*Short DreamT*

□【忍足】オオカミまであと何秒?
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――March 13, 20XX at 22:30

閉じられたカーテンの隙間からは、
漆黒の夜空と、街灯に照らされた住宅街の小路が見える。
「う〜 この英語の長文読解しんどいよぉ…」
部屋の勉強机で、郁は英語の問題集に取り組んでいた。
苦手ではないけれど、かといって得意でもない長文読解だ。
今取り組んでいる問題は、単語数2500を越える本当の長文で、
ご丁寧に問題文までもが英語で書かれている。
「でも、入試ではこれやんなきゃいけないんだから、しっかりしなきゃね」
そんなことをつぶやきながらも、エネルギーをチャージすべく、彼女は携帯に手を伸ばした。
メールの受信トレイを開いて、昼間忍足から届いたメールを探す。
『明日のホワイトデーは楽しみにしとって』
温かい文面と末尾のメガネの絵文字に、郁は思わず笑みをこぼす。
普段はあんなにクールなのに、実はとてもロマンチストで、
イベントごともすごく大事にしてくれる忍足は、
彼女にとっては絵に描いたような“優しい彼氏”だったのだ。
「明日かぁ… 楽しみだな」
画面に向かって微笑みかけて、携帯を閉じて宿題に戻る。
「…でもその前に、キチンと勉強しなきゃね」
先輩を追いかけて、関西の大学にちゃんと現役で行けるように…。
心の中でそう口にして、郁は問題集に向き直った。
しかし突然、彼女の携帯が鳴り始めた。
この着信音は忍足だ。郁はあわてて通話ボタンを押す。
「――はい、もしもし!」
『…郁か?』
「先輩!」
数日ぶりの優しい声に、郁はうれしさに顔をほころばせる。
『元気? 今どこにおるん?』
「今ですか? 家の自分の部屋ですけど」
『そか、じゃあちょっと窓の外見てくれへん?』
「…窓の外、ですか?」
彼女の部屋は一軒家の二階にある。
忍足の発言を不思議に思いながらも、郁は部屋のカーテンを開けた。
すると、そこには街灯の下で携帯電話に耳を当て、こちらに手を振る忍足本人がいた。
『…来ちゃった、なんつってな』
道路からこちらを見上げる口元と、受話器から聞こえる忍足のセリフがシンクロする。
「…先輩」
ベタな演出に、しかし郁は涙ぐむ。あの卒業式から一週間ぶりの本人だった。


***

「――先輩っ!」
家のカギを開けた瞬間、玄関先で待っていた忍足に郁は思い切り抱きついた。
瞳に涙を浮かべて、彼の胸に顔を押しつける。
「たった一週間ぶりやろ。そんな泣かんの」
優しい声で泣き虫な彼女を叱りつつも、忍足はうれしそうに彼女の頭を撫でる。
「ホラ郁、早よ家ン中入るで」
けれど忍足はすぐに、自分に抱きつく郁を強引に引きはがした。
もっとくっついていたかった彼女は唇を尖らせるが、
玄関扉の前でラブシーンを繰り広げていてもたしかに仕方がないので、
「はぁい」とイヤそうに返事をして、忍足に背中を向けた。
扉を開けて、家の中に入る。
しかし家の中にに足を踏み入れた瞬間、郁は忍足に少しだけ押された。
『あれ?』と思う間もなくカギの閉まる音が聞こえて、気がつくと彼女は忍足に、後ろから抱きしめられていた。
「せ、先輩…?!」
忍足のいきなりの行動に、郁は戸惑う。
まだ玄関先で、ふたりとも靴も脱いでいないのに…。
郁の首筋に顔をうずめながら、忍足は苦しそうに息を吐く。
「…すまんな、お前の顔見たら何やガマンできんくなってしもうたわ」
切なげにそんなことを訴えられて、彼女は顔を赤くする。
どうしていいかわからずに、視線を落とした。
「…イヤだったら、言うて?」
そう言って忍足は、郁の返答も待たずに、彼女のトップスの中に片手を入れた。
躊躇いなく柔らかなそこに手を伸ばして、下着越しに触れる。
「…っ、忍足先輩っ」
自分を呼ぶ彼女の声が、微かな甘さを帯びていたのに、
気をよくした忍足は、空いていた方の手で郁の背中を探った。
すぐにホックを見つけて、服の上から器用に外し、
トップスの中に入れている手を下着の下に潜り込ませる。
「っ!」
彼女の小さな悲鳴は無視して、膨らみを包み込むように手を置いて、
そしてその手を円を描くように動かしはじめる。
「…んっ …つっ」
固く目を閉じ、郁は必死に声をこらえる。
「…声、我慢せんで?」
彼女の胸に刺激を与えながら、忍足は郁にささやきかける。
しかし、彼女はふるふると首を横に振った。
「…なら、我慢できんくしたるわ」
忍足の手の動きが、にわかに激しくなる。
ひときわ甲高い悲鳴を上げて、郁は口元を押さえた。
けれど、痛いほどに強くされて、こらえきれずに声を漏らしてしまう。
か細い悲鳴を漏らしながら、合間にやめてと訴えても、忍足は手を動かすのをやめない。
痛みにも似た快楽が押し寄せて、郁の目尻に涙が浮かぶ。

気が済むまでそんなふうに触れてから、忍足は改めて、彼女を強く抱きしめた。
「…良かった?」
そう問いかけると、羞恥に頬を染めながらも彼女はこくりと頷いた。
あいにくその表情は忍足からは見えないのだが、彼の下腹部は、その小さな頷きにさらに熱くなる。
早くその先に行きたい。
充血しきったそこを、華奢な身体に押しつけた。
彼女の肩がびくりと震える。
潤んだ瞳が伏せられて、火照った頬がさらに赤くなる。
そんな彼女を抱きしめたまま、改めて忍足は尋ねた。
「…部屋で続き、してもええ?」


***

(なんで、こんなことになってるんだろう…)
ぼんやりと、郁はそんなことを考える。
しかし身体は既に熱をもたされて、頭もぼんやりして思考がまとまらない。
玄関先で抱きすくめられてから、そのまま雰囲気に流されるようにして、
忍足と行為に及んでしまっていた。

部屋のベッドに寝かされて、そのまま覆い被さられて唇を重ねられる。
口づけは次第に深くなり、舌を絡め取られて、口の中を犯されていく。
深いキスは、自分はあまり好きではないけれど、忍足はそうではないようで、貪るように求めてくる。
もう抵抗する余裕もなく、求められるままに応じていると、次第に息が上がってきた。
酸素が足りなくて苦しい。思わず、郁は眉間に皺を寄せる。
すると、不意に忍足は郁から身体を離した。
「…?」
思わず彼女は忍足を見上げる。
常夜灯の明かりの中で自分に跨がる忍足は、精悍でめまいがするくらい色っぽい。
郁の視線に気づいた忍足は、着ていたシャツを彼女に見せつけるように脱ぎ捨てた。
思わず、郁は目を逸らす。
そのまま、忍足は彼女のトップスに手を掛けた。
既にホックの外れていた下着ごと一気に脱がせて、露わになった彼女の胸に顔を埋めた。
そんな忍足の激しさに、郁は違和感を覚える。
(…いつもは、もっと優しいのに)
今夜は妙に強引で、困ってしまう。
(しばらく会えなかったからかな、それとも…)
しかし、郁がそんなことを考えていると、胸の先端に痛みが走った。
「っ!」
忍足に歯をたてられたのだ。
「…ちゃんと、俺の方見てて?」
余裕のない顔で不機嫌に視線を送られて、なぜか鼓動が高鳴った。
初めて見る忍足のサディスティックな表情に、クラリとする。
見つめ返しながら潤んだ瞳で謝ると、忍足は満足そうに微笑んで、噛みついた場所に口づけた。
そのまま口に含んで、先端を舌で可愛がりはじめる。
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