フルムーンナイト
□その光に包まれて
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side heroine.
―――満月の夜、その月に向かってお願いごとをするとね、必ず叶うのよ?
『…夢、か…』
ひどく懐かしい夢を見た。
あれはいつだっただろうか…。
私が今よりずっと子供だった頃、誰かがそう言っていた。
『今日だ…』
ちらりと机の上のカレンダーを見ると、ほぼ月一のペースで印が付けられている。
そして、その印は今日にも付いていた。
そして夜。
お父さんとお母さんにいつものようにお休みを言って、ベッドの上から窓の外を眺める。
そこにあったのは、闇夜に浮かぶ真ん丸なお月様。
そう、今日は満月の日。
『あれ…?』
心なしか、少しずつ月がこっちに近づいてる気がする。
だって、少しずつ大きくなってるんだもん。
『…って、ないでしょ。普通』
そう言ってみたものの、やはり月は近づいてるように見える。
―――私の願いを、叶えに来てくれたの?
―――本当に…?
もはや、これが夢か現実かなんてわからない。
この後どうなるのかも、さっぱりわからない。
でも、叶えてみたい願いがあった。
『テニスの王子様の世界へ行きたい!』
大好きな、漫画の世界へ。
言った途端、月が目一杯近づいて、私の体を光で包んだ。