りだ。

『……何やろコレ。香水なんかな』

 今度お気に入りの香りを贈ろう。そうすれば自分も楽しいし……。ぬくぬくとした布団の中で、忍足は機嫌良くそんなことを妄想する。しかしそんなことを考えていたら、昨夜の続きがしたくなってきた。

「……………………」

 何となく郁に悪い気もするが、生理現象はどうにも出来ない。

「……でもまぁ、そのうち起きるやろ」

 自分に都合良く結論を出すと、忍足は身体を起こして、ことを致すには邪魔な布団をはぎ取った。



 郁をそっと仰向けにして、キャミソールの上から胸に触れる。何度も先端をかすめるようにしてから、包むように手を置いて柔らかな感触を楽しむ。

「っ、先輩……?」

 ようやく彼女が目を覚ます。ぼんやりとした表情で、忍足に定まらない視線を投げかける。

「やっと起きたん?」

 そんな彼女を見おろしながら微笑んで、けれど、どうしても続きがしたい忍足はキャミソールの中に手を入れた。何もつけていない身体に突然触られて、郁は驚いたような声を出す。駄目と言いながら、なんとか止めてもらおうともがくが、

「アカンで」

 あっさりと忍足に押さえ込まれて、唇を塞がれてしまう。

「っ……!」

 ベッドに押しつけられるようにキスされて、ようやく郁は、忍足にやめる気がないことに気がついた。強引に口を開かされて、温かな舌がねじ込まれる。

 舌先が触れ合ったと思ったら、すぐに全体を絡め取られて、執拗に侵食され始めた。 自然と息は上がり、郁の目尻に生理的な涙が浮かぶ。 

 なかなか離してもらえないのは嫌なのに、それでも、忍足に慣らされた身体は素直に反応を示し出す。意識は次第に濁り始めて、下肢の奥まった部分がじんわりと熱を帯びていく。

「……俺のこと放っといて寝とった、悪い子にはお仕置きや」

 そう言って忍足は、郁に唾液を注ぎ込む。突然のことになすすべもなく、郁はそれを懸命に飲み干す。ひどいことをされているはずなのに、熱くなった彼女の身体は心地よさに疼き始めた。

 嫌だったはずなのに、ほんの少し可愛がられただけで、あっさりとその気にさせられてしまう自分が悔しい。けれどその場所は、もう自分でもわかるくらいに潤ってしまっていた。彼女の脳裏に浅ましい願いがよぎる。

「……腰、少し浮かせて?」

 早く直接触って欲しくて、郁は忍足の言う通りに腰を浮かした。ショートパンツごと下着をおろされて、キャミソールも脱がされて、一糸纏わぬ姿にされる。

 そのまま膝を割り入れて、忍足は郁の脚を大きく広げる。彼女の膝裏に手を入れて、彼女の下肢を上半身に向けて倒した。

 今は朝で、部屋は明るい。電気をつけていなくても、お互いの身体や表情はよく見える。はずかしさに怯んだような喘ぎを漏らして、郁は瞳を伏せる。本能では忍足を求めていても、理性の全てがなくなってしまったわけではないのだ。

「……明るいところでするのもエエかもな」

 そんな彼女を、忍足は楽しそうに見下ろす。自分の下で脚を開いて濡れた入り口を見せながら、恥ずかしそうにしている彼女が可愛くて仕方がない。脚の間に指を伸ばす。もの欲しそうに透明な体液を溢れさせているそこに、中指だけでそっと触れた。わずかに身体を震わせて、郁は小さな悲鳴を上げる。

 彼女の可愛らしい声を聞きながら、忍足は、トロトロになっているその場所をゆっくりとなぞっていく。まだ指は入れずに、表面を優しく押すようにしながら、じっくり刺激を与えていく。

 やがて、郁は腰を揺らし始めた。最初はあんなにぐずっていたくせに、こんなにも簡単に自分に搦め取られてくれる、素直な彼女が愛しい。彼女の体液で指先をしっかり濡らしてから、忍足は郁の突起に触れた。一番感じるところを刺激され、ひときわ高い声を上げて、郁は涙をこぼす。

 口角を引き上げて笑みを作って、忍足は彼女に尋ねる。

「……そんなに気持ちええん?」

 濡れた瞳で郁は忍足を見上げると、頬を染めてこくりと頷く。その答えを聞いて満足げに微笑むと、忍足は彼女の突起に触れながら、入り口の浅い部分をかき混ぜ始めた。

「……ッ、んっ……」

 我慢しきれず声を漏らして、羞恥に郁は頬を染める。けれど快楽には抗えず、脚を大きく開いたまま、朝の日差しが差し込む室内で、郁は腰を揺らし始めた。いじられているその場所を、忍足に見せつけるように腰を振る。早く指を入れてほしいのに、なかなかそうしてもらえないのがもどかしい。

 いつもならすぐに奥まで入れてくれるのに、なぜか今日の忍足は、入り口の浅いところばかりを刺激する。切なさに苦しくなって郁は忍足を呼ぶが、逆にくすりと笑われてしまった。意地悪に尋ねられる。

「――どうして欲しいん?」

「……っ!」

 お約束の展開に、また涙をこぼしてしまいそうになる。けれど、どうしても我慢できずに、郁はおねだりをしてしまった。疼いて仕方がないその場所を自分で広げて、忍足に見せながら、ずっとして欲しかったことを口にする。

 わずかに笑みを深くして、忍足は彼女の中に長い指をさし入れた。

「あ……んッ」

 待ち焦がれていたものをようやく与えられ、郁はうっとりと息を吐く。ずっと焦らされていたせいか、それだけで満足してしまいそうになる。幸せそうに恍惚に浸る郁を眺めながら、忍足は彼女の中に埋めた指を動かし始める。それを自分自身に見立ててゆっくりと、何度も出し入れを繰り返す。

「あッ…… あ」

 心地よさそうな声を漏らしながら、彼女の身体は昂ぶり始める。忍足の動きにあわせて腰を揺らしながら、郁は惚けたような笑みを浮かべた。その瞬間、背徳感にも似た快感が忍足の背筋を駆け抜ける。彼女が乱れる姿をもっと見たい。

 抜き差しする指を増やして、忍足は彼女の脚の間に顔を近づけて、先端の突起に舌を伸ばした。

 突起を舐められるたびに、郁の腰はびくびくと跳ね、甘く高い声が漏れる。彼女の先端を舌で刺激している間にも、忍足は郁の内側を指でくちゅくちゅと可愛がる。

 そして、郁は一瞬だけ息を詰まらすと、白い身体をのけぞらせた。甲高い悲鳴を上げて、全身を痙攣させる。あまりの心地よさに、彼女の目尻をまた涙が伝う。



 肩を上下させながら、懸命に息を整える彼女のとなりで、忍足は自分のボトムを引き下ろした。ベッドの上に座り、仰向けに寝ている郁を引っ張り起こして、自分の脚の間に顔を埋めさせる。そして彼女の口元に、張りつめた自分自身を差し出して促した。

 郁は僅かにためらうが、拒めないと悟ったのか、観念したように睫毛を伏せた。自分から忍足のモノに顔を寄せて、懸命に舌を遣って裏側の線条を舐め上げていく。先端まで舐め終えて、口に含んだ。

 幼さの残る清楚な彼女が、たちあがった男のモノを愛しげに咥える姿は倒錯的だ。またあの背徳感にも似た情動が呼び起こされて、忍足は呼吸を浅くする。自分の中の何かが煽られて、もっと酷いことをさせたくなる。

 忍足は郁の後頭部に手をやった。ぐっと引き寄せて、自分のモノをさらに奥まで咥えこませる。

「……んっ ……っ」

 苦しそうにしながらも、郁は瞳を閉じたまま忍足自身を咥え続ける。教え込まれた通りに強く吸いながら、口の中で舌を使って上端の首の段差の部分を舐めていく。忍足は声を堪えながら、郁の頭を慈しむように優しく撫でる。

 それが嬉しかったのか、彼女は不意に忍足を見上げると、はにかんだような笑顔を見せた。改めて忍足自身を咥え直して、さらにきつく吸い上げる。心地よさに耐えきれず、忍足は吐息混じりの声を漏らした。……もう我慢できない。

「もうええで」

 そうとだけ告げて、忍足は彼女の身体を起こした。そのままベッドに沈めるように押し倒す。手の届くところに用意していた薄い膜を手早く装着すると、細い腰を押さえつけて、容赦なく貫いた。潤った狭い場所に滾った自身を埋めていく。

「……っ、せんぱい」

 眉根を寄せて、郁は辛そうな声を漏らす。さすがに痛いらしく、華奢な身体をこわばらせ、固くする。奥まで自身を埋め込んでから、忍足は郁の唇に触れるだけのキスを落とした。目尻ににじむ涙を舐め取って、首筋や胸元にも唇を寄せていく。

 しばらくの間そうやって郁をなだめていたら、ようやく彼女の身体から余計な力が抜け始めた。息遣いに、先ほどまでの甘さが戻り始める。

 郁の両腕が自分の首の後ろに回されて、白く細い脚が胴回りに緩やかに絡む。この瞬間がたまらなく好きだ。愛されて、求められているような気がして。……彼女には申し訳ないけれど、今日は優しくしてやれそうにない。
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