*Short DreamT*

□【忍足】続♂ロマンチックには程遠い
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「……コレや。間違いあらへん」

 自室のパソコン画面を食い入るように見つめながら、一人暮らしの自分の部屋で、忍足はポツリとつぶやいた。

 彼の手元には、以前青学の天才に、誕生日プレゼントという名目で押しつけられたコラージュもどきの写真があり、そしてパソコンの画面には、下着とトップスをずり上げてこちらを熱っぽく見つめる、愛しの彼女にほんの少しだけ似た女優の画像が表示されている。

(でもこうして見ると、ホンマにソックリっていうワケでもないんやな)

 渡された写真とモニターの画像をしげしげと見比べる。写真の方は、さすが職人の丹精込めた修正がなされているだけあって、忍足の愛しの彼女とうりふたつなのだが、パソコンの方の画像はそうでもない。確かに同じ系統のルックスだけど、明らかに別人だ。

 渡された当初はコラージュのようなものと理解しつつも、がらにもなく無意味に焦ってしまったりしたけれど、元画像を知ってしまえばなんてことはない。幽霊の正体見たりといった感じで、こんなものに振り回されてしまった自分が、なんだか情けない気もする。

(……ゆうても、元画像知らなかったら焦るのはしゃあないやん)

 そんなことを思いながら、忍足は改めてその女優の名前で検索をかける。微妙に良心の呵責を覚えつつも、なんとなくの怖いもの見たさと、年頃の少年の本能は押さえきれない。

 セーフサーチをオフにした画像検索の結果を流し見ながら、別のタブで、サンプル動画がタダで落とせるお気に入りのサイトを開き、手慣れた様子でこれまた女優名で検索して、キュンとくるタイトルのモノをとりあえずひとつ落としてみる。

 動画のダウンロードが終わるのを待ちながら、画像検索の結果を改めて見つめる。

 違う子ではあるんだけど、角度や表情によっては本当に似ていて、一瞬焦ってしまう。青学の天才のイタズラ心が呼び覚まされたのも、理解できなくはない。

 そしてその画像検索の結果を眺めながら、最近の男性向け作品の過激さに改めて感謝する。

(ホンマかわええのに、こんなことまでしてくれるんやね……)

 清楚な年下系がキャッチコピーのはずなのに、やっていることはあまりにも過激で、とてもじゃないけどご本人には見せられない。

 だけど折角だし、というところで、どことなく氷帝の基準服に似た制服を着ている、かわいいショットを数点と、甘えたような上目遣いでこちらを見上げるショットを、右クリックで保存する。

「……って、何やっとんのや俺は」

 ふと我に返る。本当に自分は一体何をしているんだろう。昔はこんなキャラではなかったはずだ。

 確かに時々はどこかから回ってくるDVDの、お世話になったこともあるけれども。そしてたまには、そのDVDのデータを一生懸命コピーしたこともあったけれども。でもそんなことは、それこそ年頃の少年であれば誰もが一度は通る道なわけであって。

 だけど、こんなに熱心に一人の女優にこだわったりすることは、今までは本当になかった。

 受験のストレスなのか、なんなのか。食べたくても食べられない据え膳は、どうやらイケメンの心までも蝕むらしい。

(でもコレはあくまでも、あの約束ちゃんと守るためなんやから……)

 自分一人のためじゃない、あくまでも二人の約束を守るため……。誰にも何も言われていないのに、忍足は心の中で必死に言い訳をする。

 しかし言い訳をしながらも、自分のパソコンのパスワードをより複雑なモノに設定し直す。これで彼女にパソコンを勝手に触られても安心だ。

『よしっ準備完了!』

 なんてことはさすがに思わないけれど、愛しい彼女に心の中で謝りつつ、期待に胸を高鳴らせて、ダウンロードが完了したばかりのサンプル動画を、忍足はそっと解凍した。

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