*Shoet DreamU(更新中)*

□【忍足】マ・シェリ
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 もうすっかり肌寒くなった、ある秋の夜。風呂から上がって寝室まで戻って来たら、可愛い彼女がベッドの上で体操らしきことをしていた。愛らしくもどこか間の抜けたな動きに笑いそうになりながらも、忍足は平静を装って尋ねる。

「……何しとんの? お前」

「腹筋ですっ」

 彼女――郁は得意気に答える。

「最近、筋トレ始めたんです」

 お風呂上がりに毎日腹筋とスクワットをしているとかなんとか、自己流のトレーニングを続けながら郁は言う。

「……ふぅん」

 タオルで髪を拭きながら、忍足は改めて郁を眺める。大学生になった今も現役の運動部の自分からしたら、全然なっていない腹筋だ。本人は一生懸命みたいなんだけど、ちゃんと出来ていない。そもそも、ベッドの上だから足先も固定してないし。

 けれど、裾にレースがあしらわれたショートパンツにキャミソールというこの季節らしからぬ格好で、体操をしている可愛い彼女を眺めるのは眼福で。もっと見ていたくなった忍足は、何のツッコミも入れずに郁を放置した。

 首に掛けたタオルで髪を拭くふりをしながら、さりげなく彼女の脚に視線をやる。トレーニングのために軽く曲げられたすらりとした脚は、太ももからつま先までがびっくりするくらい真っ白で、爪先に施されたパールピンクのペディキュアが、どこか妖艶な雰囲気を漂わせていた。

(ペディキュアってエロいよな……。でもまあアイツは、どうせ何も考えてへんのやろうけど……)

 内心で、忍足はポツリとつぶやく。きっといつものように、可愛いからと塗ってみただけに決まっているのだ。けれどそれにきっちりと反応してしまう自分が、なんだか悔しい。

 足先から視線を外して、今度は全体を眺めた。ふくらはぎも太腿も、細すぎず太すぎず丁度よい肉付きで、鍛えすぎていないのが幸いしてか、どこを触っても柔らかそうだった。

「…………」

 おもむろに、忍足はタオルをすぐそばの机の上に投げ置いた。ずっと見ていたら案の定試してみたくなったのだ。いかに恋人の自分といえども、唇や胸の膨らみと違ってその場所を改めて堪能する機会は実はそんなに多くはない。ベッドの上で励んでいる彼女に声をかける。

「筋トレ、手伝うたるよ」

 微笑みの裏の策略には、まだ気づかれていないはず。



「せ、センパイもう無理です〜〜」

 数十分後、郁はあっさりと限界を訴えてきた。腹筋数十回を数セットに、背筋と腕立て伏せを何十回かさせただけなのに。

「ホンマ体力ないなぁ」

「センパイと比べないでくださいッ!」

 正直な感想を口にしたら、怒られてしまった。全国クラスの運動部、しかも男子部のトレーニングは、郁にはやはりキツかったらしい。ぷりぷりと怒りつつも、未だに呼吸を乱している。

「でもダラダラやるよか、キツくても時間短い方がエエやろ」

「まあ、確かにそうですけど……」

 ベッドの上で交わされる、殆ど意味のないやりとり。けれどこんなやりとりも、忍足にとっては大切な時間だ。というか、郁とだったら何をしていても楽しいし。それに忍足にとっては、実はここからが本番だった。

「……頑張ったご褒美に、マッサージしたるよ」

 眼鏡なしの、とっておきの笑顔で微笑みかける。下心はまだ気取られてはいけない。いつも通りの優しい先輩を演じる。

「本当ですか!?」

 よほど疲れていたのか、郁は表情を輝かせる。無邪気に喜ぶ姿に微妙に良心を痛めつつも、忍足は郁に寝転ぶように言う。

「ほら、横になり」

「はーいっ」

 元気に返事をして、郁はうつぶせに寝そべった。淡い水色のシーツの上に横たえられた白い身体は、何度見てもやっぱり綺麗で、そしてたまらなく魅力的だ。

(まあ実際、抱き心地は最高なんやけどな……)

 邪なことを考えつつも、そんなことはおくびにも出さず、忍足は口を開いた。

「足先からやるで」

「……なんで足先からなんですか?」

 普通のリフレクソロジーのように背中や肩を揉んでもらえると思っていたのか、郁はそんなことを聞いてくる。

「こういうマッサージは心臓から遠いトコからやるもんなんや」

「そうなんですか〜」

「痛かったら言うんやで」

「は〜い」

 説明になってない説明と、あまりにも露骨な話題逸らし。それでも郁は納得し、忍足に身体を預ける。

 彼女の大らかさに感謝しつつも、忍足は郁の身体に触れた。足首の細さに驚きつつも、まずはふくらはぎにかけて揉んでいく。風呂上がりのせいか、郁の肌は予想以上に瑞々しくふっくらとしていて。

(ナイス思いつきやで、俺……)

 心の中で忍足は、自分のひらめきを褒めていた。

「……ふくらはぎ意外と気持ちいいです」

 その場所をふにふにと揉まれながら、郁は機嫌良くそんな感想を口にする。もうすっかりお客さん気分だ。

「ヒール履いとるからやろ。でもそんなに張ってへんで」

 彼女の白いふくらはぎは柔らかく、揉んでやりながら改めて、忍足は異性の身体を実感していた。そのまま上にのぼっていく。次はお待ちかね、肉付きのいいあの場所だ。

「太腿くすぐったいです〜」

「力入れとるからやろ、リラックスし?」

「え〜 ムリです〜」

 可愛らしいソプラノでころころと笑いながら、郁は脚をばたつかせて嫌がる。

「背中やってください〜 あと肩も」

 ナチュラルにリクエストされる。相変わらずの甘えん坊だ。

「……しょうがあらへんな」

 一番触りたかった場所は、あんまり楽しめなかった。少し悔しく思いながらも、忍足は言われた通りに、背中のマッサージに移る。

「……結構固いな」

「勉強頑張ってるからですっ」

 小さな背中は意外に固く、忍足は驚く。肩こり持ちだなんて話は聞いたこともないんだけど……。

「ちゃんと姿勢気をつけるんやで」

「はぁい」

 そんな何てことないやりとりをしながら、忍足はさりげなく郁の背中に下着の線がないことを確かめる。そして、彼女が上体をわずかに起こした、その隙に。

「……ここも揉んでやるわ」

「ひゃっ!」

 キャミソールの中に両手を入れて、手に余るサイズの愛らしい膨らみをすくい上げる。パンナコッタのようなフルフルとした極上の触感に、思わず口元がにやけてしまう。

「せ、先輩だめですっ」

「ええやん別に。ちょうど風呂上がりやし」

 後ろからうなじに口づけた。膨らみの柔らかさを堪能しながら、洗いたての髪の匂いを楽しむ。同じ石鹸やシャンプーを使ったハズなのに、どうして彼女だけこんなにいい香りなんだろう。忍足は改めて不思議に思う。これが性差なんだろうか。

 そんなことを考えながら、二つの膨らみを揉んでいたら、次第に郁の呼吸が乱れてきた。苦しそうに喘ぎながら、けれど郁は忍足にツッコミを入れる。

「……さ、最初からこれがしたかったんじゃ」

 珍しく鋭い彼女に、忍足はギクリとする。完全に思考が読まれている。

「……別にそんなことあらへんで」

「う、嘘ばっかり!」

 忍足の棒読みの台詞に、郁は抗議の声を上げる。けれど、うつぶせの身体に上からのしかかられている以上どうすることもできず。為す術もなく、ひたすら両方の胸を可愛がられる。やがて、痛みと快感に、彼女の瞳が潤み始める。

「も、先輩……」

 郁がそう口にした瞬間、不意に拘束が解かれた。あっと思う間もなく仰向けにされて、今度は深い口づけが降ってくる。

「ッ……!」

 強引に舌を入れられて、今度は口内を愛される。キャミソールが乱暴にたくし上げられ、両方の膨らみに冷たい外気が触れた。そして今度は、胸の突端が刺激され始めた。

 忍足の強引な責めに、しかし郁の身体は反応し始めてしまう。脚の間がどうしようもないほど熱い。早くこの熱を鎮めたいばかりに、気がつくと郁は自分から、忍足を誘ってしまっていた。快感に潤んだ瞳で、忍足を見上げる。

「……先輩、電気消して?」



 自分のお姫様は相変わらず我儘で、それでいてすごく可愛らしい。

「……ったく、しょうがあらへんな」

 手近なところに準備しておいたリモコンで、忍足は照明を落とす。けれど完全には消さずに、常夜灯をひとつだけ残した。

「……なんでいつも全部消してくれないの」

 下の方から、拗ねたような声が聞こえる。

「全部消したら、お前の顔が見れんくなるやろ?」

 忍足は軽く微笑んで。そして彼女に見せつけるように、着ていたシャツを脱ぎ捨てた。

「……っ!」

 案の定、郁の頬が羞恥に染まる。何度も身体を重ねているのに、未だに自分の裸を見せつけただけで、初々しい反応を示してくれる、純な彼女が愛しい。

「ほら、そうゆう顔も真っ暗だと見えんし」

 言いながら、忍足は郁のキャミソールの裾に手を掛ける。もちろん、そのまま脱がせるためだ。しかし。郁は唇を尖らせると、ぷいっとうつぶせになった。

「……何でそんな拗ねんの」

「…………」

 ご機嫌を伺うように尋ねてみても、郁は何の返事も返さない。今日のお姫様はちょっぴりご機嫌ななめのようだ。前戯が強引すぎたのだろうか。でも、そんなことはないはずだし……。

 悩みながらも、忍足は行為を進める。たくさん感じさせてやれば、きっと機嫌も直るだろう。なんて、都合のいいことを考えつつも。

「……なら、今日は後ろからしたるわ」

 そう言って、ひらひらとしたキャミソールをめくり上げる。小さな肩がびくりと震えたのを視界の端に捕らえつつ、忍足は郁の背中へと愛撫を始める。腰から肩に向かって右手で撫で上げてやりながら、左の肩胛骨に沿って唇を這わせていく。

 ときどき舌先で舐めてやるたびに、びくびくと郁の上体が震え、何かを我慢しているような甘い息が零れる。

(かわええ……)

 あまりにも分かりやすい反応に愛情を深めつつも、忍足は郁をからかった。

「……何や、背中弱いん?」

「ちがうもん……」

 こんなに感じてるくせに、素直じゃない。けれどここから素直にさせていくのが、彼女との行為の醍醐味でもあったりして。忍足は郁の耳元で囁きかけた。

「……嘘つかんでエエでんやで。素直になり?」

「ッ……!」
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