あの後、なんだかんだと話しているうちに、試合をさせられる(←あくまでも不本意だと言い切る)ことになってしまった。
向こうのコートには、茶色い髪に笑顔が印象的な少年が立っていた。
「僕は不二。よろしく」
『…ラケット貸してもらっても?』
不二「あぁ、いいよ。はい」
不二先輩はそう言って、自身のラケットの片方を渡した。
不二「フィッチ?」
不二先輩がラケットを構えながら言う。
私はトスの結果を"見た"。
『…スムース』
不二「…じゃあ、サーブは君からだね」
ラケットは私が"見た"通りに倒れた。
これが私の能力の一つ、予知能力。
テニスで言うなら、トスの結果や、相手がどこにどんなボールの打ってくるかがわかる。
多少反則というか、ズルをしているとも言えなくはないが…。
『…不二先輩』
不二「何だい…?」
『1ゲームマッチでも構いません?』