少年──周助を突き飛ばした少女の顔は、私、だった。
周助は、不二先輩とよく似ていて。
夢なんかじゃ、ない。
これは、そう、"私"の記憶───。
突然、パァンと何かが弾けて。
沢山の、失っていたはずの記憶たちが蘇った。
不二先輩──周助を助けるために、とっさにその体を突き飛ばした。
代わりに雷に打たれた私は眠り続け、3日後に目を覚ます。
エメラルドへと変わってしまった、黒い髪と瞳と共に───。
この時から、私と、私の周りは変わり始めた。
黒かった髪と瞳はエメラルドへ変わり、
突如目覚めた予知能力に、
底なしの記憶力。
エメラルドに変わった髪を見ては一人離れ、
危険を予知した私を見てはまた一人離れ。
弱くなった体では、対抗なんてできるはずもなく。
そうして、周りには誰もいなくなった。
お父様、お母様、彼方たち屋敷のみんな、周助に裕太、由美姉、景吾。
大好きな人たちは、みんなみんな、今の"私"でいいって言ってくれた。
でも、私のせいでみんなにも嫌な思いをさせて、迷惑をかけて。
だからみんな、全く無理をしていないとは、やっぱり言えなくて。
今の自分が、嫌で。
周りの目が、怖くて。
全て無くなってしまえばいいと、
そう、思ったんだ───。
そうして気がついた時には、私は記憶を失っていた。
雷に打たれた、あの日からの全てを。
その後、アメリカへ渡り、そこで生まれ育ったという新しい記憶を手にする。