*Shoet DreamU(更新中)*

□【跡部】冬の終わりに(後半)
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 ぬるついた内壁を跡部に擦り上げられながら、郁はひたすら心地よさそうに喘ぐ。出し入れをされるたびに、切なげな喘ぎと熱を帯びた吐息と、さらさらとした透明な蜜とが、彼女の身体から溢れていく。

 先ほどまでの愛撫で相当興奮していたのか、まだ入れられたばかりだというのに、郁の身体は頂点を迎える寸前のようだった。彼女自身の内側も熱くとろけるようで、さらなる快感を求めて跡部のものを締め上げてくる。

 自分自身の欲求にとても従順な、無垢な身体を満足させてやるべく、跡部は郁を貫くペースを上げていく。

 跡部の律動にあわせた郁の息遣いと淫猥な水音が、広い室内を満たしていく。愛する跡部ともっとひとつになりたくて、郁は彼にしがみつく腕に力を込めた。薄く汗の滲んだ互いの素肌が密着し、二人の距離がゼロになる。

 郁の脚が跡部の腰にさらにきつく絡められ、細い腰が浮かされた。蜜の溢れる入り口が、さらなる挿入をねだるように上を向く。彼女に促されるまま、跡部は腰を揺らして自分自身をさらに奥まで差し入れる。そのとき、郁の甘い喘ぎが跡部の耳に届いた。

「あっ…… んっ……」

 喜びの滲んだ愛らしい声音に、跡部の嗜虐心が頭をもたげる。恥ずかしがり屋なくせに快楽に従順な彼女に、とっておきの意地悪をしたくなる。

「……気持ちよさそうにしやがって」

 青い瞳を欲望に眇めて、跡部は自分の下で喘ぐ郁を見下ろす。

「……そんなにいいのかよ」

「……ッ!」

 跡部に羞恥を煽られて、郁は小さく息を呑む。予想通りの純な反応に、跡部は口の端を上げて笑う。完全に余裕をなくしている様子の彼女をからかうように、唐突に抜き差しをぴたりと止めた。

「えっ……?」

 それは、あまりにも残酷なおあずけだ。前触れもなく訪れた喪失感に、郁は涙をこぼしそうになってしまう。どうして急にそんなことをされるのかすらも分からずに、困惑に瞳を潤ませて郁は跡部を見上げた。

 けれど跡部は楽しげな笑みを浮かべて、彼女をさらに追い詰めていく。無茶な要求をつきつけた。

「……たまにはお前が動いてみろよ」

「でも……」

「でもじゃねぇ」

「……っ」

 最中の彼には逆らえない。仕方なく、郁は自分から腰を動かし始める。跡部の裸の胴回りに脚を絡めたまま、彼の下で、固くたちあがった跡部のものに、

自分の柔らかな場所を打ちつける。

「……っ ……んっ」

 けれど。彼の下ということもあり、郁にとっては非常に動きづらい体位で、既に熱を持って疼いている彼女のその場所は、少しも満たされない。懸命に身体を揺すって快感を得ようとしても、ちっとも上手く行かず、あまりのもどかしさに、郁はまなじりに涙を浮かべる。

「……んっ ……つっ」

 しかし、郁は涙をこらえながら、跡部の身体に自分の腰を繰り返し打ちつける。そんな彼女の姿に、跡部は嬉しそうに目を細めた。小さな耳殻に唇を近づけて、吐息混じりの声で囁きかける。

「……可愛いぜ」

「……っ!」

 自分のいやらしさを改めて意識させられ、ついに郁の瞳から大粒の涙がこぼれる。

「いじわる……っ」

「今さら何言ってやがる」

 そう言って、けれど跡部はやりすぎを詫びるように、愛しい恋人の涙を自分の唇で拭った。

「……じゃあ、今からは俺がしてやるよ」



 身体の最奥まで跡部のものを容赦なく差し入れられて、そして勢いよく引き抜かれる。ずっと求めていた甘やかな痺れをようやく与えられ、郁は恍惚に浸っていた。薄く開かれた唇からは甘く媚びたような声が漏れ、跡部と繋がり合っているその場所からは、透明な蜜を溢れさせている。

 しばらくの間、抜き差しを楽しんだあと。繋がり合った状態のまま、跡部は郁を抱え起こした。そのままベッドの上で、互いに向かい合う体勢で彼女を抱きしめる。郁もまた跡部の抱擁に応えるように、自分の腰を彼自身に強く押しつけた。挿入が深くなり、郁は幸せそうな息を漏らす。

 密着度の高い体勢で、跡部は改めて愛しの彼女と繋がり合う喜びを感じていた。会えなかった時間が埋まって、寂しさも消えていくような、そんな気持ちだ。彼女を抱きしめる腕をわずかに緩めて、跡部は郁に口づける。触れるだけのキスを角度を変えて何度も、彼女に降らせる。

 跡部との口づけを楽しみながらも、郁は時折切なげな喘ぎを漏らして、彼の下腹部に押し当てている自分の腰を、もどかしげにくねらせた。自分自身を身体で求められるのが嬉しく、跡部は口の端を上げて笑う。可憐な恋人のいやらしい仕草に、愛しさがこみ上げる。

 跡部は郁の身体に回していた腕を放して、自分の上体をベッドに倒した。何も言われていないにもかかわらず、郁は自分から片手を身体の後ろについて、細い腰を揺らし始める。焦点の定まらない瞳で、興奮に頬を紅潮させながら、彼女は自分ひとりで高みに昇ってゆく。

 郁が倒れ込んでしまわないように、細い腰を支えてやりながら、跡部は彼女の媚態を見上げた。淡いピンクのグロスで縁取られた唇は薄く開かれ、しなやかな白い身体には薄く汗が滲んでいる。彼女が腰を揺らすたびに、豊かな両胸の膨らみがふるふると揺れ、跡部の目を楽しませる。

 一番感じてしまう下肢の突起を跡部の身体に擦りつけながら、誰に尋ねられてもいないのに、彼女は掠れた声でつぶやいた。

「……気持ちいい……」

 あまりの心地よさに、艶然とした笑みを浮かべて。彼の上で裸の身体を揺らしながら、郁はを跡部を浅ましくねだる。

「気持ちいいから…… もっと……」

「……仕方ねぇな」

 緩やかに揺れている彼女の腰を、跡部は両手でしっかりと掴んだ。どんなにいやらしいことをしても、今日は許してもらえそうだ。



 勢いよく突き上げられて、乱暴に前後に揺すられて、しかし郁は、心地よさそうな声を上げる。思うさま彼女を乱してから、そのまま跡部は身体を起こして再び郁に覆い被さった。いよいよラストスパートだ。射出のため体位で、そのための抜き差しを開始する。

 先ほどまでの行為でよほど昂ぶってしまっていたのか、郁の反応はとてもよかった。愛しい彼女をもっと征服してやりたくなり、跡部は郁の両の膝裏に手を入れた。ベッドの方に向けて脚を折り曲げさせてから、そのまま大きく広げる。

「ッ、せんぱい……」

 屈曲の苦しさとさらに深くなった挿入に、郁は掠れた声で跡部を呼んだ。しかし跡部の青い瞳の奥に潜む熱情を感じ取り、彼女は何も言わなくなる。どこまでも彼に従順に、跡部の滾りと欲望の全てを受け止めながら、甘く喘ぐ。

 脚をベッドにくっつけるように曲げさせられたまま、郁は結合部を疼かせる。姿勢は確かに苦しいけれど、その代わりいつもよりずっと気持ちいい。高波に攫われるような感覚だ。



 不意に郁は、自分の無垢な身体に向けられている跡部の視線を感じ取った。入れられて感じている表情も、波打つように揺れている胸の膨らみも、繋がり合っているその場所も、全て跡部に見つめられている。

 それを意識してしまった郁は、感じたことのない快感に囚われた。いやらしい姿を、見られるのが心地いい。

「……っ」

 粘膜が擦れ合うのとはまた違った興奮に、彼女の身体の奥からまた体液が溢れ出す。彼の視線にすらも性感を覚えてしまう、あさましい自分に恥ずかしくなりながらも、郁は大好きな跡部に愛される幸せに浸る。

 さきほどからずっと続けられている、深い抜き差しがもたらす心地よさにも抗えず、自分の身体に彼の全てが刻みつけられていくのが、嬉しくてたまらない。

 もっと刻みつけて欲しい。もっと彼のものになりたい。忘れられない快感を刻みつけられて、彼なしではいられないような、そんな自分になりたい。跡部に激しく突き上げられながら、自分すら知らない心の奥で、彼女はそんなことを願う。

 郁を掻き抱く跡部の腕に、さらに力が込められる。汗の滲んだ素肌が強く擦れ合い、その余裕のなさに、郁は彼の限界が近いことを察した。彼女自身もまた、跡部によって寸前まで高められていた。

 そして、いよいよそのときが訪れる。跡部の体温を感じながら、愛する人と一つになれた幸せに満たされて、気がつくと郁は、華奢な身体を痙攣させていた。甲高い悲鳴が、薄く開かれた唇から溢れる。

 苦しみの果てに迎えた頂点は目も眩むほどに心地よく、彼女は跡部をくわえ込んでいる自分自身を、躊躇いなく収縮させた。

「……ッ」

 彼女の締め上げに促され、跡部もまた射出する。眉根を寄せて小さく呻いて、荒い呼吸もそのままに、跡部は郁に口づけた。そして、その口づけを終えたのち。心地よい疲労感に襲われて、達してしまったばかりの郁は、跡部の腕の中でついに意識を手放した。



***



「ほら、起きろ郁。雪降ってるぞ」

 跡部に身体を揺すられて、彼女は目を覚ました。白いリネンで揃えられた跡部のお屋敷のベッドの中。二人ともまだ服も着ていない。

「……え?」

 ぼんやりと返事をしながらも、郁は跡部に促されるまま身体を起こした。

「あっ、ホントだ……」

 窓外の景色に、郁は感動のため息を漏らす。いつの間に晴れたのか、澄んだ薄青い空の下、美しい庭園には白く輝く雪が舞っていた。

 一面の銀世界の中、常緑樹の下で跡部の愛犬のマルガレーテが楽しそうに遊んでいる。いつもと違う景色に興奮しているのか、元気にはしゃぎまわっていた。マルガレーテが飛び跳ねるたびに、金色の長い被毛が波打って柔らかな光を放つ。

「わ、マルガレーテだ!」

 愛らしくも美しい相変わらずの姿に、郁は目尻を下げて微笑む。

「センパイ、外に出てみてもいいですか?」

 裸の胸元を羽毛布団で隠しながら、わくわくとした表情で郁は跡部におねだりをする。ネコだけではなく、郁は犬も大好きだった。マルガレーテとも遊びたい。

「あーん? 仕方ねぇな」



 洋服を着てコートを羽織って、二人は揃って外に出る。陽光を反射してキラキラと輝く銀世界の中を、郁はマルガレーテ目指してまっしぐらに駆けていく。白い息を吐きながら、大きな声で名前を呼んだ。

「――マルガレーテ!」

 マルガレーテも郁に気がつくと、瞳を輝かせて走ってきた。積雪の上にしゃがみ込み、郁はマルガレーテを抱きとめる。嬉しそうに、マルガレーテは郁の顔をペロペロと舐めた。

 久しぶりの再会を喜び合う一人と一匹の無邪気な姿に、つい跡部は笑みをこぼす。ふとあることを思いついて、ポケットから携帯を取り出すと、跡部は郁に呼びかけた。

「郁、ほらこっち向け!」

「何ですか?」

 愛しの彼女とかわいい飼い犬に自分の方を振り向かせて。跡部は携帯のカメラで、大切な二人の写真を撮った。どちらとも幸せそうにしている、素敵なショットだ。

 もう冬も終わりで、今日が最後の雪かもしれない。

(……楽しんどけよ)

 跡部は心の中で、そんなことを思う。冬が終わって春になったら。跡部は大きく息を吸い、次の季節に思いを馳せた。

 去年の春はお別れの季節だったけど、今年は違う。今年の春は再会の季節だ。今まではずっと離れていたけど、自分を追いかけて、彼女がこちらに来てくれるのだ。こちらには両親が暮らしているとはいえ、住み慣れた祖国を離れるのは怖かっただろうに、勇気を出してこの地に来てくれる。

 跡部は嬉しく思う。春からは二人で、この場所で。未来に向かって進んでいくのだ。



 暖炉のある部屋へ戻ってくると、暖かな炎の前で、セーブルがお腹を出してゴロゴロとしていた。弱点のはずのその場所を天井に向けて、ノビノビと身体を伸ばしている。

「あっ、セーブル!」

 愛猫のあまりにもだらしない格好に、郁は慌ててセーブルに駆け寄る。

「もーこんなカッコで!」

 しかしセーブルは、お腹を出したまま郁を見上げて、得意気にミャウと鳴いた。大きな青い瞳をキラキラとさせながら、構ってとばかりに身体をくねらせる。明らかに、自分の愛くるしさを自覚してのその行動に、郁は呆れる。

「もうっ!」

「……相変わらず、あざといヤツだな」

 思わず跡部は苦笑する。去年の冬に拾ったときから、この小さな黒ネコのこの性格は変わっていない。

「仕方ないんだから」

 けれどその可愛さには抗えない。郁はしゃがみ込んで、セーブルをそっと抱き上げた。彼女の腕の中に当然のように収まって、セーブルは満足そうに喉を鳴らす。

 長かった冬がもうすぐ終わる。ずっと離ればなれだった、寒い季節の最後の思い出だ。
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