*Short DreamT*
□【忍足】最高の家庭教師
2ページ/2ページ
◆番外編
試着室の中で、郁は半ば呆然と自分の姿を見つめる。
(ホントにこんなことになるなんて思わなかったよ……)
鏡に映るのは、忍足が好きだというブランドで、忍足が選んだワンピースに着替えた自分の姿だ。オフショルダーの白いニットワンピで、寒いかもとか思ったけどふんわりとした生地が意外と温かい。
(……あんまりこういうの着たことなかったけど、結構いいかも)
肩を出すのは少し恥ずかしくもあるけれど、こうして改めて着てみると、肌の露出自体はそこまで多いわけじゃないのに、大人っぽく見えていいかもしれない。
けれど、自分ではそう思うものの、外で待ち構えている選んだご本人と店員さんはやっぱり怖くて、郁は恐る恐るカーテンの外に出る。
「お客様お似合いです〜!」
店員さんにテンション高めで褒められて、郁は戸惑った様子で忍足に視線を向ける。
「ええやん。かわええで」
にこにこと笑う忍足に少しだけホッとしつつも、郁はおずおずと問いかける。
「先輩、本気なんですか」
「本気やないんならここまで来とらんやろ」
忍足はしれっとそんなことを言う。しかし、すぐに口の端を上げると。
「でも似合うとるで。これで決まりやな」
満足そうに微笑んだ。
「なんか、首まわりが寒い気がします」
「何言うとるんや、オシャレはガマンやで」
そんなことを話しながら、買ったばかりのワンピースを着て、郁は忍足と並んで歩く。着てきた服は、お店でショッパーに入れてもらった。
「それはそうなんですけど」
「文句言うなや、せっかくかわええんやし」
「ホントですか?!」
「ホントやで、可愛いしエ」
『ロ』と続けかけて、忍足は危うく踏みとどまる。
「……先輩?」
正直すぎる自分に苦笑しながらも、郁に対してまさかエロいとも言えず、忍足はしらじらしいセリフを口にした。
「……何でもあらへんわ」
ひと息ついて、微笑んだ。
「それじゃ、ウチに帰んで?」